新燃岳 噴煙高度推定の新手法
7月22日 18時51分
火山に関する新たな研究成果です。去年、大規模な噴火が起きた霧島連山の新燃岳(しんもえだけ)で、噴火直後の山の斜面のわずかの変化をとらえて、噴火の規模をすぐに推定できる新たな方法が見つかりました。住民のより早い避難などにつながる研究として期待されます。
鹿児島県と宮崎県の県境にある霧島連山の新燃岳では、去年1月下旬に本格的なマグマ噴火が起きました。周辺の市や町に、大量の火山灰や小さな噴石(ふんせき)が飛び散り、農作物などに被害が出ました。
新燃岳では、噴火のたびに噴煙が上がりました。噴煙の高さは、噴火の規模を知るうえで重要な手がかりとなりますが、どこまで達するのかは、すぐにはわかりません。少しでも早く噴火の規模を知る方法はないのか、防災科学技術研究所の小園 誠史(こぞの ともふみ)さんが注目したのは山の斜面の変化でした。斜面の変化と噴煙の高さとの関係をとらえることに、日本で初めて成功したのです。
「傾斜計という地面の傾きを測る計測器というものが置かれていまして、傾斜の変動から噴煙の噴出、マグマの噴出した量とか、マグマの噴出率というものが正確に見積もることができる。」
なぜ、斜面の傾きの変化で噴煙の高さがわかるのでしょうか。火山が噴火すると、地下のマグマやガスがそとに噴き出すため、山はごくわずかですが、沈み込むように縮みます。傾斜計を使って噴火前と噴火後の斜面の傾きがどれだけ変わったかをとらえます。
去年1月、噴煙が火口から高さおよそ6000メートルまで上がった噴火で変化が観測されました。この図では、大きく沈み込んだように描いていますが、実際には5キロ先で1ミリというごくわずかな変化です。一方で、噴煙の高さが2000メートル程度だった別の噴火では、斜面の変化は、その半分かほとんどありませんでした。夜間や悪天候で火口が見えないときでも、斜面の変化の状況から噴火直後に噴煙の高さを推定することができます。
「火山の周りで、住んでいらっしゃる方々に、この与える被害を及ぼすという火山災害というものを、どれくらいの領域まで達してしまうのかということをなるべく早い段階で把握することができると」
噴煙の高さなどがわかれば、噴火そのものの規模や火山灰が広がる範囲が推定できることから、今回の研究成果は住民や観光客の避難などにつながると期待されます。