十月二十三日
戌亥《いぬい》の風三日吹きたれば、船東南に流されたるや、気温上がる。船は何処《いずこ》へともなく流れ居り。
水主らみな半裸にて打ち過ごす。嵐に気落ちしたる水主ら、言葉少なくなりたり。その中に勝五郎よく働く。即《すなわ》ち、久吉音吉を手伝わしめ、干飯《ほしいい》を作る。干飯|既《すで》に尽きたればなり。仁右衛門また、船倉に水主を励ましてアカを汲《く》む。
吉治郎帰国の望みうすくなりしと、しきりに泣きて一人打ち臥す。気の滅入ること一方《ひとかた》ならず。本日も雨なし。
戌亥《いぬい》の風三日吹きたれば、船東南に流されたるや、気温上がる。船は何処《いずこ》へともなく流れ居り。
水主らみな半裸にて打ち過ごす。嵐に気落ちしたる水主ら、言葉少なくなりたり。その中に勝五郎よく働く。即《すなわ》ち、久吉音吉を手伝わしめ、干飯《ほしいい》を作る。干飯|既《すで》に尽きたればなり。仁右衛門また、船倉に水主を励ましてアカを汲《く》む。
吉治郎帰国の望みうすくなりしと、しきりに泣きて一人打ち臥す。気の滅入ること一方《ひとかた》ならず。本日も雨なし。