日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

フルコース夫人の冒険14

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:14 カメラの前で「藤原!」 と、大声で呼ばれて、藤原はびっくりして飛び上がりそうになった。「社長! 何してるんです?」「
(单词翻译:双击或拖选)
 14 カメラの前で
 
「藤原!」
 と、大声で呼ばれて、藤原はびっくりして飛び上がりそうになった。
「社長! 何してるんです?」
「心配で来てみたんだ」
 と、社長の舟橋は、少し渋い顔で、「順調か?」
「ええ、二人とも今、仕度してます。落ちついたもんですよ」
「そうか。——ちょっと来い」
 ここは、赤坂にあるPホテル。
 今日は、中沢なつき、さやか母娘《おやこ》の共演第一作、『母娘坂』の制作発表記者会見である。
 藤原は、会場の用意ができているかどうか見に行こうとして、控室から、出て来たところだった。
 舟橋は、藤原を促して、ロビーの隅へと歩いて行った。
「ここなら大丈夫だな」
 と、舟橋は足を止めて、言った。
「どうかしたんですか」
「まずいことになったぞ」
「はあ? 企画に何かクレームでも?」
「いや、あの二人に関してじゃない。企画もいい。脚本も、急いで書かせたにしては、よくできている」
「じゃ、何です?」
「中沢なつきの亭主だ」
「中沢竜一郎さんですか? あの方が何か……」
「なつきとさやかをこの世界へ引っ張り込むのに、池原洋子の手を借りたろう」
「ええ、中沢竜重さんのアイデアで。それは効《き》きました」
「効き過ぎた」
 と、舟橋は言った。「目下、池原洋子と中沢竜一郎は、『親密な』交際中だ」
「まさか!」
 と、藤原が目を丸くする。
「本当だ。——幸い、今のところは、写真週刊誌も気付いとらん。しかし、もし、ばれたら、なつきもさやかも、映画どころじゃなくなるぞ」
「そ、そりゃそうですね」
「そうなる前に、何とかブレーキをかけるんだ」
 と、舟橋は言った。
「分りました。中沢さんに話してみましょう」
 と、藤原は肯《うなず》いた。「困ったもんですね。あの年齢《とし》で火遊びじゃ」
「あの年齢だから、火遊びするんだ」
 と、舟橋は、もっともなことを言って、「どうしても止まりそうもなかったら……」
「どうします?」
「その時はその時だ。やりようがある」
 舟橋は、ポンと藤原の肩を叩いて、「さし当り、あの亭主と話し合え。分ったな」
「分りました」
「池原洋子の方には、事務所を通して、注意しとく」
 舟橋は、ちょっと息をついて、「何としても、『母娘坂』は成功させるんだ。大スターが生まれるかどうか、これにかかってるんだからな」
 と、力強く言った。
 
「ワハハ」
 と、浜田宏実が笑った。
「笑うな」
 と、さやかは不機嫌である。
 ここは記者会見の出席者のための、控室だった。さやかは、いささか時代遅れのデザインのセーラー服姿。
 覗《のぞ》きに来た宏実が、それを見て、笑ってしまったのである。
「せめて、ドレスでも着たかった」
「いいじゃない。清純そうに見えるよ」
「じゃ、本当は何だってのよ」
 と、さやかは苦笑いした。
「あら宏実さん」
 と、母のなつきがやって来る。
「わあ、さやかのお母様、シック!」
 と、宏実が、落ちついたスーツ姿のなつきを見て、声を上げる。
「これじゃ、戦後間もなくの物語だわ」
 と、さやかは言った。「お母さん、挨《あい》拶《さつ》は考えた?」
「藤原さんが考えてくれるんじゃないの?」
「まさか。自分で考えてしゃべるのよ」
「あら、大変」
 と、なつきはのんびり言った。「でも、何とかなるわよ」
 なつきは、ソファの所へ行って、座り込んだ。
「——度胸だけはベテラン女優」
 と、さやかが、母親を見て、感心する。
「生まれつき、素質があったのかもね。さやかも」
「やめてよ。これ一本でおしまい。——ね、高林さんのこと、何か聞いた?」
「あれから、ずっと休んでるのよ。何だか、熱が下がんないとか、連絡が来てるんですって」
「熱が?」
「さやかに振られたショックじゃないの」
「やめてよ、子供じゃあるまいし」
「川野さんも、苛《いら》立《だ》ってるみたい。しばらくは近寄らない方がいいかもよ」
「そうね」
 さやかは、いささか気が重い。
 ま、熱を出そうとどうしようと、高林は自業自得としても、あの時、少《ヽ》し《ヽ》強く言い過ぎたかな、とも思っていたのだ。
 ——共演者、監督、プロデューサー、といった面々が控室へ入って来て、急にざわつき始める。
「じゃ、会場を覗《のぞ》くね」
 と、宏実が一《いつ》旦《たん》控室を出て行くと、入れかわりに、藤原が戻って来た。
「藤原さんがいないと心細いわ」
 と、なつきは言った。
「大丈夫ですよ」
 藤原は、そう言って、「あの——今日、ご主人は?」
「うちの主人? 来られないとか言ってたわ。仕事が忙しいんでしょ」
「そうですか」
「主人に何か?」
「いや、そうじゃないんです」
 藤原は、気がとがめていたのだ。
 自分が、なつきたちをこの世界へ連れて来た。そのせいで、もし、中沢竜一郎が本当に……。
 確かに、なつきは、出歩くことも多くなったし、夜遅く帰ることも、珍しくない。夫としては、色々、面白くないこともあるだろう。
 ——俺《おれ》の責任だ、と藤原は思った。
 何とかして、中沢家を、元の通りに戻してやらなければ。池原洋子との浮気が、誰にもばれないうちに、中沢竜一郎をいさめるのだ……。
「そろそろ時間ですので」
 と、声がかかる。
「じゃ、行きましょう」
 と、藤原は、なつきを促した。
 
 さやかは、母について会場へ入ってみて、仰天した。
 凄《すご》い人! 百人? いや、百人どころじゃない!
 TVカメラ用のライトが当り、ストロボが光る。
 カメラのシャッター音が、やかましいくらいだ。
 指定された席につくと、司会者が、挨《あい》拶《さつ》を始めた。
 わきに立っていた藤原は、長テーブルの前に下がった、名前を大きく書いた紙を見て、ギョッとした。
〈なつき〉と〈さやか〉の席が、入れ替っている。いや、紙の方を貼《は》るのが、間違えているのだ。
 あわてて駆けて行って、紙を貼りかえると、集まった記者たちから、笑いが起きた。
 しかし——間違えても、無理はない、と言えたかもしれない。
 母と娘であっても、この日、並んだ二人の初々しい輝きは、いずれ劣《おと》らぬものがあったからだ。
 なつきもさやかも、落ちついて、しっかりと挨拶を述べた。もちろん、二人とも、多少興奮していたのは確かである。
 カメラの、押し寄せるようなシャッター音を聞きながら、二人の頬《ほお》は紅潮して、その微笑は、すばらしく美しかった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%