五月十三日
四日続けて魚獲れたり。こは藻に虫生じたる故《ゆえ》ならむと岩松言う。今まで幾度となく、魚かからぬかと釣針《つりばり》を垂れたれど、雑魚二、三度釣れたる外《ほか》は、かかる見事なる魚に会わざりき。黒き斑点体に現れ、身も心も弱りいたることなれば、この鰹《かつお》、神の使いの如く思おゆ。死にたる政吉の外は、この鰹四日つづけて食いし効目《ききめ》現れたり。辰蔵も利七も、人心地つきし顔にて、胴の間にふらふらと歩む程に回復す。仁右衛門然り吾《われ》然り。八百万《やおよろず》の神々に朝夕礼を申し上げざるべからず。
四日続けて魚獲れたり。こは藻に虫生じたる故《ゆえ》ならむと岩松言う。今まで幾度となく、魚かからぬかと釣針《つりばり》を垂れたれど、雑魚二、三度釣れたる外《ほか》は、かかる見事なる魚に会わざりき。黒き斑点体に現れ、身も心も弱りいたることなれば、この鰹《かつお》、神の使いの如く思おゆ。死にたる政吉の外は、この鰹四日つづけて食いし効目《ききめ》現れたり。辰蔵も利七も、人心地つきし顔にて、胴の間にふらふらと歩む程に回復す。仁右衛門然り吾《われ》然り。八百万《やおよろず》の神々に朝夕礼を申し上げざるべからず。