地方へ行ったら、夜はやっぱり飲み会だい。男四人と私とで、あるスナックで歌を歌ったりして飲んでいたその夜。だれかがスローナンバーを歌ったら、遠くの席から一人のおじいさんがやって来て、私の手をとってさっさとチークを踊り始めてしまった。老人に優しい私は、あまり体がくっつかないようにということだけ気をつけてやり過ごしたけど、ひとむかし前なら水割り頭からかけてやったかも。
翌日、連れの男たちに、「だれも止めないんだもんなあ。あたしが何したって言うのよ。だれもおめえなんか誘ってないっての」と言ったら、「他にだれも女の子いなかったもんねえ」。あのなー、一人しかいなけりゃ使いまわししろっての? 「一人しかいないならいないで、自分たちの連れだって、所有権示して止めなきゃだめだよ、けんかするわけにいかないんだから、こっちは。あたしたちのような職業はああいうの通りすがりだけだからまだいいけど、あんなの上司だったらセクシュアル・ハラスメントとかさ」「ああ、いろいろ大変らしいですよう。僕の友だちにデパートに勤めてるやついるんですけど、一人のお尻さわると、他の子があの子だけさわったって怒るんだって。平等にさわってやんなきゃなんない。大変だって言ってましたよ」
思わず腕組みする私。彼は友人の話をウのみにしているだけなんだろうけど。彼は、ある新興宗教の信者であるので、「その友だちってのもその仲間?」と聞いてみた。「そうです」「そいつ、信心が足んねえよ」。職場でお尻さわられたい女なんか、聞いたことねえぞー! いいかげんにしなさい、と漫才つっこみしたくなるほど、まーだそんなこと言ってんのって感じだぞ。
これからは、まだそんな事やったり言ったりしている男に、同性である立場から、恥ずかしいぞと教えてやったり、セクシュアル・ハラスマー1号とあだなを付けたりしてやるのがいいと思うわ。