家は小さくてボロボロ、ゆいつのじまんは、裏庭に立派なカシの木がある事です。
ある日男は、変な夢を見ました。
まだ見た事がないロンドン橋の上で、
「ここへ行けば、良い事があるぞ」
と、声が聞こえるのです。
その夢は、次の日も、次の日も続きました。
「もしかすると、本当に良い事が起こるかもしれないぞ」
男はそう思うと長い道のりを歩いて、ロンドン橋までやって来ました。
ロンドン橋のまわりにはたくさんのお店が立ち並び、川には大きな船が行き交っています。
男は生まれて初めて見る都の様子に感動しながら、橋の上を行ったり来たりしました。
けれど何も、良い事は起こってくれません。
そんな事が三日も続いたある日の事、橋の上で店を開いている主人が男に声をかけました。
「お前さん。毎日この橋の上を行ったり来たりしているが、一体何をしているんだね?」
「はい、実は夢のお告げで」
男が答えると、主人は腹をかかえて笑いました。
「わははははは。
全くあんたは、お人好しだな。
夢の言葉を、信じるなんて。
実はおれも、ちょくちょく夢を見るよ。
何でもノーフォークとか言う田舎の貧しい男の家の裏庭にカシの木があって、そのカシの木の根元をほると宝物が出てくるというんだ。
だがおれは、そんな夢を信じてわざわざ出かけていくほど、お人好しじゃないね」
それを聞くなり、男は走り出しました。
やがてノーフォークの家に帰りつくと、男は裏のカシの木の根元をほりおこしてみました。
すると本当に、たくさんの宝物が出てきたのです。
こうして男は大金持ちになると、ふるさとに教会をたてました。
村の人々はその記念に、男の銅像をこしらえたということです。