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海嶺35

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:黒瀬川     一 五日四晩|猛《たけ》り狂った嵐は、十五日の午《ひる》過ぎになって、嘘《うそ》のようにおさまった。今、
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黒瀬川
     一
 五日四晩|猛《たけ》り狂った嵐は、十五日の午《ひる》過ぎになって、嘘《うそ》のようにおさまった。
今、水主《かこ》たちは、アカ(海水)にぬれた薪束《まきたば》を、船倉から胴の間に運び出していた。誰もが筒袖《つつそで》の桐油合羽《とうゆがつぱ》を着、荒縄《あらなわ》を腰に結んでいる。刺し子も股引《ももひき》も、他の着替えも、何れもずぶぬれになったからだ。それらの衣類を行李《こうり》ごと胴の間に運び出す者もいる。
五日四晩というもの、水主たちはどれほども眠ってはいない。が、誰の顔にもほっとした安堵《あんど》の色が浮かんでいた。
「眩《まぶ》しいなあ。ありがたいもんやなあ、おてんとさまって」
久吉が薪をひろげながらうれしそうに言った。
「ほんとやなあ。雨も風もやんでくれてよかったなあ」
音吉もしみじみと言う。外艫《そととも》がもぎとられ、舵《かじ》の羽板は流され、帆柱も失った宝順丸は無残だった。だが、青空が大きくひろがり、日の光が背にあたたかく照っている今、何か新たな力が身うちから湧《わ》いてくるような思いだった。
「船玉《ふなだま》さんのお蔭《かげ》やな」
目をくぼませた久吉がにやっと笑った。
「うん、俺もそう思う」
音吉は、嵐の最中にも、必ず船玉が守ってくれると信じていた。琴の髪が船玉として祀《まつ》られている以上、自分を守ってくれないわけはないと思っていたのだ。
「お琴の髪が船玉さんやもな。俺も安心や。音吉のお蔭で大安心や」
ひさしぶりに久吉らしい軽口が出た。と、うしろのほうで吉治郎の声がした。
「うわあ、ぐしゃぐしゃや」
刺し子と股引《ももひき》を両手に吊《つ》るしてみせ、吉治郎はがっくりしたように言う。
「しぼって船縁にかけたらええ」
一緒に衣類を広げていた辰蔵が言った。
「だけどなあ、干したからって、いつまた嵐が来るか知れせんで」
吉治郎がぼやく。
「ぐずぐず言わんと、早くせんかいな」
「どうせまたぬれるかも知れせんのになあ。ああ、もう嵐はこりごりや。いやになってしもうたわ」
吉治郎は突っ立ったまま動こうとしない。その吉治郎を音吉はちょっと悲しげに見た。が、近づいて行って、
「兄さ、折角《せつかく》嵐がやんだことだでな、喜ばにゃあ船玉さまに申し訳ないで」
「ふん、なんや偉そうに」
吉治郎は呟《つぶや》いたが、ぬれた刺し子をふりまわしながら船縁の傍《そば》に立った。
「何だ、吉治郎。お前、弟に説教されてるのか」
利七が、運んで来た薪《まき》を足元に置いて笑った。
「利七、嵐がやんだら、滅法元気になったな」
吉治郎が鼻先で笑った。利七は聞こえぬふりをして、薪を広げた。
師崎の港に船が入った時、利七と吉治郎は、口喧嘩《くちげんか》をした。秋の遠州灘《えんしゆうなだ》は恐ろしいと言った吉治郎に、
「何が恐ろしいか、この意気地《いくじ》なしが」
と利七が嘲笑《ちようしよう》したのだ。吉治郎はむっとして、
「嵐に遭《あ》ったこともない者に、遠州灘の恐ろしさがわかるか」
と言い返した。
ふだんは元気のいい利七が、嵐の間中、南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》の念仏を絶やさなかった。時折《ときおり》、大声で、
「助けてくれーっ」
とさえ叫んだ。吉治郎もその仲間だったが、ふだん元気な利七の悲鳴のほうが、水主《かこ》たちの印象に残った。
今日の昼、みんなは久しぶりにあたたかい飯を食った。水桶《はず》は流れたが、水主《かこ》部屋の真下の船倉には、貯水槽《かよいはず》があり、水樽《みずだる》も幾つか、栓《せん》をして積みこまれてあった。その水に干飯《ほしいい》をしばらく浸して、嵐の最中には、それを飯代わりにしていた。
あたたかい飯を食いながら、水主たちは、のどもと過ぎた熱さのことを口々に話した。そしてその中で、利七の悲鳴が話題になった。
「おい、人間って、わからんもんやな。利七があんな弱気な男だったとはなあ」
誰かが言うと、
「全くや。利七はどんな嵐に遭《あ》っても、どんと来いと胸を叩《たた》いているほうかと思ったがな。滅法信心深くて、念仏ばかりとなえてよ」
「そやそや。吉治郎より弱気やなあ、利七は」
「いやいや、利七のことは笑えんで。お前だって、同じだでな」
「何を言う。そう言うお前も、お父《と》っつぁーん、おっかさーんなんぞと、おらびやがって……」
みんな勝手なことを言いはじめた。嵐になって一日二日は、誰もが驚くほどの力を出して、根《こん》限りに働いた。言葉を交わす暇もなかった。言葉を発せずとも、みんなは一つ体のように心を合わせて働いた。突き刺すような烈風も、沁《し》み入るようなアカの冷たさも、乗り越えて働いた。眠くもなかった。腹も空《す》かなかった。それが二昼夜を過ぎる頃《ころ》から、不安と恐怖におののきはじめた。恐怖の中で、不意に睡魔にも襲われた。四日目頃には、
「母《かか》さまーっ! 助けてくれーっ!」
と泣き出す者が出、一人が泣くと幾人もが泣いた。
「もう駄目《だめ》だあーっ! お父っつぁまぁーっ!」
と悲鳴を上げる傍《かたわ》らで、
「南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》南無阿弥陀仏、伊勢大神宮さま、金比羅《こんぴら》さま、八幡さま……」
と、知る限りの神仏の名を呼んで、
「どうか助けてくだせーっ!」
と泣き叫んだ。利七は船頭重右衛門の肩にすがって、
「親方さま! うちさ帰してくれ、早くうちさ帰してくれーっ!」
と喚《わめ》き立てた。誰もが動転していた。その中で、只《ただ》一人岩松だけが、ほとんどいつもと同じ顔をしていた。自然|水主《かこ》たちは岩松を頼みはじめていた。
「舵取《かじと》りーっ! 助かるかーっ?」
「舵取りーっ! 嵐はいつやむんかー」
と、岩松の顔さえ見れば聞くようになった。が岩松は、
「助かる時には助かる」
「風のやむ時にはやむ」
と、そっけなく答えた。答えにならぬ答えだが、それでも水主たちには頼母《たのも》しかった。岩松についで仁右衛門が落ちついていた。
「泣くなっ!」
「大丈夫だーっ!」
短いが声音《こわね》があたたかかった。元来が世話好きの、親分|肌《はだ》の男なのだ。そして次が船頭重右衛門だった。重右衛門は船頭としての責任の重さに、時におろおろとうろたえることもあった。それは重右衛門の気の弱さからきた。決断力の弱さからきた。この重右衛門よりは、むしろ音吉のほうがしっかりしていた。音吉は、十四歳の年少者とは思えぬ落ちつきをもって、敏捷《びんしよう》に働いた。兄の吉治郎とはちがって、泣きごとを言わなかった。父や母の名も呼ばなかった。
炊頭《かしきがしら》の勝五郎は、念仏こそ絶やさなかったが、なすべきことは手順よく取り運んだ。千石船《せんごくぶね》には常時、非常食の干飯《ほしいい》が積みこまれていたが、勝五郎は梅干しの用意も充分にしておいた。師崎を出た夜、海が荒れた時、いち早く焼き味噌《みそ》をつくりもした。焼き味噌は鍋《なべ》の蓋《ふた》に味噌を厚くぬり、それを直火《じかび》で焼いたものだ。これが今度の嵐に役立った。干飯と梅干しと焼き味噌が、水主《かこ》たちに精気をつけた。
その上勝五郎は、荷打ちが始まると同時に、米二十|俵程《ぴようほど》を三の間に移した。ここは船倉とちがって波もかぶらずアカも浸《つ》かない。それら周到な計らいが、水主たちに計り知れぬ力を与えていた。
意外に意気消沈したのは岡廻《おかまわ》りの六右衛門であった。この宝順丸の中で、最も物知りなのは六右衛門であった。算盤《そろばん》はむろんのこと、読み書きも達者であった。冷静で物ごとに動ずる男とは見えなかった。が、三日目あたりから、俄《にわか》に背中がまるくなり、歩き方までよたよたとなった。みんながアカ汲《く》みをしたり、胴の間に物を干したりしている今も、六右衛門だけは、しめっぽい布団にくるまって、三役の部屋に眠っていた。
「泣いたのは、お前も一緒やな。俺だけではあらせんで」
晴れ上がった空を見上げる利七はふだんの利七の顔に戻《もど》っていた。
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