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悪魔を追い詰めろ!02

时间: 2018-06-26    进入日语论坛
核心提示:2 MとN「ほう!」 野田は顔を上げて、紀子の顔を一目見るなり、愉快そうに声を上げた。「その傷は? 男をめぐって女同士、
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2 MとN
 
「ほう!」
 野田は顔を上げて、紀子の顔を一目見るなり、愉快そうに声を上げた。「その傷は? 男をめぐって女同士、取っ組み合いでもしたか?」
「そんなことじゃないんです」
 頬》っぺたやおでこにバンソウコウを貼《 は》った間近紀子は、制服姿に学生鞄《 かばん》——通っているN女子学園からの帰りである。
 紀子は、ドサッとソファに座って、
「コーヒー下さい」
 と言った。
「喫茶店じゃないぞ」
 野田は文句を言いつつ、机のインタホンで、「コーヒーを持って来い。ミルクだけ。シュガーなしだ」
 と、命令した。
「どうだ。ちゃんと憶えてるだろ」
 ──野田重人は四十五歳。見るからに落ちついた「実業家」然としている。片や間近紀子は十七歳の女子高校生。
 これほど対照的な二人というのも珍しいだろうが、この二人、何だか「仲がいい」のである。
 実は紀子のボーイフレンドだった中野哲《 てつ》郎《 お》が、この野田の子《ヽ》分《ヽ》だった。そして、ある殺人事件に係わって、容疑者にされてしまった。
 その哲郎を、紀子と野田は力を合せて救ったのだ。今、哲郎は別の軽い罪で服役しているが、そう長く入っていることもあるまい。
 野田は、コーヒーが来ると自分も一息ついて、
「さて、何か用かね」
 と言った。「何の用もなく、N女子学園のお嬢様が、こんなむさ苦しい所へおいでにゃならないだろう」
「それ、皮肉ですか?」
 と、紀子は言って、コーヒーを一口飲むと、「もう少し新しい豆を使って下さい」
「うるさい奴《 やつ》だな」
 と、野田は苦笑した。
 表向きは「実業家」だが、裏では「ギャング」──とまで言っては可哀そうか。しかし、違法なことで稼いでいるのは確かなのである。
「三日前、うちの学校の先生が亡くなりました」
 と、紀子は言った。
「そりゃ気の毒に。花環でも出そうか」
「茶化さないで」
 と、紀子はにらんで、「そのときの事情は、こうだったんです」
 そのときの一部始終を話すと、聞いていた野田の顔に警戒するような色が浮んだ。
「──なるほど」
 と、野田は肯《 うなず》いて、 「しかし、女生徒のヒステリーにまで俺《 おれ》は責任持てないぜ」
「分ってるんでしょ」
 と、紀子は言った。「栗田みゆきは麻薬をやってたんです」
「そんなことだと思った」
 と、野田は肩をすくめた。「しかし、どうしろって言うんだ? 俺の所じゃクスリはやってない。知ってるだろ」
「ええ」
 と、紀子は肯いた。「でも誰《ヽ》が《ヽ》扱ってるかは知ってるでしょ」
「おいおい。──俺を殺す気か? 同業者の一人を、サツへ突き出す? そんな真似をしたら、俺は三日以内に川へ沈められちまう」
「大丈夫ですよ。今の川はたいていふさいであります」
 と、紀子は平然と言った。「ともかく、麻薬が安東先生を殺したというのは確かです。その犯人を、何としても見付けたいんです」
 野田は、深々とため息をついて、
「力になってやりたいとは思ってる。しかしな、俺の手に余ることだってあるんだ。俺は大統領じゃないんだからな」
「分ってます。何も、アケミさんを悲しませようとは思いません」
 アケミは、野田の「愛人」だ。野田の妻子は、身の安全を考えて北海道にいて、野田は「女に不自由しない」身分。
 しかし、実情はなかなかややこしいのである。
「何か情報を下さい。それだけでいいんです」
「それで、どうするっていうんだ?」
「私が犯人を捜します」
 野田は首を振って、
「やめとけ。あの連中は、人を消すことなんか何とも思っちゃいないぞ。『手をひけ』と脅すなんて、まどろっこしいことはしない。いきなりお前を取っ捕まえて、散々オモチャにした挙句、どこかの山奥の湖にでも、石をくくりつけて沈める。でなきゃ、麻薬を射《 う》たれて中毒になるまで閉じこめられ、後は男たちの慰みものだ。悪いことは言わねえ。やめとけ」
「でも、私一人の問題じゃありません。N女子学園を守らなくちゃならないんです。麻薬から」
「何だって?」
 と、野田は目を丸くした。
 トントン。ドアをノックする音がして、
「──入ってもいい? あら、あなただったの」
 と、アケミが入って来ると、紀子を見て言った。
「何か用か」
 と、野田はちょっと苛《いら》々《いら》した口調で、 「大事な話の最中なんだ。後にしろ」
「あら、ごめんなさい」
 と、アケミは素直に言って、「じゃ、後でもいいわ」
「ああ」
 アケミは出て行こうとして、
「紀子さん、そのバンソウコウ、どうしたの?」
「ちょっとしたアクセサリーです」
「そう。この人に襲われたわけじゃないわよね」
「もし、そんなことがあれば、野田さんの方は全身包帯巻いて、ミイラ男になってます」
 アケミは大笑いしながら出て行った。
「──勝手なことばっかり言いやがって」
 と、野田はむくれている。
「アケミさんって、いい人じゃないですか。大切にしないと」
「お前にお説教される覚えはないぜ」
 と、野田は言い返した。「──哲郎に会いに行ったか」
「ええ」
「元気そうか」
「とても。──もちろん、うちの両親が知ったら、腰抜かすだろうけど」
「全く、お前は変った奴だよ」
 野田は、自分の肘《 ひじ》かけ椅《い》子《す》に座り直して、 「MとNか……。そんなことを言ったっけな、この前のとき」
 紀子は黙って微《ほほ》笑《え》んだ。
 間近紀子の〈M〉。野田重人の〈N〉。
 その二つを並べて、〈MとN探偵事務所〉などとふざけて呼んだのである。
「野田さん」
 と、紀子は改まった口調で、「私はあなたに借《ヽ》り《ヽ》があるんです。分ってるでしょうけど」
 野田はチラッと紀子の白い足に目をやった。
 哲郎を助けたとき、野田は代りに紀子の体をもらうと言って、しかし、結局手は出さずに終っていた。
「そのことなら、俺が勝手に権利を放棄しただけさ」
「でも、気になってるの」
 紀子は、小さく笑って、「変ね。忘れてくれてるのに、わざわざ……」
 野田は、ゆっくりと息をついた。
「──話してみな。俺に何ができるっていうんだ?」
 
「ともかく──」
 と、学園長は言った。「今、大切なのは、このN学園の名前に傷がつくような事態を避けることです」
 教師たちは何も言わなかった。
 会議はもう二時間も続いていて、みんな疲れていた。何といっても、事の真相がはっきりしていないのだ。いくら話し合っても、議論はすれ違い、空回りするばかりだった。
「──この学校の生徒が、特に狙《 ねら》われているという証拠はありません」
 学園長の永井の言葉に、何人かの教師は口を開きそうにしたが、しかし結局、そのまま黙ってしまった。
「よろしいか。万一、そんな噂《 うわさ》が広まって、父母の耳にでも入ったら。──たちまち子供を転校させる家が続出する。そうなったら、学校経営そのものが成り立たなくなるのです」
 と、永井は言って、全員を見回した。「学校の存続。──正にそれこそ第一です。すべてのことは、その次に考えなくてはならない」
 六十を越えている永井は、声こそ少し弱々しくなっていたが、説得力のある口調は失っていなかった。
「園長先生、お話は良く分りました」
 と、学年主任の水上が禿《 は》げた頭を汗で光らせて、
「しかし、何ごともなかった、とは言えないでしょうし……」
「もちろん! 事は単純です。どんなに気を付けていても、良い種の中に悪い種が混じることはある。そのときは、悪い種を取り出すだけです」
「というと……」
「栗田……みゆきといいましたか」
 永井はメガネをかけて手もとの資料を見ると、「この生徒に関しては、退学を勧告しましょう。麻薬をやっていたのですからな、処分としては当然です」
「待って下さい」
 と、若々しい声が上った。
「大久保先生。ご意見でも?」
「僕は、栗田みゆきの担任として、今回の出来事に関して、責任を感じています」
 今年三十二歳になる青年教師は言った。「栗田みゆきは、大変真面目な生徒で、常習的に、あんなものをやっていたとは考えられません」
「一回やれば充分です。違いますか」
「確かに。しかし、本人は全くそんな記憶がないと述べています。昼休み、食堂で買ったコーラを飲んだら頭がボーッとして来た、ということです。誰かが、麻薬を入れたコーラを彼女に飲ませたとしたら……」
「当人の言い逃れでないと言えますか? 誰しも、退学にはなりたくない」
 と、永井は言った。
「もし本当ならどうします。栗田一人を退学させて、問題は解決しません」
「しかし……一体誰がそんなものをコーラに入れたりしますか」
 と、他の教師が言った。「出入りの業者は古い付合いだし、コーラを売っている、あのおばさんたちは麻薬の売人にゃ見えんが」
 笑いが起こった。永井が顔をしかめて、
「安東先生が亡くなっているのですぞ」
 と、たしなめると、急に静かになる。
 永井は水上の方へ、
「葬儀の方はよろしく頼みますよ」
 と言った。「では、これで終りましょう」
 何となく戸惑った空気が流れたが、学園長はさっさと会議室を出て行ってしまった。
 そして、教師たちもダラダラと仕度をして立ち上り、二人、三人と固まってヒソヒソと話をしながら出て行く。
「──大久保先生」
 と、水上が、座ったままの大久保の後ろで足を止めると、「まあ、そう気にせずに。先生は担任を持たれて、まだ短いですからな。しかし、じきに慣れますよ。どうやったところで、手に負えない生徒ってのはいるもんです」
 大久保は、黙ってファイルを閉じると立ち上った。
「──大久保先生」
「栗田を退学処分にして、早くけ《ヽ》り《ヽ》をつけたい。その気持は分ります。しかし、放っておけば、また犠牲者が出るかもしれませんよ」
 そう言って、大久保は足早に会議室を出て行く。
 水上はため息をつくと、小さく首を振って、
「若いな……。俺も昔はああだった」
 と呟《 つぶや》いたのだった……。
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