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花嫁の卒業論文05

时间: 2018-06-28    进入日语论坛
核心提示:4 落ちた天井「おはよう!」 と、亜由美は言った。「ああ、お腹空《なかす》いた!」「元気ね、亜由美は」 と、聡子が呆《あ
(单词翻译:双击或拖选)
 4 落ちた天井
 
「おはよう!」
 と、亜由美は言った。「ああ、お腹空《なかす》いた!」
「元気ね、亜由美は」
 と、聡子が呆《あき》れたように言った。
 朝食のテーブル。——食堂は朝の光が射し込んで、まぶしいほど。
 亜由美たちもかなり早起きだったが、もっと早い客もいて、あちこちのテーブルから、
「もう朝、二回も入ったよ」
 といった声が聞こえてくる。
「——聡子、お風呂《ふろ》に入ったの?」
「うん。一回だけね」
 と、朝食の盆が来ると早速食べ始めて、「そういえば、亜由美、今朝どこかに出かけた?」
「うん、ちょっとね」
 と、亜由美は言った。「——あ、ドン・ファンに何か食べるもん持ってってやらないと恨まれちゃう」
「昨日の人、大丈夫だったかしら」
 と、そのみが言って、「——あ、あの人だわ」
 食堂へ入って来たのは、昨日、駅からのマイクロバスで一緒になった一人旅の女性。
「お風呂で溺《おぼ》れたっていう、珍しい人ね」
 聡子の言葉に、
「シッ。悪いでしょ、そんなこと言っちゃ」
 と、亜由美はたしなめた。
 その女性は、そのみに気付くと、おずおずとやって来て、
「ゆうべは失礼しました……」
 と、消え入りそうな声で言って、頭を下げた。
「いいえ、何でもありませんわ。もう大丈夫?」
「はい……。少しこぶ[#「こぶ」に傍点]ができてますけど」
 と、頭の後ろへ手をやって照れたように笑う。
「よろしかったら、ご一緒にいかが? お一人でしょ?」
「でも……。いいんですか?」
「どうぞどうぞ」
 と、亜由美は椅子《いす》を引いた。
「——すみません。あの——私、矢田部江利といいます」
 亜由美たちも自己紹介して、
「あと、留守番してるダックスフントがドン・ファンといいます」
 と、付け加えた。
「まあ、面白い名前」
 と、矢田部江利は微笑《ほほえ》んだ。
 朝食の盆が来て、聡子が張り切ってご飯をよそってやると、すっかり恐縮しているこの矢田部江利……。
 むろん、沢木の恋人である。沢木を自分から奪おうとしている女、倉本そのみについてここへやって来た。
 どうしようというはっきりした目的があったわけではないけれども、ともかくどんな女かそばで見たいと思ったのだ。
 それが……。ゆうべ、この旅館に着いてひと風呂浴びようというので行ってみると、何と倉本そのみが一人で大浴場にいた、というわけである。
 二人きり。しかも、江利がここへ入るのを誰も見ていない。
 そうだ。——この女がもし足でも滑らせて頭を打ち、お湯の中で溺れ死んでしまったとしたら?
 そしたら沢木は江利のものになる、この女さえいなければ。——この女さえ。
 江利は、突然わき上ったその考えに、逆らうことができなかった。
 もうもうたる湯気の中、江利は気持良さそうにお湯に浸《つか》っている倉本そのみの方へ近寄って行った。
 思い切り、体重をかけてあの頭をお湯の中へ押し込めて沈めてやる。そうして、しばらく押えつけておけば……。
 江利は、ゆっくりとお湯の中で立ち上り、両手を目指す女の頭へと——。
 ところが、そのとたん、江利は滑る石のような物を踏みつけてツルッと足を滑らせてしまった。
 アッと思う間もない。引っくり返ったとき、湯舟のへりに頭をもろに打ちつけて、気を失ってしまった。ズブズブとそのまま江利の体はお湯の中へ……。
 そして気が付くと、脱衣所の床に寝かされて、覗《のぞ》き込んでいたのは倉本そのみ。
「良かった、気が付いて!」
 何と、逆に江利の方が溺れかけて、そのみに助けられてしまったのだ!
 江利の情ない気分は想像するに余りあるものだった。
「——お一人で旅行されるのがお好きなの?」
 と、そのみが朝食を食べながら訊《き》いた。
「いえ……。そういうわけでも」
 まさか、あんたを殺しに来たのよ、とも言えない。大体カッコ悪くて!
「私たち、岬信介のことを調べに来たんですよ」
「岬……?」
「作家。でも、ベストセラーとは縁のない人で、この温泉町にいたんです」
「はあ……」
「そのことなんですけど」
 と、亜由美が口を挟んだ。「私、朝ちょっと出かけて来まして。岬信介の住んでた所っていうのを、聞いて来ました」
「まあ、凄《すご》い!」
 そのみが目を丸くして、「さすがは塚川さんね。この人、今までに殺人事件とかいくつも解決している名探偵なの」
 と、江利の方へ「注釈」を加える。
「はあ……」
 江利が今さらのように青くなった。
「それじゃ、食べたら出かけよう」
 と、聡子が言った。「亜由美は少しは役に立つね」
「何よ!」
 二人でやり合っているのを見る内に、江利は笑い出してしまっていた。そして——何だか、倉本そのみを殺そうという気分にはとてもなれそうになくなったのである。
 
「——もう誰《だれ》も住んでなかったのね」
 と、そのみが言った。
 明るい日射しの中、その家は「荒れ果てる」という言葉がまことにぴったりくる状態だった。
 雨戸は外れ、ガラスは割れて、天井さえあちこち穴が開いている。
「ガラスの破片、踏まないでね」
 と、そのみが言った。「でも、ともかく岬信介が住んでた所なんだわ!」
「中へ入ってみましょ」
 亜由美が、外れた戸を適当にどかして中へ入った。ノコノコとドン・ファンがついて来る。
「——雰囲気あるわね」
 と、亜由美は言った。「心中した二人のお化けでも出るかしら」
「ワン」
「冗談よ」
 そのみと聡子も上って来る。そして——矢田部江利も。結局、ついて来てしまったのである。
「——でも、勝手に入っていいのかしら?」
 と、そのみが言った。
「勝手じゃありません」
 と、亜由美は庭の方へ目をやって、「あの人の許可を得てあります」
「あら、あの人……」
「旅館にいた人ね」
 と、聡子が言った。
 その娘は、庭に立って頭を下げた。
 亜由美が言った。
「亡くなった岬信介のお嬢さん、紀子さんです」
 
「——女将《おかみ》さん、お電話です」
 と呼ばれて、黒田忍は、とりあえず、
「はいはい」
 と返事をした。
 ともかく忙しい——というより、忙しくしているのが好きな性格である。
 駆けて行って電話に出ると、
「——はい。——もしもし?」
 向うは何も言わなかったが、忍には分った。「あなた[#「あなた」に傍点]ですね」
 少し荒い息づかいが聞こえた。
「もう勘弁して下さいな」
 と、声を低くして、「私だって、これ以上は——」
「何も言うな」
 と、その声[#「その声」に傍点]は言った。「女が三人、来ているな」
「三人……。ええ、犬が一匹と」
「そんなことはどうでもいい。——若い女たちだな」
「ええ。でも——」
「誰か一人、離して連れて来るんだ」
「だけど……。他の子たちが怪しみますよ」
「お前が心配することはない」
 と、その声は言った。「いいな、お前はいやとは言えない立場なんだぞ」
 忍の顔が曇った。
「分りましたよ。じゃ、何とかして……」
「連絡を待ってるぞ」
 電話が切れた。——忍は難しい顔で受話器を戻すと、
「女将さん、すみません」
 と呼ぶ声に、
「はい!」
 と、すぐにいつもの明るい声に戻って駆け出して行った。
 
「——父は出て行きました。風の強い夜で、木の枝がちぎれて飛びそうになっていたことを憶《おぼ》えています」
 と、紀子は庭から道の方を見ながら言った。
「おいくつだったんですか」
 と、そのみが訊く。
「七つでした」
「七つ……。じゃ、それまではお二人で?」
「母がどうしたのか、私もよく知らないんです。物心ついたころは、もう母はいなくて、父と二人でここで暮していました」
 と、今は廃屋となった家を見上げた。「ずいぶん久しぶりです、ここに来たのは」
 亜由美は、ドン・ファンがさっきから床下を覗《のぞ》いている様子を見ていて、気にしていた。——どうも、ただ面白がっているとも思えなかったのである。
「お父さんは心中なさったってことですけど——。俊子さんという方と」
 そのみの言葉に、紀子は少し困った様子で、
「ええ……。そういうことになっていますけど……」
「なっている?」
「私——ともかくまだ七つでしたから、俊子さんという女性と父の間に何があったのか、俊子さんがどういう人だったのか、知らないんです」
「姓は?」
「さあ……。父の死後、私はしばらくこの町を離れて、親戚《しんせき》の所で育てられていたんです。みんな父のことは口にしなかったし、私も訊きませんでした。——俊子さんという人のことも、さっぱり……」
「そうですか。——じゃ、この町へ戻られたのはいつごろ?」
「まだこの何か月かです」
 と、紀子は言った。「親類の家でもお手伝いさん同然でしたから、いやになって。——それであの旅館に住み込みで働くことになったんです。今は大江さんが色々面倒をみて下さって」
「大江さん?」
「ええ。この町一番のお金持で、町外れにお家があるんですけど、時々あの旅館に泊りにみえています」
 紀子は、ちょっと落ちつかない様子で、「女将さんは、私が町を出るようにしたかったんですね」
「そのようですね。塚川さんがあなたを駅で捕まえてくれなかったら——」
「でも、行かなかったことが分ったら、きっと女将さんが怒るわ」
「その点はご心配なく。私たちのせいですもの。きちんとご説明します」
 と、そのみは言った。「でも、どうしてあなたを遠ざけようとしたんでしょうね」
「この町では、父のことは話せないんです」
「なぜ?」
「さあ……。私も知りません。でも、なぜだか、みんなが避けているように感じますわ、私のこと」
 紀子は首を振って、「きっと何か[#「何か」に傍点]あったんです。父とこの町の人たちとの間に」
「その——大江さんという方も、話して下さらないんですか」
 そのとき、ドン・ファンが吠《ほ》えた。
「どうしたの?」
 亜由美がドン・ファンの体をなでて、「床下が気になるみたいね」
 ドン・ファンがノコノコ入って行くと、すぐに何かをくわえて出て来た。
「何よ。——クモの巣くっつけて!」
 と、顔をしかめる。「これ……」
 ドン・ファンがくわえていたのは、ひどくくたびれてちぎれた布で、レースの飾りらしいものがついていた。
「——何?」
 と、聡子が覗いて、「ハンカチ?」
「ハンカチじゃないわ。——これ、きっとブラウスの襟の切れ端だわ」
「そういえばそうか」
 ——二人は顔を見合せた。
 ブラウスの切れ端がどうしてこんな床下に?
 亜由美はいやな予感がした。
「——どうかした?」
 と、そのみに訊《き》かれて、
「いえ、大したことじゃないんです」
 と、あわててその布を手の中に握りしめる。
「——大してお役に立てなくて」
 と、紀子は言った。
「そんなことありません。お父さんの書かれた原稿とか、蔵書とかはどうなったか、ご存知ありませんか?」
「たぶん……。はっきりは分りませんけど、町役場にあるんじゃないかしら」
「行ってみますわ。ありがとう」
 と、そのみは礼を言った。
 紀子は、道の方を気にしながら眺めていたが、
「私——この道を駆けて行ったんです」
 と、独り言のように言った。「父を追いかけて」
「お父さんと俊子さんを、でしょ?」
「いえ……。父は一人[#「一人」に傍点]でした」
 そのみは当惑して、
「でも——」
「そうなんです。今でもそれがふしぎで……。私、父が崖《がけ》から身を投げるのも見ていました。——今まで誰にも言ったことがないんですけど。見ていたんです」
「それじゃ、心中というのは——」
「父は一人で飛び込んだんです! 私は、七つでしたけど、よく憶《おぼ》えています。父は一人だったんです」
 思いもかけない紀子の話に、そのみも亜由美たちもしばし言葉がなかった。
 そのとき、ドン・ファンが吠えた。
 ガリガリと何かのこすれる音がして、屋根から瓦《かわら》が落ちて来た。
「危い!」
 と、亜由美はそのみを押しやるようにして建物から離れた。
 屋根の一部が腐っていたのだろう、家の中で、瓦が天井に落ち、その重みで天井がバラバラと落ちた。
「ひどい埃《ほこり》!」
 と、聡子が咳込《せきこ》む。
 ドドッと砂埃が舞い上って、家の中に煙のように広がる。
「危いわ。中へ入らない方が——」
 と、そのみが亜由美を止めた。
「入りたいわけじゃないんですけどね」
 と、亜由美は言った。「でも、気になることが——」
 ともかく埃が風に吹かれて散らされるのを待つしかなかった。
「——私、もう行かないと」
 と、紀子が言った。
「待って下さい!」
 と、亜由美が言った。「もう少し待って。もしかすると……」
「何のこと?」
 亜由美は、埃が消えると、足下に用心しながら、家の中へ入って行った。
 天井が無残に落ちて、上から柱や板がぶら下っている。
 しかし、亜由美の目は、床へ折り重なるように落ちている天井と瓦の方へ向いていた。
 その中から覗いているのは、どう見ても……。
「亜由美……」
 と、聡子が言った。
「聡子、旅館に戻って、殿永さんへ電話して」
 と、亜由美は言った。
「何て言えばいい?」
「行方不明の女の子の——死体らしいものを見付けましたって」
 ほとんど白骨化した手が、落ちた天井の下から覗いていた。
 覗いて、紀子が息をのむ。
「こんな廃屋にね。——でも、誰がこんなことを……」
 亜由美は抜けた天井と屋根から覗く青空を見上げた。ひどく場違いなほど、青空は鮮やかな色をしていた。
「——大変なことになるわね」
 と、そのみが言った。
「倉本さん、紀子さんと一緒に旅館へ戻っていて下さい」
 と、亜由美は言った。
 聡子は一足先に駆けて行っていた。
「でも……」
「私はこういうことに慣れてるんです。厄介ごとに巻き込まれたら困りますから。——ドン・ファン。あんた、お二人について行きな」
「ワン」
 矢田部江利も、何がどうなっているのか分らなくて、呆然《ぼうぜん》としている。
「私一人でここは大丈夫。——行って下さい」
 と、亜由美は言った。「じき、町中が大騒ぎになりますよ。紀子さんも、女将《おかみ》さんに叱《しか》られる心配なんかしなくていいでしょ、きっと」
 ドン・ファンが付添って(?)、そのみたちが急いで立ち去ると、亜由美は改めて庭へ出て、その古びた家を見上げた。
 そして——ふと視線を感じた。
 誰かがこっちを見ている。その視線には、亜由美をゾッとさせる何か[#「何か」に傍点]があるような気がした……。
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