ばかなむすこがいました。ある日、およめさんの里に行き、だんごをごちそうになりました。あんまりうまいので、うちに帰ったら、このだんごをこしらえて食べようと思い、およめさんの母親に聞きました。
「これは、なんというものですか。」
「これは、だんごというものです。」
わすれないようにと、帰る道みち、
「だんご、だんご。だんご、だんご。」
そう、くりかえし、くりかえしいいながら、やってきました。そのとちゅうにみぞがありました。むすこは、みぞを、
「どっこいしょ。」
といって、飛びこしました。ところが、それまで、歩きながら、「だんご、だんご。」といっていたのを、今、ここで、「どっこいしょ。」といったものだから、つい、それからは、
「どっこいしょ、どっこいしょ。」
と、くりかえしていいながら、帰ってきました。
玄関《げんかん》にはいると、さっそく、およめさんをつかまえて、大きな声でいいました。
「きょうは、おまえの里で、どっこいしょというものを、ごちそうになった。とてもうまかったぞ。これ、すぐに、そのどっこいしょを作ってくれ。」
およめさんが、
「そんなものは知りません。」
と、いいますと、
「おまえのうちで食べたものを、知らんという話があるもんか。」
といい、とうとう、大げんかになってしまいました。むすこが、およめさんの頭をぶって、大きなこぶができてしまいました。およめさんは、
「あれあれ、ここに、だんごのようなこぶができたわ。」
と、さけびました。これを聞いて、むすこは、にわかに気がつき、
「おお、そのだんごだよ。そのだんごを作ってくれ。」
と、いったということです。めでたし、めでたし。