ある時、ホジャおじさんは王さまと一緒に、狩りに出かけることになりました。
ホジャおじさんの馬は、見かけはとても立派なのですが、走るのがとても遅い馬でした。
家来たちがホジャおじさんを困らせようと、わざとそんな馬にのせたのです。
その狩りのまっ最中に、はげしい雨がふってきました。
王さまと家来たちは馬をとばして、大急ぎでお城へ帰って行きました。
ホジャおじさんも早く帰りたいのですが、いくらムチでたたいても、この馬は走りません。
トコトコ、トコトコ、のんびり歩くだけです。
「仕方ないな」
そこでホジャおじさんは着物を脱いで、ぬらさないように馬の腹の下にしまいました。
そしてやっとのことで、お城へたどりつきました。
ホジャおじさんはぬれた体をふいて、馬の腹の下にしまっていた着物をきて、王さまのところへ行きました。
すると、ぬれていないホジャおじさんを見て、王さまがたずねました。
「あれっ? ホジャよ、お前はぜんぜんぬれていないが、どうしてぬれずにこれたんだね?」
するとホジャおじさんは、当たり前のように言いました。
「はい、王さま。あの馬のおかげで、ぬれずにすみました」
「ほほう、あの馬は、そんなに早い馬だったのか。よし、今度の狩りの時は、わしがのるぞ」
何日かたって、王さまはまた、狩りに出かけました。
今度も途中で、雨がふってきました。
王さまが急いで帰ろうと、馬をムチで打ちましたが、馬はいっこうに走りません。
お城へたどりついた時には、王さまはびしょぬれになっていました。
怒った王さまは、すぐにホジャおじさんをよびつけました。
「この大うそつきめ! わしは、びしょぬれになったぞ!」
それを聞いたホジャおじさんは、笑って答えました。
「王さま、あなたはこの国で、一番偉い人ですが、頭はわたしより良くありませんね」
「うん? どういう意味だ?」
「はい、雨がふってきたら着物を脱いで、馬の腹の下にしまうのですよ。そして雨があがったら、着物をとり出せばいい。わたしは言ったでしょう。『馬のおかげで、ぬれずにすみました』って」
「そうか。たしかにそうじゃ。あははははっ、これはまいった、まいった」
王さまはホジャおじさんの頭のよさに、すっかり感心してしまいました。