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海嶺25

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:冷 雨     四 船頭の重右衛門と、久吉が岩松の家を訪ねて、三日目。今日は宝順丸が熱田を出る日だ。風は寒いが空は晴れて
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冷 雨
     四
 船頭の重右衛門と、久吉が岩松の家を訪ねて、三日目。今日は宝順丸が熱田を出る日だ。風は寒いが空は晴れている。
朝飯を終えた岩松の背に、絹は黙って刺し子を着せた。その岩松の足に岩太郎がまつわりついている。黙っている絹の気持ちが、岩松には痛いほどわかる。
重右衛門が、再び船に乗らぬかと訪ねて来た時、岩松は先を制して、
「千石船《せんごくぶね》に戻《もど》れと言う話ならごめんだで」
と言った。が、心のうちでは、重右衛門が訪ねてくれたことに、岩松は深く心を打たれたのだった。こともあろうに舵取《かじと》りの自分が、御蔭参《おかげまい》りに名を藉《か》りて船を脱《ぬ》け出した。そのことは、岩松も心にかかっていた。二度と船に乗ることができなくても、文句の言える筋ではなかった。幸か不幸か、銀次という男の出現に、岩松も船に乗る気を失った。だが時折《ときおり》、岩松は夢に千石船を見た。帆柱のてっぺんに突っ立っている自分を見たこともあれば、胴の間の積み荷の上に寝ていて、肩のあたりがむやみに寒いと思って目がさめたこともある。そしてその度に思い出す船の生活は、岩松にとって、ふるさとのように懐かしくもあった。だからこそ、重右衛門の顔を見た途端に、二度と船には乗らぬとあえて宣言したのだった。
だが、落胆《らくたん》の様子もあらわに、重右衛門が家を出ようとするのを見た時、岩松はたまらなくなって言った。
「親方、今度一度だけなら乗ってもいいで」
重右衛門は喜んで帰って行った。
が、絹はその夜、床の中で言った。
「お前さん、もう船には乗らんといて」
「一度だけだ」
突っ放すように岩松は言った。
「どうしても乗らんならん。折角《せつかく》家に居ついてくれたのに」
「居ついてくれた?」
「ええ。もともとわたしは、船乗りのお前さんに惚《ほ》れたのだから、お前さんが船に乗るのは諦《あきら》めていたけどな。でも、来る年も来る年も留守番ばかり、どんなに淋《さび》しかったことか知れせんで」
絹は、隣室の仁平や房に聞こえぬように、ひっそりと言った。
「…………」
「お前さんがこうしていつも家にいてくれることだけで、わたしはどんなに幸せかわかりやしない」
「幸せ? ほんとかお絹?」
岩松は思わず聞き返した。年毎《としごと》に新しい着物を買ってやるわけでなし、朝晩うまいものを食べさせるわけでもなし、只舅《ただしゆうと》と姑《しゆうとめ》に仕える生活が、絹の毎日なのだ。その生活を絹は幸せだと言ってくれる。
「ほんとうだともさ。幸せってのはね、お前さん。いつも無事な顔を合わせていることだでな」
「ふーん」
「おまえさんが船に乗っている間、わたしはむろんのこと、お父っつぁんやおっかさんだって、どんなにお前さんのことを案じていることか。熱田の空がくもれば、お前さんのいる所もくもっていはしないか、熱田に風が吹けば、お前さんが嵐に遭《あ》っていやしないか、いつもそんな心配ばかりしているのやで」
ふだんは言葉数の少ない絹が、掻《か》きくどくように言った。
「そうか。そんなに心配してくれていたのか。しかし今まで、そんなことお絹は言ったことないで」
「それは、もう船乗りの女房と覚悟を決めていたからさ」
「じゃ、今は、その覚悟を失うたというわけか」
「ええそうなの。だってもう金輪際《こんりんざい》船に乗らんと、お前さん言うてくれたでないか。だからすっかり安心して……安心しちゃったもんだで、何だか淋《さび》しくって」
「わかった。そいつは悪かった。しかし、今度一度だけは江戸まで行ってくる。船乗りの世界じゃあ、本当は俺のようにして辞《や》めた男は、二度と雇《やと》ってはもらえんものよ。それを、わざわざ親方は訪ねてくれたんだ。その親方に、今度一度だけは……」
言いながら、岩松はうれしかった。自分のようなすね者を、妻の絹も、育ての親の仁平も房も、心から大事に思ってくれている。近頃《ちかごろ》は、瓦《かわら》職人の頃より収入《みいり》も少なくなって、思ったこともしてやれない。それでも、愚痴《ぐち》一つ言うでもなく、房も絹も、仕立物の賃仕事で家計を補ってくれていたのだ。
「ほんとに、今度一度だで、お前さん」
布団の中で、絹は岩松の小指に自分の小指を絡ませてきた。冷たい細い指だった。岩松はその手を両の手に包んで、
「ああ、一度っきりだ。二度と船には乗らん。それならいいだろう」
「ええ、一度だけなら仕方がない」
岩松はふっと銀次の顔を思い出した。自分が江戸に行って帰って来るまでのひと月余りの間に、銀次は必ず訪ねて来るような気がした。今は遠くに移ったとは言え、たまには岩松の留守に顔を見せると聞いていた。
「お絹、ひと月|経《た》ちゃあ帰って来るだでな。銀次なんてえ奴《やつ》が団子を持って来たって、甘えるんじゃないぜい」
「まあひどい! 銀次さんはお父《と》っつぁん、おっかさんを訪ねてくるのよ。自分の親みたいだって」
「お絹、お前それを真《ま》に受けているのか」
「真に受けているともさ。お前さんどうしてそんなことを聞く?」
「将を射んと欲せば馬を射よってこともあるだでな」
「何のこと、それ?」
不審そうに聞き返す絹を、岩松は黙って抱きしめた。この絹を疑ってはならぬと岩松は思った。信じなければならぬと思った。
「とにかく俺は、あの銀次って奴《やつ》が気に食わねえ」
只《ただ》それだけを岩松は言った。
刺し子を着た岩松は、今、足もとにまつわる岩太郎を抱き上げて言った。
「じゃ、お父っつぁん、おっかさん、行って来るでな」
「そうか。行って来るか。気をつけてな」
仁平が言い、房がつづけて、
「やっぱり船に戻《もど》ることになったなあ」
と、がっかりしたように言った。が、自分で自分の気を引きたてるように、
「ま、親方さんがわざわざ見えられたことだでな、義理を果たさにゃあな」
と、元気のよい声になった。
「義理か」
岩松はちょっと笑って、
「なあに、ひと月だあ、すぐに帰って来る。じゃあ、坊、おとなしく待っているんだぞ」
と、頬《ほお》ずりをすると岩太郎を絹に渡した。
草履《ぞうり》を突っかけた岩松に、
「わたしも浜まで見送りに行く」
と、絹は岩太郎を抱いたまま土間におりた。
「風が寒いで、わざわざ来んでもええ」
「じゃ、岩太郎だけおいて行くわ。おっかさんおねがい」
絹は岩太郎を房に手渡した。
「じゃ俺も岩松を送るとするか」
仁平の言葉に岩松は笑って、
「珍しいことを言うでお父っつぁん」
と、ちょっとふり返って、戸をあけた。風が絹の裾《すそ》を煽《あお》った。
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