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海嶺37

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:黒瀬川     三 船頭の重右衛門は、胴の間に出てひげを剃《そ》っていた。今日も眩《まば》ゆいばかりの日の光が、宝順丸を
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黒瀬川
     三
 船頭の重右衛門は、胴の間に出てひげを剃《そ》っていた。今日も眩《まば》ゆいばかりの日の光が、宝順丸を一杯に照らしている。久吉の持った鏡をのぞきこみながら、重右衛門はゆっくりと剃刀《かみそり》を使う。その傍《かたわ》らには、一昨夜の雨にぬれた手拭《てぬぐ》いが置かれてあった。
久吉はその重右衛門の顔をつくづくと見ていた。頬《ほお》がこけ、目がくぼんでいる。しかも髪はもとどりを切ってざんばら髪であり、七日も剃《そ》らなかったひげは長く伸びていた。その片頬《かたほお》のひげが、ぞりぞりと音を立てて剃られていく。ひと所血が滲《にじ》んでいる。
(何を考えているのやろ)
いつもの重右衛門なら、何か言葉をかけてくれるのだ。それが、鏡を持たせたまま、何か考えこんだままひげを剃っている。
胴の間には、今日も衣類や布団や、薪《まき》や米や、様々な物が干されている。作業|甲板《かんぱん》では朝早くから、岩松と水主《かこ》たちの、羽板を造る鋸《のこぎり》の音や、釘《くぎ》を打つ音がしていた。夜通し汲《く》んだ船倉のアカは、ようやく三寸|程《ほど》に減り、そこでもまた船を補強する金槌《かなづち》の音が聞こえていた。言わば、船には活気が満ちているといえた。だが重右衛門の心は重かった。昨日、帆柱の代わりに帆桁《ほげた》を立て、仮帆を上げた。そしてその時は、とにもかくにも、帆を上げ得たことに、重右衛門は安堵《あんど》した。しかし今朝、重右衛門は胴の間に立って、帆を見上げた時、思わずぎょっとした。いつも覆いかぶさるような七丈の帆を見上げていたその習慣が、身についていた。仮帆を上げたのを見てはいたのだが、つい、重右衛門は、いつも見慣れていた帆のつもりで、ひょいと仮帆を見上げたのだ。そして、その余りの貧弱さに驚いたのだった。
そこには二尺八寸角の太い帆柱がそびえている筈《はず》だった。だが、帆桁を代わりに使ったその帆柱は、太い所でさし渡し一尺七寸、しかも先のほうは次第に細って、僅《わず》か一尺であった。二十八|反《たん》の帆は今は七反、それは余りにも哀れな姿であった。
(もし、もう一度嵐が来たら……)
重右衛門はそう思って、心が萎《な》えたのだ。その上、今日もまた船は、黒潮の中を何処《どこ》へともなく漂っていた。昨夜のうちに、どれほど流されたのか、今、船が何処にいるのか、見当もつかない。
勢いこんで羽板を造り、アカの流れ入る隙《すき》をふさいでいる岩松や仁右衛門たちのことを思うと、尚《なお》のこと重右衛門は気が重かった。その暗い重右衛門のまなざしを見ながら、久吉は言った。
「な、親方さま」
「うん」
重右衛門は久吉が傍《そば》にいることを忘れていた。
「何や」
重右衛門は弱々しく答えた。
「親方さま。何でみんなもとどりを切ったんですか」
嵐の最中に、水主《かこ》たちは次々にもとどりを切った。久吉も命じられてもとどりを切った。そのざんばら髪が微風になびく。
「おお、もとどりか」
重右衛門は吾《われ》にかえったように久吉を見、ひげを剃《そ》る手をとめ、
「もとどりを切ったはのう、神仏の前に、吾らの真心を披瀝《ひれき》するためじゃ」
「真心?」
久吉は不審な顔をした。
「ほら、何かのことで、よく頭を坊主にすることがあるだろう。船の中では、坊主にする余裕はないだでな。だが、気持ちはそれと同じことだ」
「なるほど、頭を剃ることと同じことですか、親方さま」
「そうや。第一な、もし難船した時に髪を切っておらんとな、お上のお咎《とが》めがきびしいのじゃ。真実こめて働いたかどうかと、お上の吟味がきついでなあ」
重右衛門はちょっと声をひそめた。が、すぐに苦笑した。その幕府に取り調べられる日が来るかどうかと、重右衛門はふと思ったからである。
見渡す限り、四方八方|只《ただ》海原だ。微風とはいえ、東風《こち》が吹いているというのに、船は潮に乗って風に向かって流れている。この潮をさかのぼる程の風が吹けば、細い帆柱はすぐさま倒れるにちがいない。だが、重右衛門はそれを口に出せなかった。
(岩松や仁右衛門は、何と思うていることやら)
釘《くぎ》打つ音を聞きながら、重右衛門の心は滅入った。その重右衛門の心には頓着《とんちやく》なく、久吉が言った。
「では親方さま、ひげは剃《そ》ってもかまわんのですか」
「そうよのう。つるりとした顔をしていては、これまたお上のお咎《とが》めにあうかも知れぬ。だがのう、国に帰るまでには、まだまだ時が要るでな。あまりむさくしていては、老いこんだように見えて……」
お前たちも心もとなかろうと、言う言葉は胸にのみこんだ。が、重右衛門はそう言いながら決意した。今後どれほどの長い期間、今の状態がつづいても、毎日ひげだけは剃らねばならぬと。それは、日常心《にちじようしん》を失わぬためであった。ざんばら髪になった自分が、ひげ面になっては、水主《かこ》一同の気持ちにも影響すると重右衛門は思ったのだ。その重右衛門の言葉を心にとめてか、とめずにか久吉が言った。
「親方さま。船は国のほうに動いているんやろうか。それとも反対に流されているんやろうか」
さすがに心細げな声であった。
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