十月二十二日
嵐来りて三日、空晴れて風衰う。この間雨降らず、風のみ吹きたれば、飲み水余すところ、僅《わず》かになりたり。
荒波静まりたれば、一同|安堵《あんど》して朝より眠る。されど吾《われ》、あれを思いこれを思いて眠るあたわず。嵐にて記さざりし三日分の日記を、概略|追記《ついき》す。
ああ、伊勢大神宮の大神、願わくは御告《おつ》げの如く五十日にして、一同をその故里に帰させ給え。吾《わ》が命は捧《ささ》ぐるに惜しからねど、親や妻子の待つその故里に、水主《かこ》一同を何卒《なにとぞ》無事に帰させ候《そう》らえ。南無船玉様《なむふなだまさま》、金比羅大権現様《こんぴらだいごんげんさま》、御先祖様、八幡様《はちまんさま》、お諏訪様《すわさま》、富供《ふぐ》神社様、お大師様、薬師如来様《やくしによらいさま》、何卒この祈りを聞き上げ給え。
嵐来りて三日、空晴れて風衰う。この間雨降らず、風のみ吹きたれば、飲み水余すところ、僅《わず》かになりたり。
荒波静まりたれば、一同|安堵《あんど》して朝より眠る。されど吾《われ》、あれを思いこれを思いて眠るあたわず。嵐にて記さざりし三日分の日記を、概略|追記《ついき》す。
ああ、伊勢大神宮の大神、願わくは御告《おつ》げの如く五十日にして、一同をその故里に帰させ給え。吾《わ》が命は捧《ささ》ぐるに惜しからねど、親や妻子の待つその故里に、水主《かこ》一同を何卒《なにとぞ》無事に帰させ候《そう》らえ。南無船玉様《なむふなだまさま》、金比羅大権現様《こんぴらだいごんげんさま》、御先祖様、八幡様《はちまんさま》、お諏訪様《すわさま》、富供《ふぐ》神社様、お大師様、薬師如来様《やくしによらいさま》、何卒この祈りを聞き上げ給え。