悔しがったり嫉妬《しつと》したりのエネルギーは、正しく使えばこんなにいいものもないと思う。顔ではにこにこしながら、「くやしー、今にみてろよ」って思うのは大きな頑張りのもと。だから、明るく正しく嫉妬したい。たとえばこないだ、ある書店にサイン会しに行った私は「以前は漫画を描いておられたんですよね?」とそこの偉い人に言われてしまった。「私、漫画家なんですけど」。たしかにその時はエッセイを出した出版社の要望で出かけた会だったんだけど、それにしてもこういうふうに言われたのは初めて。エッセイの本のほうにサインし終わってから、「漫画のほうでも少しサイン本作ってゆきます」と申し出ると「えっちょっと待って下さいね。えーと、これしかありません。すいません」と店員の人が持って来たのはたった一冊。言っとくけど、えれえ大きな本屋なんだよ、そこ。
でもこれと同じ思いは大きな書店や出版社では何度もしてる。世の中ってそんなものざんす。職種や性別や年齢で人を差別しない人ももちろんいるけど、私は差別されるたんびに「来たなーっ」と燃えてきちゃう。もちろん望んで差別されに行くわけじゃないけどね。
いちばん多いのは「漫画家バンドなんてどうせ」って差別かな。まあ別にいいけどね。最近は逆に、バンドをやりたくてもやれないやつから「いいですねえ」なんて言われることもあって、複雑な気持ち。やりたいなら、やりゃいいじゃん。こういうのが間違った嫉妬なのよ。ライブにも来ないで私のバンドのこといろいろ言おうとするから、「とにかく一度見に来てよ」と言うと「うん」と答えといてなんだかんだ言ったり忘れたふりして来ないしさ。
団体行動って何でも同じだけど、バンドなんてやるのは簡単。でも自意識過剰の人にだけは出来ないんだよね。もっと傷ついて正しく嫉妬しろい。嫉妬エネルギーがもったいないぞ。