ある日クロスカップは、用があって海を渡る事になりました。
でもクロスカップは、あまり泳ぎが上手ではありません。
そこで、
♪ほうい ほうい。
♪海を渡りたいが わたしはあまり泳げない
♪お礼はするから 誰かわたしを乗せてくれ
♪ほうい ほうい
海岸に立って歌うと、クジラがやって来ました。
「海の向こうまで、乗せて行ってくれないか?」
「おやすいご用だ」
クロスカップを乗せたクジラは、全速力で泳ぎ出しました。
「しっかりと、つかまっていてくださいよ」
「大丈夫。お前の背中は広いから」
クロスカップはクジラの背中の上で、きざみタバコをパイプにつめると、プカリ、プカリと、ふかしました。
やがて向こうに目指す島が見え始めた時、急にクジラのスピードが落ちました。
「おや? どうしたんだい?」
「このまま進めば、お腹が海の底につかえてしまいます」
心配そうに、クジラが言いました。
「なあに、大丈夫さ」
クロスカップが笑って言うので、クジラはまた進みました。
でも、やっと島についた時、クジラはやっぱり、浅瀬に乗り上げてしまいました。
「ほら、あなたのせいですよ。もう、海に戻れなくなってしまった。どうしよう・・・」
クジラは、シクシクと泣き出してしまいました。
「心配するな、わたしが海に返してやるから」
と、言うと、クロスカップは背中から滑り降りてクジラの頭をかかえると、すごい力で、
「えい、えいっ!」
と、押したのです。
すると、
「ズズッ、ズズズーッ」
クジラは滑り出して、海にプッカリと浮かびました。
「さて、乗せてくれたお礼に、何をあげよう?」
クロスカップが聞くと、クジラはちょっと考えて言いました。
「あなたの持っている、パイプとタバコをください」
「よかろう」
クジラはパイプをくわえて、喜んで帰って行きました。
みなさんは、クジラがしおを吹くと思っているでしょう。
でも本当は、クロスカップにもらったパイプを吹かしているのですよ。