出かける仕事は大好きだけど、飛行機が怖いんで、なるべく電車か車で行く。
雪まつりの少し前に仕事で札幌に行ったけど、それも寝台車。寝台車で札幌まで行くのは二度目だ。まず仙台まで新幹線で行って、待ち時間にちょっとパチンコしてから、飲みに行った。マネージャーと二人でワイン一本頼んで飲んでたんだけど、時間が足りなくなってきちゃった。「あのー、これから電車に乗って遠く行くんですけど、これ持ってってもいいですか」とお店の人に言うと「どうぞ、いいですよ。グラスはあるの?」「ええ、いいんですラッパ飲みで」。
寒さに弱い私は、長いコート、マフラー、帽子、ブーツと重装備だった。その姿で右手に酒ビンをにぎりしめてホームに立つと、ただのあやしげなよっぱらいにしか見えないので、「あやしげなよっぱらい記念写真」を撮ってから電車に乗り込む。寝台を探していると、めざすあたりから、なんだかにぎやかな声が聞こえる。「おっ、来ちゃうかなー」「あ、来ちゃったよ。すいませんもうできあがってまーす」。その寝台では三人の働き盛りの男性がお酒を飲んで盛り上がっていたのであった。
「来ちゃったよーん」「まあいっしょに飲みませんか。酒まだあるし」「あっ、こっちにはワインもあるよ」と右手のワインを差し出す私。そんなわけで車掌さんが「寝てらっしゃるかたもいらっしゃいますから……」とその後二回も注意に来るほどの飲み会をやってしまったのだった。
その三人の男性は三人ともイトウさんといって、そのうち二人は兄弟。親ごさんのお見舞いのため二十年ぶりでいっしょに里帰りするところなのだそうだ。もうひとりのイトウさんは弟さんの方と同じ会社の人で、やはり親類のきとくで帰るところだそう。不幸の中でも、盛り上がってしまうものは盛り上がるもんだ。二十年ぶりってのも、すごいね。イトウブラザースはかなり飲んでいたみたいだけど、朝六時にはきっちり起きて駅弁の朝ごはんをおごってくれたよん。