いままでお日さまが、カンカンにてりつけていたかと思うと、たちまちまっくらな夜になってしまうのです。
くらくなると、ホタルたちがチラチラとまたたきながらとびまわります。
ある晩のこと、一匹のホタルが、友だちのところへ遊びにでかけました。
ホタルは自分の小さなあかりで道をてらしながら、シュロ(→ヤシ科シュロ属の常緑高木の総称)の木のあいだをとんでいきました。
それを、高い木にのぼっていたオナガザルが見つけました。
オナガザルはホタルをよびとめて、からかいます。
「もしもし、ホタルさん。どうしてわざわざ、あかりなんかつけているんだね?」
「うるさいカを、追いはらうためですよ」
と、ホタルはこたえました。
「なーるほど」
オナガザルは、ホタルを鼻で笑います。
「つまりあんたは、ちっぽけなカが、おそろしいってわけだな。???よわむしだね」
「よわむしとはちがいます。カなんかおそろしくない。ただ、ほかのものにじゃまされたくないだけですよ」
オナガザルは、また鼻で笑いました。
「いやいや。よわむしにきまっている。あかりをつけているのは、カがおそろしいからさ」
「??????」
ホタルは、そのままだまっていってしまいました。
オナガザルは、あいてにされなかったのでおもしろくありません。
あくる朝、あちこちのサルのところへでかけていって、ホタルのことをふれまわりました。
「ホタルはすごく、よわむしだぞ」
「まったく、あきれたよわむしだ」
サルたちはみんなで、ホタルをバカにして笑いました。
それを聞いたホタルは、オナガザルをこらしめてやろうと思い、オナガザルのところへとんでいきました。
オナガザルは、ねむっていました。
ホタルは自分のあかりを、オナガザルの鼻さきにつきつけました。
オナガザルは、ビックリして目をさまします。
「なぜ、ぼくのことをよわむしだなんてふれ歩いたんだ?」
と、ホタルはきびしくたずねました。
「あしたの朝、シュロの林まできてくれ。ほかの鳥やけものにもきてもらって、ぼくがよわむしかよわむしでないか見てもらう」
「ハッハッハッハッ」
オナガザルは、大口あけて笑いだしました。
「おまえさん、おれと勝負しようというのかい?」
「そうだとも」
ホタルは、きっぱりとこたえました。
「いったい、だれにたすけてもらうつもりだい? 一人じゃ、とうていかないっこないだろう」
オナガザルは、からかうように聞きました。
「一人だとも!」
「一人だって?」
オナガザルは、あきれました。
「そう、一人だ。もっとも、こわいのならやめてやってもいいが」
「おもしろい。やろうじゃないか!」
と、オナガザルはさけびました。
「だが、ことわっておくが、こっちは一人じゃいかないぞ。仲間を集めていくからな。それもすごくつよいやつばかりをな」
ホタルが帰ると、オナガザルは友だちのところをつぎつぎとたずねて、
「あしたの朝、こん棒をもってシュロの林にきてくれ」
と、たのみました。
朝がきて、お日さまがあかるくてらしはじめました。
ホタルはおちついて、戦いのはじまるのをまっていました。
オナガザルが、おおぜいのサルをつれてやってきました。
そしてホタルを見つけると、オナガザルが先頭にたって、こん棒をふりまわしながらおそいかかってきました。
ホタルはスイーッととんで、オナガザルの鼻先へとまりました。
「このホタルめっ!」
そばにいたサルが、ホタルめがけて力いっぱいこん棒をうちおろします。
ところがホタルは、それよりはやくヒョイととびのきました。
こん棒はオナガザルの鼻にあたり、オナガザルはギャン! とさけんでたおれました。
つぎにホタルは、二匹目のサルの鼻にとまりました。
三匹目のサルが、こん棒をふりおろしますが、またもやホタルは、ヒョイとにげて、こん棒は二匹目のサルの鼻にあたって、これものびてしまいました。
ホタルはつぎからつぎへと、サルの鼻さきにとびうつりました。
サルのほうはホタルをねらっては、おたがいの鼻をなぐりあい、とうとう一匹のこらずのびてしまいました。
かしこくていさましいホタルは、大きなサルたちに勝ったのです。
「さあ、これでもぼくはよわむしで、カをおそれているという気かい?」
ホタルは勝ちほこってさけぶと、地面にたおれているサルの上をクルクルとまわって、ひきあげていきました。
サルたちははずかしくて、赤い顔がますます赤くなりました。