ブタをつれてうちへかえってきましたが、うらにわの戸口のところでたちどまって、どうしても中へはいろうとしません。
こまったおばあさんが、だれかてつだってくれる人をさがそうとあるいていくと、イヌにであいました。
それでおばあさんは、
「ねえ、イヌよ。うちの子ブタにかみついておくれ。子ブタが戸口をふさいでいるので、わたしもうちへはいれないのだよ」
と、いいましたが、イヌはだまってそっぽをむいています。
しかたなくおばあさんは、またすこしあるいていくと、木のこんぼうにであいました。
「ねえ、こんぼうや。イヌをぶっておくれ。イヌが子ブタをかまないから、子ブタはいり口をふさいだままなの。それでわたしはうちへはいれないのだよ」
そういっても、こんぼうはへんじをしません。
おばあさんは、またすこしあるいていきました。
こんどは、赤い火がもえていました。
それで、おばあさんは、
「火よ。こんぼうをやいておくれ。こんぼうがイヌをぶたないから、イヌが子ブタをかまないし、子ブタがいり口をふさいでいるから、わたしはうちへはいれないのだよ」
そういっても、火はへんじをしません。
おばあさんがまたあるいていくと、こんどは水にであいました。
「水よ。火をけしておくれ。火がこんぼうをやかないから、こんぼうはイヌをぶたないのよ。イヌが子ブタをかまないから、子ブタはいり口をふさいだまま。それでわたしはうちへはいれないのだよ」
そういっても、水はへんじをしません。
おばあさんがまたあるいていくと、こんどはウシにであいました。
「ウシよ。水をのんでおくれ。水が火をけさないから、火がこんぼうをやかないし、こんぼうがイヌをぶたないから、イヌが子ブタをかまないし、子ブタがいり口をふさいでいるから、わたしはうちへはいれないのだよ」
でも、ウシはだまっています。
おばあさんがまたあるいていくと、なわにであいました。
「なわよ。ウシをしばっておくれ。ウシが水をのまないから、水が火をけさないし、火がこんぼうをやかないから、こんぼうがイヌをぶたないし、イヌが子ブタをかまないから、子ブタがいり口をふさいだまま。それでわたしは、うちへはいれないのだよ」
そういわれても、なわはへんじをしません。
おばあさんがまたあるいていくと、ネズミがいました。
「ネズミよ。なわをかじっておくれ。なわがウシをしばらないから、ウシが水をのまないし、水が火をけさないから、火がこんぼうをやかないし、こんぼうがイヌをぶたないから、イヌは子ブタにかみつかない。子ブタはいり口をふさいだままで、わたしはうちへはいれないのだよ」
でも、ネズミはだまっています。
またあるいていくと、ネコにあいました。
「ネコや。ネズミをとっておくれ」
と、おばあさんは、ネズミとなわとウシと水とこんぼうとイヌが、みんなうごいてくれないので、子ブタがいり口をふさいだままで、おばあさんがうちへはいれないと、わけをはなしました。
するとネコは、
「ニャーン、ニャーン。おばあさん、あんたがウシのところへいって、おちちをもってきてくれたら、わたしはネズミをとってあげるよ」
そういいましたので、おばあさんはウシのところへいって、おちちをくださいとたのみました。
するとウシは、
「おばあさん、あんたがまきばのほし草をひとかかえもってきてくれたら、おちちをあげるよ」
おばあさんはさっそく、まきばからほし草をもってきて、ウシにやりました。
ウシはその草をたべると、おちちをだしてやりました。
おばあさんは、それをおさらにいれて、ネコのところへもっていきました。
ネコはよろこんでおちちをなめると、すぐにネズミをおいかけました。
ネズミがなわをかじろうとしますと、なわはウシをしばろうとします。
それでウシが水をのみかけますと、水は火をけそうとして、火はこんぼうをやこうとします。
こんぼうがイヌをぶとうとしますと、イヌは子ブタにかみつこうとしました。
すると子ブタはようやく、にわへとびこみました。
それでおばあさんもやっと、うちへはいることができたのです。