日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

海嶺33

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:怒濤     三 雨も風も、激しくなるばかりだ。夜も五つ(八時)を過ぎた頃《ころ》、「あーっ!」船倉で水主《かこ》たちの
(单词翻译:双击或拖选)
怒濤
     三
 雨も風も、激しくなるばかりだ。
夜も五つ(八時)を過ぎた頃《ころ》、
「あーっ!」
船倉で水主《かこ》たちの叫びが上がった。岩に激突したかと思う衝撃に、久吉も音吉も、他の水主たちと共に、アカ(海水)の中にころがされた。そして次の瞬間、ばりばりと鋭い音がした。
舵《かじ》の羽板に激しく打ちつけられて、既《すで》に半壊していた外艫《そととも》が、激浪《げきろう》にもぎとられたのだ。外艫には流し台と水桶《はず》があった。真っ黒い夜の波の中に、流し台も水桶も、瞬時にして呑《の》みこまれていった。
「もう駄目《だめ》や」
アカの中から起き上がった吉治郎が泣き声を上げた。
「馬鹿っ! ぐずぐず言わず、アカを汲《く》めっ!」
岡廻《おかまわ》りが叱咤《しつた》する。吊行灯《つりあんどん》が絶えまなくゆれながら、あたりを照らしている。どんなに大きく揺れても、油が漏《も》らず、灯の消えぬ吊行灯が、今、船のあちこちに淡い光を放っていた。その淡い光の中で、水主たちは必死になってアカを汲む。が、アカはたまるばかりだ。それは、限りなくむなしい作業に思えた。しかし手をとめれば、たちまち水船となる。
「無駄やー! もういかんわ」
くり返し念仏をとなえていた吉治郎が再び音《ね》を上げた。
「ほんとや」
他の水主たちも、アカの中に突っ立った。と、音吉が叫んだ。
「無駄ではないっ!」
年少者とは思えぬ凛《りん》とした声であった。
「そうや、音吉のいうとおりや。手桶《ておけ》に一杯|汲《く》み出せば、汲み出しただけのことはあるで。汲まねば沈没や」
岡廻《おかまわ》りが諭《さと》すように言った。沈没という言葉に脅《おび》えて、みんなまたアカを汲みはじめた。音吉はアカを汲んだ手桶を下げて、よろめきながら胴の間に出た。岡廻りが交替を命じたのだ。胴の間には、既《すで》に米俵《こめだわら》はなかった。胴の間に上がった音吉に、風と波が容赦《ようしや》なく襲いかかった。音吉は足を踏みしめながら、手桶を他の水主《かこ》に手渡した。
船はまたしても大波の上に上がり、また下がる。すでに船は、舳《へさき》から四頭の碇《いかり》をたらして逆艫《さかども》になっている。踏立板《ふたていた》の一部をはずした胴の間で、荷打ち(捨て荷)を指揮していた仁右衛門が叫んだ。
「親方あっ! 帆柱を切らにゃーっ!」
船倉から米俵を胴の間に引きずり上げていた岩松が、
「何いーっ? 帆柱を切るとーっ?」
と、大声で聞き返した。
「おう、帆柱に当たる風で、船の傾きがひどいわ。その上、流されて陸から遠くなるばかりや!」
「しかし、水主頭《かこがしら》ーっ!」
岩松は夜空にそびえる太い帆柱を見上げた。帆柱の先は闇《やみ》に紛れて見えない。風に無気味に軋《きし》みつづけるばかりだ。
「帆柱を切りゃあ、二度と帆を上げることはできんでえ!」
「馬鹿を言え、舵取《かじと》り! 帆を上げるかどうかより、船が引っくり返るかどうかの瀬戸際《せとぎわ》だあっ!」
仁右衛門の声に殺気《さつき》があった。
「引っくり返るうー? 千石船《せんごくぶね》がひっくり返ったためしがあるか。帆柱に当たる風は、たかが知れてるでえ!」
「何をぬかしやがる! 親方! この嵐じゃあ、帆柱を切るより仕方あらせんで」
「さあてのう、切ったものかどうか、わしにもわからんが……」
船頭の重右衛門が呻《うめ》くように答えた。と、三人の体が大きく揺らいだ。船がしたたかに大波を受けたのだ。
「親方っ!」
岩松が傍《かたわ》らの米俵《こめだわら》にすがりながら言った。
「俺は北前船《きたまえせん》で嵐に遭《あ》った。あん時は帆柱を切らんで助かった。嵐は一時《いつとき》だあ。嵐が去ったら、どうやって帰るんだっ!」
岩松の言葉に仁右衛門が喚《わめ》いて、
「わからねえ奴《やつ》だな、舵取り! 嵐の時に帆を切るのは慣《なら》わしだ。こんなでっかい帆柱がなけりゃー、こうまで船は流されはしめえ。揺れもしめえ。親方! 早く切らせてくだせえ」
「よし! では伊勢大神宮の神さまにお伺いを立てるとしよう」
重右衛門は雨と風に叩《たた》かれながら決断した。と、その時、炎のような稲妻が閃《ひらめ》いた。一瞬、荒れ狂う海が視界に浮かび上がって消えた。つづいて雷鳴が頭上の闇《やみ》をつんざいた。重右衛門が大声で言った。
「水主頭《かこがしら》! 舵取《かじと》り! かくなる上は、もとどりを!」
「おう! もとどり! それが先決じゃった」
仁右衛門が答え、岩松も大きくうなずいた。もとどりを切ることは、神への真心を披瀝《ひれき》することであった。
三人は、神棚《かみだな》のある水主部屋に駈《か》け入って小刀でもとどりを切った。呼ばれて岡廻《おかまわ》りと勝五郎、そして音吉も三人にならった。
事の決定に迷う時、船乗りたちはみくじを引いた。みくじに出た答えに従えば、反対者も納得したのだ。それほどに船乗りたちは、みくじの答えを絶対と信じていた。重右衛門は今、仁右衛門の意見と、岩松の意見が真っ向から対立したのを見て、みくじを引こうと決意したのだ。
音吉は命ぜられたとおり、一|升《しよう》ますに穴のあいたふたをし、重右衛門の前に置いた。重右衛門は紙を一寸四方に二枚切り、その一方に〇印を、他方に×印を記してまるめ、ますに入れた。×印は帆柱を切る、〇印は切らぬ託宣《たくせん》の印であった。
重右衛門は神棚の戸をあけ、中から御幣《ごへい》を取り出すと、右に左にふりながら、一心に祈った。仁右衛門も岩松も、勝五郎も、その赤銅《しやくどう》色の手を合わせて一心に祈る。音吉もみんなにならって祈りつづけた。神の前に祈るということが、こんなにも必死なことかと、音吉は初めて知った。念じているうちに、音吉は何か安らぎの湧《わ》いてくる思いがした。
岩松もまた、みくじが帆柱を切れと出るか、帆柱を切るなと出るか、胸苦しいほどの緊張で待っていた。
(帆柱がなくて、どうして帰ることができる!)
戌亥《いぬい》の風が、確かにこの船を陸地から遠くに追いやっていることを、岩松は感じていた。未《いま》だかつて、これほど陸地から遠くに追いやられたことは、岩松はなかった。だがそれは帆柱があるためではない。仁右衛門のみならず、誰もが帆柱に当たる風の強さを恐れている。だが岩松は、船倉になお重い米を残している限り、帆柱一本で船の安定を全く失うとは、思えなかった。
(何日つづいたとしても嵐はどうせ一時《いつとき》だ!)
またしても岩松は思った。この一時のために帆柱を切ることは何としても避けたかった。
(帆柱をこのままに……)
岩松はひたすらそう念じた。
音吉には、帆柱は切るべきかどうか、わからなかった。只《ただ》、音吉の胸の中にあるのは、年少ながらも、船主樋口源六の婿養子《むこようし》としての自覚だった。責任感であった。その自覚と責任感が、凄《すさ》まじい嵐の恐怖から、音吉を救っていた。
一同は念じつづけながら、幾度も床の上によろけた。が、嵐は時折《ときおり》、ふっと勢いを殺《そ》がれることがあった。今も、嵐は幾分か衰えたようであった。音吉は、神の前に祈ったからだと、素朴にそう信じた。
やがて、重右衛門は、ますをたたき、中から飛び出たみくじを開いた。
「皆の衆、神のお告げじゃ」
ざんばら髪の五人は、一斉《いつせい》に頭を下げた。岩松は息をとめた。
「伊勢大神宮の大御神は、帆柱を切るべしと託宣《たくせん》されたぞ」
「ははーっ!」
一同は額を床にすりつけた。船が谷底に沈むように、波間に引きずりこまれた。
みくじの結果に岩松は唇《くちびる》を噛《か》んだ。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%