“無用の被ばくは避けられた”
7月15日 18時44分
東京電力福島第一原発の事故で、放射性物質の広がりを予測するシステム「スピーディー」について、政府の事故調査検証委員会は、「予測がいかされていれば、住民が無用な被ばくを避けられた」とする見解を、最終報告に盛り込むことがわかりました。スピーディーを住民の避難にどう活用するのか、今後の議論に影響をあたえそうです。
福島第一原発の事故では、去年3月15日に、もっとも多くの放射性物質が放出され、飯舘村など、原発の北西方向に広がったとみられています。こうした放射性物質の北西への広がりを予測していたシステムがスピーディーです。
去年3月15日の午後、南相馬市や浪江町の住民は、原発から遠ざかろうと北西の方向に避難しました。しかし、スピーディーは、当時の風向きから、「放射性物質は主に北西の方向に広がる」と予測していました。実際に、この日の夜には、原発の北西およそ20キロの地点で、最大で1時間あたり330マイクロシーベルトという高い放射線量を観測しています。一方で、スピーディーは、「3月16日あけ方からは、放射性物質は、海側に広がる」と予測していました。
このため、政府の事故調査検証委員会は、「スピーディーの予測がいかされていれば、住民は15日には屋内にとどまり、16日になってから、避難することができ、無用な被ばくを避けられた」としています。
避難した人たちは、「逃げた場所がいちばん線量が高かったので、それが前もって、そのスピーディーが公開されてれば、別の方向に逃げただろうし。」「やっぱり、公開するものはきちっと早く公開して、そして、われわれがとるべき手段というのもあったんですけれどもね。それができなかったのは、非常に残念です。」
専門家でつくる事故調査委員会は、ほかにも、国会の事故調査委員会がありますが、最終報告では、「スピーディーは初動の避難の根拠にできるほど正確性を持つものではない」としています。
スピーディーをどう活用するか、2つの委員会で見解が分かれたことは、今後の議論に影響をあたえそうです。
専門家は、「なんでも使える情報があったら、それを有効に使うと。確かなら不確かなりに、たとえば、ここからここまでは、非常にある程度、危険な状況にあるとゆったら、その大きく網を打って、危険を減少させるという努力をすべきだと思ってますよね。」