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落語百選106

时间: 2019-09-15    进入日语论坛
核心提示:阿武松《おうのまつ》昔のお噺で、京橋の観世新道《かんぜしんみち》に武隈《たけくま》文右衛門という関取があった。ここへ能登
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阿武松《おうのまつ》

昔のお噺で、京橋の観世新道《かんぜしんみち》に武隈《たけくま》文右衛門という関取があった。ここへ能登《のと》の七海《しつみ》というところから名主さまの添書《てんしよ》を持ってまいりました。開いてみると、この者相撲執心で、どうか取り立っていただきたいという頼み状で……。
「ふゥん、そうか、まァとにあれ[#「とにあれ」に傍点]身体《からだ》をあらためにゃあならんで、こっちィ上がって裸ンなれ」
「はい」
裸にして見る、なかなかいい体格でございますので、
「そうか、よし、それじゃあ汝《われ》を今日から弟子にして、小車《おぐるま》という名前をやるから、一所懸命やれ」
「はい」
新弟子ンなりました小車てえのが台所で働いている。米のなくなりかたがひどいので……、おかみさんが台所の監督をしておりますから、だれか米を持ち出して酒に替えるようなやつでもあるんじゃあないかと、気をつけて見たが、そんなこともない。今度来た小車がたいへん大食で……、お相撲さんだから少ゥし余計食べたって目立ちもしませんが、朝、ご飯を炊くと、釜底という焦《こ》げたところで、赤ン坊の頭ぐらいな……握飯《むすび》を七、八つこしらえて、これを食前にぺろッと食《や》っちまって、これから、お膳に向かって何杯食うんだかわからない。さあおかみさんが肝《きも》をつぶした。
「ちょいと、親方たいへんだよ。うちィ来やがった今度の小車てえやつ。あんな大めし食いはあたしァはじめて見たよ。お膳へ向かって何杯食うかとおもっていたら、三十六杯まで勘定したが、あとはわからなくなっちまった。あんなやつに永くいられたひにゃあ食いつぶされてしまうから、早く暇を出した方がよかァないかしらん」
と、おかみさんがちょっとしゃべったやつ「雌鶏《めんどり》すすめて雄鶏《おんどり》時刻《とき》……」という譬《たとえ》がある。
「うん? そうか、小車をここへ呼べ……こら、汝《われ》はたいそう大めしを食《くら》うそうじゃな。ばか野郎……昔から大めしを食うやつに碌《ろく》な者はねえ、無芸大食という。汝は相撲取りにゃァなれんから、暇ァやるから郷里《くに》ィ帰《けえ》れ。ただ暇ァ出すわけにもいかんから、ここに金が一分《いちぶ》ある。これを汝《われ》にくれてやる……これはきさまにやるのではねえぞ。手紙をつけてよこしなすった名主さまに対してこの銭をくれてやるから、早く郷里《くに》へ帰《けえ》れ」
「へえ……」
相撲取りにはなれないというので断わられた。
しかたがないから一分の金を懐中《ふところ》に入れまして、京橋を出て板橋から志村。戸田川という大きな川がございます。昔のことで渡船《わたしぶね》ですから、船の来るあいだ腕組みをして……考えていたが、どうおもい直しても面目なくって郷里《くに》ィ帰《かい》れない。……そうでしょう、めしを食うてんで断わられた。こんな不名誉な話はない。いっそここへ身を投げて死のうかしら……おれは死んでもいいが、懐中《ふところ》に一分という金がある。これを川へ埋めては勿体《もつてえ》ねえ。昔、青砥左衛門尉藤綱《あおとさえもんのじようふじつな》という人は、三文の銭を滑川《なめりかわ》へ落としたのを、松明《たいまつ》をつけて拾わしたという話もある。まして一分の金をここへ埋めてしまっちゃあ勿体《もつたい》ねえから、なんとか活《い》かして死にたいが、どうしよう?……そうだ、いま通って来た板橋というところは宿屋もあるから、あすこへ帰ってひと晩泊まって、一分だけのめしを食って、あしたこの川へ身を投げて死のう。そうすればおれもめしが食えるし金も活《い》きる……。やっぱり食べる人ァほかに考えが出ないと見《め》えて、とって返しました板橋の平尾《ひらお》、橘屋善兵衛という旅籠《はたご》へ泊まりましたが、時刻も早いのでいい部屋へ通してくれる。
「……あのう、お客さま、お誂《あつら》えがございますか?」
「いやあ、注文は別にありませんが、わしはめしを余計食うから、茶碗はなるべく大きいのを貸してもれえてえ。それから何杯《なんべえ》食っても、もういいというまでめしだけは黙って、どうか食わしておくンなさいまし。これはあんたにお払いしておきます……」
一分の金を出した。……一銭か一銭五厘あったら立派に泊まれた時分に、二十五銭の前金でめしだけ食わしてくれてんで……おもしろいお客が来たとおもったが、向こうも商売ですから、お膳を持ってくる。
「さ、お客さまお給仕を……」
てんで盛《よそ》って出すと、こいつがもしょもしょもしょもしょ[#「もしょもしょもしょもしょ」に傍点]、食べはじめたが、ただでさえ大食いの人が、この世のめしの食い納めという、お鉢を三度取りかえました。二升ずつにしたって三度だから六升で……まだおしまいじゃァない、継続中なんで……。さあ女中が胆をつぶして下へ降りてきて話をしているのを、主人《あるじ》が聞いて、
「どうしたんだ、ええ? めしがどっさりいる? 結構じゃあないか。宿屋で少ないようなことじゃあしょうがないが……え? 一人のお客さまで?……ふーん、ふん、ふゥーん。まだ召しあがってるのかい。それァめずらしい方が泊まったもんだ……お菜《かず》が足りないだろうから、料理場へそ言ってな、二品ばかり急いで届けるように、これは主人《あるじ》からのおつかいものでございますと申し上げて……めしが足りなかったらあとをどんどん追い炊《だ》きをして持ってくようにしな。いまおれも見物に行くから………」
「へえ、いらっしゃいまして……橘屋善兵衛でございます。今晩はお宿をいただきまして、ありがとう存じます……ただいま女中どもの話でお客さまがたいへんご飯を召しあがるということ……いいや、結構でございます……板橋というところは農家も多うございまして……、てまえどもも旅籠屋のかたわら農作もいささかやっておりますので、どんな不作な年でも年《ねん》に二百俵の小作米があがってまいります。そのうちをお客さま方に差しあげてありますのでございますから、ご飯の代金《だい》というのは別に頂戴はいたしませんでよろしゅうございます。定まりましたお旅籠《はたご》賃で結構でございますから、お心おきなく、十二分に召しあがっていただきとうございますが……しかしあなたのように召しあがられたら、定めしおいしいことでございましょうな?」
「エエ、それが……いただきましてあんまり旨《うま》くねえです。一杯《いつぺえ》食やァ一杯《いつぺえ》ッつ寿命が縮まりますから……」
「……? そりゃおかしいな。なにか病《やまい》でも……? そうじゃァない……どういうわけで……?」
「恥をお話するようですが、お見かけどおり身体《からだ》が大きいもんですから、村の者が相撲取りになれというんで、京橋の武隈文右衛門という親方に弟子入りしまして…」
「おうおう、武隈関……ふん」
「小車という名前をもらいましたが、あんまり大めしを食うんで、相撲取りにゃあなれんから郷里《くに》ィ帰れと言って、一分|金《かね》ェもらってとうとう暇ァ出されましたが、なんぼなんでもめしを食うんで断わられたんじゃあきまりが悪くって郷里《くに》へも帰《けえ》れねえから、いっそのことこの先の川へ身を投げて死のうとおもいましたが、一分の金を川へ埋めては勿体《もつてえ》ねえから、こちらさまへひと晩泊めていただき、一分だけのめしを食って明日は身を投げて死のうという……それですから、一杯《いつぺえ》食やァ一杯《いつぺえ》ッつ、わしが寿命が縮まっていくようなもんで……」
「それァ気の毒な話だ。じゃ、あなたが立派な関取になれたら別に死ぬにも及ばないんで……あたしはね、相撲てものがたいへんに好きで、懇意にしている関取もありますから、おまえさんをお世話ァしようじゃあないか」
「せっかくお世話願っても、まためしを食うんで断わられましては……」
「いや、今度はねえ、めしのほうで苦情の出ないように、あたしからおまえさんが一人前になるまで仕送りをしてあげよう。さっき言ったとおり、年に二百俵の小作米があがってきますから、おまえさんに月々の食扶持《くいぶち》をあげようじゃァないか。まァいまは死ぬとおもったから余計食べたとして、ふだんはどのくらい食べるんで……?」
「まだ生まれて腹|一杯《いつぺえ》食ったことねえから、わからねえ」
「やっかいな腹だねェ……まあ一片食《ひとかたけ》一升として一日に三升、十日で三斗《さんと》だが……月に五斗俵を二俵ずつおまえさんにあげるが、どうだいそれで……」
「え?……なんですか旦那、わしが一人|前《めえ》になるまで月に五斗俵を二俵ッつおくンなさいます……?」
「どうだい、それだけあったら」
「さァ、五斗俵が二俵なら……たぶん足りるだろうか」
「おう? だろうかてえなァ心細いね……お待ちなさいよ、どっかいいところ……うん、あります。根津の七軒町に錣山《しころやま》喜平次という、幕内《まく》の中どころで、まあ武隈関とはたいして変わらないが、この人ァ相撲がうまい、だいいち、情のあるなかなかいい関取だから、おまえさんをそこへ世話をしてあげよう。ま、今夜というわけにはいかない。うちへゆっくり泊まって、あしたの朝あたしが案内をするから……人間というものは、気をしっかり持ってなくちゃァいけない。しっかりおやり」
「はい……ありがとうございます。なにからなにまでお世話ンなります……ねえさん、よろこんでくれ、旦那さまのおかげでおれも死なずにすむ。いままでは死ぬとおもいながら食ってためしで、何杯《なんべえ》食っても味がねえ。これから食うのが美味《うめ》えだから、もう一杯盛《いつぺえよそ》ってくれ」
「なんだい、まだ食うのかい」
 その夜は枕につきましたが、烏《からす》かァと夜が明ける。宿屋というものは朝早いもので、お発《た》ちのお客さまを送り出すと、主人は支度をし小車を連れて宿屋を出かけた。
「ここが巣鴨の庚申塚《こうしんづか》というところだ、にぎやかだろう」
「そうですかねェ、きのうは考《かん》げえながら歩いてましたからいっこうにわかりません」
「無理ァない。ここが本郷の追分だ……おや、話は早い、もう来ちまった。あすこに見《め》えるのが……おまえさんを連れて行く錣山関の家だから……少しお待ち」
 間口《まぐち》が三間半で疎《あら》い面取りの格子《こうし》がはまっております。取的《とりてき》が掃除をしているところで……、
「はい、お早う」
「いやァこれは……板橋の旦那《だん》はんで……兄弟子、板橋の旦那がお見えんなったよ」
「いやあこれは……板橋の旦那はんで……いつも上がりましてはごッ馳走《つあん》になっておりますで……」
「いや、親方にお目にかかりたいが、おいでかな?」
「はあ、おりますでござんす……親方ァ、板橋の旦那はんがお見えんなったよ」
「いやァ、これはこれは……板橋の旦那はんで……どうぞこれへ……野郎、布団を持って来い、早うせえ……さあさあ、まあどうぞお当てくださいまし……毎度若いやつが上がりましてはごやっかいをかけておりまして、一度お礼に出にゃァならんとおもいながら、ついご無沙汰をいたしております……。今日はえらいお早いことで、どちらへ……?」
「いや、じつはねェ、関取に頼みがあって来たんだが、弟子を採《と》ってもらえないだろうかね」
「弟子? 力士でござりますか?……いや、旦那のお世話なら身体《からだ》を見ずにお引きうけをいたします」
「身体を見ずに?……へェ、じゃあ別に見なくてもいいもんで……?」
「いや、これはどなたがお世話をくだされても一度はあらためねばならんもんですが、あなたのように相撲好きのお方で、十日の相撲を十二日見るというような方で……けしてまちがいがござりませんで……」
「変なことを言っちゃあいけないよ。十日の相撲を十二日の見ようが、ないじゃあないか?」
「いや、小屋組みをして明日《あす》からここで相撲があるという小屋を先に見に来なさる。十日の相撲を見てその翌日、あァあ、きのうここで相撲があったとこじゃなと、壊すところをまた見に来なさる。十日の相撲を十二日見るという、これがもう一番《いつち》好きなお方で。まちがいがござりませんで、お引きうけをいたします」
「そうですかい、それァありがたい。まあとにかく当人を連れて来ましたから、会ってやっていただきたい……あのゥ、若いのをこっちへ……ああああ、こっちへ入んな……この男で……どうかひとつまあ、よろしくお世話を願いたいんですが……こちらにいらっしゃるのがおまえの親方になる錣山関だから、よくお願いをしな」
「はい、はじめましてお目にかかりまして……わしは能登の国、鳳至郡鵜川村七海《ふげしごおりうがわむらしつみ》で、とっつぁんは仁兵衛《にへえ》といいまして、その倅の長吉といういたって不調法者で、どうぞ親方なにぶんともよろしくお願い申しまして……」
敷居越しにお辞儀をしている山出し男を、錣山がじろっと見ましたが、相撲道で最高の位置といえば、これはいうまでもなく横綱でございますが、深川八幡の境内に横綱力士の碑《ひ》というのがございます。代々の横綱の名が碑に刻みこんでございますが、中に例外が一人だけ、入っております。雷電為右衛門という、あの人は生涯大関で終わりましたが、一人だけ大関でいながら横綱力士の中に名前が入っております。「無類力士雷電為右衛門」と書いてありますが、よほど実力があったものでございましょうが……。
初代というのは野州宇都宮の人で明石志賀之助《あかししがのすけ》、そのつぎが野州栃木の産で綾川五郎次《あやがわごろうじ》、三代目の横綱が奥州二本松、丸山権太左衛門。四代目が奥州|宮城郡《みやぎごおり》の人で、谷風梶之助《たにかぜかじのすけ》、※[#歌記号、unicode303d]わしが郷里《くに》さで見せたいものは、昔ゃ谷風、いま、伊達模様……という、唄にも残っております名力士で。そのつぎが滋賀県の大津から出ました小野川喜三郎。六代目の横綱が能登の国鳳至郡鵜川村七海、阿武《おうの》松緑之助《まつみどりのすけ》という、相撲道が開けて六人目に横綱免許をとる男が敷居越しにお辞儀をしている。武隈にはわからなかったんでしょうが、錣山が見て……、
「うぅ……ん、……旦那、相撲になりてえと言うのはその人ですか?」
「この男だが……どうだろう?」
「うゥん、その人なら相撲にはいいねェ」
「いいかねェ」
「うゥん、いい」
「いい?」
「いい、いい」
まるで神経痛がお湯ゥへ入ったようで、ただ「いい、いい」てんで……。
「にいさん年齢《とし》はいくつだ? 二十五……いやァまだ遅くはねえが……酒はどうだ? 好きか? 一滴も飲まん……まァ贔屓《ひいき》の旦那方にすすめられるようになったら酒も飲むようになろうが……勝負ごとはどうだ……うん? それはきらい……女は? どうだ。それァおかしい。人間は三道楽煩悩《さんどらぼんのう》という。酒がきらい、博奕がきらい、女がきらい……噺家の三遊亭円生みてえ人だな……じゃあ好きなものが……?」
「いや、この男、一つだけ好きなものがある」
「なんです?」
「めしが好きでしょうがない」
「なんです? めしてえ」
「いえ、お飯《まんま》が好きなんで」
「はッはははは、旦那、ばかなことを……めしはだれでも好きなもんで……」
「いや、それァ好きなんだが、この人は少し好きすぎるんだ。割った話をすると、武隈さんの部屋にいて、小車という名前をもらったが、あんまり大めしを食うというんで断わられた。身を投げて死のうというんであたしが気の毒だから、こちらへ頼みに来たわけなんだ。そのかわり今度はそのほうで苦情の出ないように、一人前になるまで月に五斗俵を二俵ずつ食扶持《くいぶち》として送りますから、どうか世話をしてやっていただきたい」
「いや、せっかくですが、五斗俵を二俵というのはそれはお断わり申します。この人が幕内《まく》にでも入るときに、なんぞ印物《しるしもん》の一つもこさえてやっていただければ結構で。武隈関がなんぞ勘ちがいをしていなさる。相撲取りがめしを食えんような事《こ》ッちゃァあかんで……にいさん、うちは遠慮はいらん。ああなんぼでも食うとくれ。仮に一日一俵ずつ食ったところで年に三百六十俵しきゃ食えん。一日一俵ッつ食わせる」
それじゃあ化物だ……。
「ところで名前をつけにゃあならんが、どうです旦那、小緑《こみどり》という名は……?」
「小緑……ふゥん、あたしァどうも名前のことはわからないが……」
「いや、これァわしが前相撲をとっていた時分につけた名で。それをこの人につけさしたいが……」
「それァありがたいなァどうも。関取の出世名前、小緑だ。しっかりやんなよ」
「へい」
文化十二年の十二月、麹町十丁目|法恩寺《ほうおんじ》の相撲の番付にはじめて名前が載りました。序の口、終《すそ》から十四枚目に小緑常吉。翌十三年の二月、芝西久保八幡の相撲の番付には序二段、終《すそ》から二十四枚目に躍進をしておりますが、そのあいだまだ一百日《いつぴやくにち》経たないのに、番付を六十何枚飛び越したという、古今にめずらしい出世で。文政五年に蔵前八幡の大相撲に入幕をいたしまして、小緑改め小柳長吉。初日、二日、三日と連勝をいたし、明四日の取組をご披露いたしますというなかに武隈と小柳というのがあった。それを見てよろこんだのが師匠の錣山で……、
「おい、明日《あす》はおまえの旧師匠、武隈との割り[#「割り」に傍点]が出た。しっかり働け」
「へえ、親方、明日の相撲にすべりましては板橋の旦那はんに合わせる顔がござりませんで……、うゥんッ、飯《まんま》の仇武隈文右衛門。明日《みようにち》はきっと十分の相撲をお目にかけます」
翌日、旧師匠との立ち合いが長州公のお目にとまりまして、阿武松緑之助と改名をして横綱を張る、出世力士のお噺でございます。
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