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海嶺59

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:月の下     二 その夜、水主《かこ》たちはぐっすり眠りこんでいた。仕事らしい仕事のない毎日だったが、その日、水主頭仁
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月の下
     二
 その夜、水主《かこ》たちはぐっすり眠りこんでいた。仕事らしい仕事のない毎日だったが、その日、水主頭仁右衛門が、水主たちに船内を隅《すみ》から隅まで拭《ふ》かせたのだ。水主部屋の中はむろんのこと、胴の間から舳《へさき》の甲板《かんぱん》まで、空布《からぶ》きんをかけさせ、船縁も磨かせた。曾《かつ》てないことであった。来る日も来る日も無為に過ごしていた水主たちは、絶えずいらいらし、些細《ささい》なことで争った。時には殴り合い、つかみ合いが始まることもあった。相手のざんばら髪を引きずりまわすような乱暴を働く者もあった。
一旦《いつたん》嵐になると、一同は心を合わせて船倉のアカを汲《く》み、念仏をとなえて励まし合った。が、嵐が去るとたちまち和は崩れた。そんな水主たちを見て、新たな仕事を水主頭《かこがしら》は考えついたのだ。水主たちに体を休める暇を与えぬことが先決と見たのだ。
それが効を奏して、水主たちは夕食の後、いつもより早く寝についた。その水主たちの寝息やいびきが、静かな部屋の中に満ちていた。
その真夜中のことだった。三役部屋の仕切り戸が静かにあいた。吉治郎だった。吉治郎は入り口に突っ立ったまま、一人一人の寝顔を、見まわした。薄い布団から、半身をはみ出して寝ている者、かいまきを頭までかぶって寝ている者、様々だ。だが、みんな一様に眠りこんでいる。
安心した吉治郎は、三役部屋の近くに寝ている炊頭《かしきがしら》の勝五郎の傍《そば》に屈《かが》みこんだ。勝五郎のいびきは人一倍大きい。その首にかかったひもに、吉治郎は息をつめて手を伸ばした。ひもに貯水槽《かよいはず》の鍵《かぎ》がついている。
吉治郎の顔が緊張した。貯水槽の鍵を吉治郎は取ろうとしていた。吉治郎は、勝五郎の寝息を窺《うかが》いながら、吊行灯《つりあんどん》の淡い光りを頼りに、ひもの結び目を解き始めた。
と、勝五郎のいびきがぱたりととまった。吉治郎ははっと手を引いた。が、まもなく勝五郎は更に大きないびきを立て始めた。ほっとして吉治郎は再び手を伸ばした。
吉治郎は今夜、のどが乾いてならなかった。何としても水がほしかった。ここしばらく雨は一滴も降ってはいない。風の激しい時でも、雨を伴わなかった。雨乞《あまご》い踊りをしても、いつかのようにあらたかな霊験《れいけん》はなかった。毎日、らんびきをして潮水から真水を得たが、それも一日八|升《しよう》がぎりぎりであった。五升の米を炊《た》くには五升の水が要る。あとの三升のうち、一升四|合《ごう》を十四人の飲み水とした。一日一合では足りる訳はない。が、公平に分配して、一合|宛《ずつ》で満足せねば、たちまち水飢饉《みずききん》となる。今日は、常より作業が多かったから、水主《かこ》たちには五|勺《しやく》宛追加があった。少しずつ貯めて来た水があったからだ。
しかし、一日中寝ている岡廻《おかまわ》りと吉治郎には、追加の水は与えられなかった。それが吉治郎には不服でもあった。が、何より、夕食時に岡廻りの分まで味噌《みそ》をなめたのが悪かった。夜の更けるに従って、のどがひりついてきた。懸命に舌を動かしてみたが、唾液《だえき》は思うように出ない。只《ただ》、口の中が粘つくだけだった。
(ああ、水が飲みてえ)
思うと、吉治郎は矢も楯《たて》もたまらなくなった。
(俺は病人だ。病人には水が要るんだ)
そう理屈をつけて見た。
(せめて、盃《さかずき》にひとつでもいい)
吉治郎はそう願った。が、貯水槽《かよいはず》には鍵《かぎ》がかかっている。その鍵は、炊頭《かしきがしら》の勝五郎が常時首にかけている。
(仕方がねえ)
ひりつくのどの乾きに耐えながら、吉治郎は眠ってしまおうと思った。が、眠ろうとすればするほど、船端を叩《たた》く波の音が耳につく。波の音は即《すなわ》ち水の音であった。
(なぜ、海の水が飲めねえのか)
潮水を飲むと、気が狂うと聞かされてきた。飲めば尚更《なおさら》のどが乾くとも聞いてきた。
(よし! 鍵を借りて水を飲もう)
万一見つかっても、殺されることはあるまいと、吉治郎はふてぶてしく思った。
(勝五郎の奴《やつ》、自分だけは腹一杯飲んでいるかも知れせんな)
だから勝五郎は元気なのだと、吉治郎は勘ぐった。そう思うと、勝五郎の鍵《かぎ》で、貯水槽《かよいはず》の蓋《ふた》をあけ、少しくらいの水を飲んでもかまわぬような気がした。
吉治郎は一日中寝こんではいるが、歩けないわけではない。大小便の時には胴の間に行って、桶《おけ》に用を足す。只《ただ》、起きる気にならないだけだ。
もし、鍵を取ろうとしている所を見つかったら、よろめいて手をついたと、弁解する言葉も用意して、吉治郎は水主《かこ》部屋に入って来たのだった。しかし、その心配は要らなかった。
勝五郎は少し赤い顔で、高いびきをかいていた。吉治郎は腹を据《す》えて、鍵のひもを解いた。
鍵を握りしめた吉治郎は、再び三役部屋に入り、胴の間に出た。月が皎々《こうこう》と輝いている。吉治郎はあたりに気を配りながら、踏立板《ふたていた》を外し、船倉に下りて行った。目指す貯水槽は船玉《ふなだま》を祀《まつ》った傍《そば》にある。吉治郎は息をとめて錠前《じようまえ》に鍵をさしたが、さすがに手がふるえた。さしこんだ鍵を廻《まわ》すと、錠前はかちりと音を立てて開いた。のどが一段とからからになった。舌が上あごにぴたりとついたままだ。吉治郎は蓋を取り、こわごわ中をのぞきこんだ。意外に水は貯水槽の半ばまであった。吉治郎は水槽の中に吊《つ》り下がっている柄杓《ひしやく》を取り、水を掬《すく》った。水はかすかな音を立てた。
その柄杓に、いままさに口をつけようとした時だった。吉治郎の持った柄杓を、ぐいと取り上げた者がいた。はっと胸をとどろかした瞬間、吉治郎はしたたか突き飛ばされていた。
「この野郎!」
利七の声だった。
「太い野郎だ。病人の癖《くせ》に!」
利七の声が、船倉の中にこだました。踏立板《ふたていた》を外した一劃《いつかく》から、月光がさしこんでいる。
「利七、見、見逃してくれ。た、頼むから水を飲ましてくれ。ひと口でいい。たったひと口でいい」
吉治郎は這《は》いつくばった。
「ならん。水を飲むことだけは、絶対許さん」
言いながら利七は、吉治郎の肩を蹴《け》った。吉治郎は意気地なく引っくり返りながら、尚《なお》も頼んだ。
「頼む、拝む、このとおりや」
吉治郎は両手を合わせた。
騒ぎを聞きつけたのか、胴の間に足音が乱れた。
「どうした!? 何が起きた!」
叫んだのは船頭の重右衛門だった。
「吉の野郎が、水を盗もうとしたんでえ」
「何!? 水を?」
「吉の野郎があ?」
「太い野郎だ。殴っちまえ!」
声が乱れ飛び、水主《かこ》たちがどやどやと船倉に下りてきた。が、吉治郎は、恥も外聞もなかった。重右衛門の足に腕を絡ませ、
「親方さまーっ! 水ば飲ませてくれーっ! 水ばーっ! もう死にそうやーっ!」
と、声を上げて絶叫した。
「それはならん、吉治郎。おきてはおきてだ」
重右衛門は首を横にふった。水主たちはいきり立って、
「親方さまっ! 吉をどうするつもりですかい?」
「みんなでぶんなぐって、他の者へのみせしめにしなけりゃあ」
「そうだそうだ。水はみんなの命だで。水を盗む者は命を盗む者だ。絶対許してはならん」
「病人の癖に、とんだことをしやがる!」
水主たちは吉治郎を小突《こづ》きまわした。それを押しとどめて重右衛門は言った。
「ま、それぐらいでやめておけ。ところで利七、お前どうして気づいたんだ?」
「へえ」
利七が大息をついた。水主たちが利七の言葉を待った。
「わしは、何となく寝そびれて、故里《くに》のことなんぞ思い出していたんですわい。すると三役部屋の戸がすっとあいた。はてな? と、うす目をあけて窺《うかが》ったら、吉の奴《やつ》が突っ立っている。何の用かと思ったが、用を足してやるのも面倒だで、眠ったふりをしていたら、吉が炊頭《かしきがしら》の首のあたりに手を伸ばしたんですわい」
「うむ、そしてどうした」
重右衛門が促す。
「へえ、それから野郎は、炊頭の肌身《はだみ》離さず持っている鍵《かぎ》を盗もうとして、ひもを解きはじめやした」
「なるほど、それでお前はここまで尾《つ》けて来たと言うわけか」
「へえ、現場をおさえなきゃ、と思ったで」
誇らしげに利七が言った。水主《かこ》たちは口々に、
「この野郎! とんでもねえ野郎だ」
「明日から叩《たた》き起こして、追い使ってやらにゃ」
「いや、ぶんなぐらにゃわからんで」
と罵《ののし》った。その時、水主たちの前に、音吉がころがるように飛び出してきた。
「すまん。兄さがすまんことをした。皆さん、どうか許してやって下さい」
と船底に頭をすりつけ、
「親方さまっ! わしは明日の飲み分も、明後日の飲み分も要りません。どうぞ兄さに、たった今、ひと口でも飲ましてやって……」
音吉はわっと声を上げて泣いた。
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