「おれは体が大きいから、お前の百倍も食べることができるぞう」
「とんでもない。ぼくは体が小さくても、一日中、口を動かしていられるよ。メエー」
そこでどっちが大食いか、王さまのライオンに決めてもらうことにしました。
ライオンは、ゾウとヤギを原っぱへ連れていき、
「さあ、食べられるだけ食べてみろ。たくさん食べた方は人間のところへ行かせてやるが、負けた方はわしが食べてやる」
と、言いました。
ゾウは、すぐに大きな木を倒して、葉をばりばりと食べはじめました。
でもヤギは、草の先をかじっているだけです。
(ふん、えらそうなことを言っても、ヤギは草の先しか食べられない。もう、おれが勝ったようなものだぞう)
ゾウは、お腹がパンクしそうなほど食べると、ゴロリと横になりました。
ところがヤギは草のない岩の上にのぼって、口をもぐもぐ動かしています。
それを見て、ゾウが言いました。
「おいおい、そんなところに草なんかないぞ。お前は何を食べているんだぞう」
すると、ヤギが言いました。
「なあに、岩をかじっているのさ。すっかり草を食べたのに、まだ、お腹がいっぱいにならないんだ。だからこの岩を食べたら、今度はお前さんを食べてやるからね。メエー」
それを聞いて、ゾウはとびあがりました。
ぐずぐずしていたら、自分まで食べられてしまいそうです。
ゾウはあわてて、森の中へ逃げていきました。
そこで、ライオンが言いました。
「よし、ヤギは人間のところへ行け。ゾウは、わしが食べてやる」
そのときから、ヤギは人間に飼われるようになり、ゾウはライオンに追いかけられながら、森の中をうろつくようになったのです。