日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

長い夜02

时间: 2018-06-29    进入日语论坛
核心提示:1 暗い穴「ねえねえ」 と、ルミは母親の腕を引っ張った。 何といっても、まだ五歳のルミの声は小さくて、お父さんとお母さん
(单词翻译:双击或拖选)
 2 死との約束
 
「やっぱり、こういう所は平日に来なきゃね!」
 と、白浜仁《ひと》美《み》は、軽くスキップして歩きながら言った。
「ちょっと! 仁美、そんなに先に行っちゃわないでよ」
 と、母親の千代子が声をかける。
「大丈夫! 迷子になるのはお母さんたちの方よ」
 と、仁美は言い返した。
「——あの子ったら」
 と、千代子は仕方なしに笑った。
「まあいいさ」
 白浜省一は、そう言って、まぶしいような晩秋の空を見上げた。
「気持のいい日ね」
 と、千代子は言った。
「ああ」
 白浜省一は肯《うなず》いて、「いい日を選んだ。そう思わないか」
「本当にね。そうだわ」
 白浜省一と千代子が二人で歩いていると、何だか人目を引きそうだった。——何しろ、ここは東京ディズニーランドである。
 仁美は、両親が一向に足を早めないのを見て、仕方なく戻って行った。
「——フリーの券を買っただろ。自由に乗ってろよ」
 と、白浜省一は言った。
「だって、いざ離れちゃったら、捜すの、面倒だもの」
 と、仁美は言った。「ね、そこで何か冷たい物、飲まない?」
「寒くないの?」
「喉《のど》がカラカラ!」
「じゃ行ってらっしゃい、お父さんと二人でその辺りにいるわ」
「うん」
 仁美は、カウンター式のドリンクコーナーへと走って行った。
 ——確かに、前に来た時は日曜日だったので、入場するまでに一時間かかり、中でも行列、また行列。
 三つぐらいのアトラクションを楽しんだだけで、疲れ切って帰って来たものだ。
「こんなに静かなのね、普通の日って」
 と、千代子が言った。
「うん」
 白浜省一は、ベンチを見て、「少し座ろうか。——疲れたろう」
「別に……」
 と、言いながら、千代子はベンチに腰をおろして、息をついた。
「ここに座ってりゃ、仁美が来ても、見えるさ」
 白浜省一は、周囲を見回して、「こんな所に背広なんかで来るんじゃなかった」
 確かに、背広にネクタイという格好の人はほとんど見当らない。
 東南アジアの観光客らしいグループが、にぎやかに通り過ぎて行く。
「——子供はどこの国も同じね」
 と、千代子は微《ほほ》笑《え》んで言った。
「そうだな」
 白浜省一は、少し潮の匂《にお》いを含んだ風を、大きく吸い込んだ。
 ——白浜省一と千代子の夫婦は、誰からも若く見られる。
 実際には、白浜省一が四十五歳、千代子が四十一歳で、娘——一人っ子——の仁美が十五歳という、まあ標準的な年代なのだが、夫婦そろって童顔というか、坊ちゃんとお嬢さんという雰囲気が抜け切れない。
 二人とも三十代の後半ぐらい、と見られることが多かった。
 特に千代子は少し病弱で、あまり外へ出ない生活をしていたから、余計に色白で、お嬢さんらしさが残っているのかもしれなかった。
「今、何時だ?」
「——二時少し過ぎよ」
「四時ごろには出よう」
「空《す》いてるから、充分でしょう」
「そうだな」
 と、白浜は肯いた……。
 ——一方、仁美はオレンジエードを飲みながら小さなテーブルで、園内の図面を広げて、
「ええと、この前はこれに乗らなかったんだよね」
 と、確かめていた。「じゃ——こっちから回った方が便利か……」
 ガヤガヤと、女の子のグループがやって来た。揃《そろ》って紺のブレザー。
 同じ中学三年ぐらいかな、と思って見ていると、
「——仁美じゃない!」
 と、メガネをかけた丸顔の一人が、目を丸くしてやって来た。
「あ、恵子か!」
 小学校の時の親友だったのだ。「びっくりした!」
 中学三年ともなれば、大分変っていて当り前だが、
「ちっとも変わんないね、仁美」
「そっちこそ」
 と、仁美は笑って、「少しやせたって手紙よこしたじゃない」
「やせたのよ! 五百グラムも!」
 と、恵子は強調した。「仁美、今日は何なの?」
「うん……。恵子は?」
「テストの次の日で休み。仁美も?」
「そうじゃないの。ちょっと用事でね」
 と、仁美は曖《あい》昧《まい》に言った。「みんな学校の友だち?」
「そう。仁美、一人なの?」
「両親同伴」
「そう。元気、おばさん? 体の具合、どうなの?」
「まあまあね。こうやって出かけて来るぐらいだから」
「そうか。——よろしく言ってね」
 並んで買っていた他の子が、
「恵子! 何にするの?」
 と、呼びかける。
 仁美は、
「行って。またその内——」
「うん。今度会おうね」
 恵子が駆けていく。
 中学の受験で別々になり、恵子の家が引っ越したこともあって、このところほとんど会っていない。
 恵子たちは、飲物を買うと、早々に外へ出ることにしたらしい。仁美は、恵子がちょっと手を振って行くのを見て、ニッコリ笑って応《こた》えた。
 またその内。——今度。
 でも、もうそんなことは起《ヽ》こ《ヽ》ら《ヽ》な《ヽ》い《ヽ》のだ……。
 仁美は飲み終えて、外へ出た。遠くに、恵子たちの姿が見えなくなるところだ。
 そして、仁美は歩き出したが……。
 ふと、誰かに見られていると思った。どうしてそう思ったのか、よく分らなかったが、何となく、視線を感じたのだ。
 振り向いた仁美は、サングラスをかけた男と、目が合った。いや——サングラスだから、相手の目は見えないのだが、その男が仁美を見ていたのは確かだった。
 そして、仁美が振り向いても、その男は目をそらそうともせず、じっと立ち止って、仁美を眺めていたのだ。
 薄いコートをはおったその男は、もう大分髪が白くなっていて、見たところでは六十歳ぐらいとも思えた。もっとも、仁美は男の人の年齢などよく分らない。
 ちょっと気味が悪かったが、仁美は、そのまま両親を捜して歩きだした。
「仁美」
 母が、ベンチで手を振っている。
「——ね、小学校の時一緒だった、恵子に会っちゃった」
「まあ、恵子ちゃん? あのメガネかけた丸顔の——」
「そう。今でもだよ」
「へえ」
「友だちと五、六人で来てた」
「お話ししたの?」
「少しね」
「そう。——良かったわね。どこへ行くの、今度は?」
「うん……」
 仁美は振り向いた。——あのサングラスの男は、もう見えなかった。
 
「——おいしかった」
 仁美は、ナイフとフォークを置いた。
「もういいの?」
「お腹《なか》一杯だよ」
 と、仁美は言った。「でも、デザート、食べよう」
「そうしましょ。あなたは?」
「うん。——そうだな。何か食べるか」
 ホテルの中の、静かなレストラン。
 白浜の家族がよく利用するので、レストランの方でも、すっかり顔を憶《おぼ》えてくれている。
「今日のお肉は良かったよ」
 と、仁美が一人前のことを言った。
「そうか。この前はちょっとな。ま、良かった」
 ウエイターがすぐにやって来て、デザートのメニューを配る。
「私、このクレープ」
「十分ほどお時間をいただきますが」
「構いません」
 と、千代子が言った。
 ——急ぐことはないのだ。
「ちょっと——」
 仁美は、席を立った。
 化粧室へ入って、手を洗う。そして、ふと顔を上げると、鏡に、いつもと変わらない自分の顔が映っていた。
 ここへ来るのも、これで最後か。——仁美には、しかし、少しも実感がなかった。
 そんなものかもしれない。
 死ぬと決めても、人間、その場にならないと、怖いとも思わないものなのかもしれない……。
 ——白浜省一と千代子、そして仁美の三人は、このホテルに部屋を取っている。今夜、三人で薬をのんで死ぬつもりである。
 学校も休んで、今日一日、最後の家族の団らんを楽しんだのだった。
 化粧室を出た仁美は、すれ違った男の方を、ハッとして振り向いた。
 今の人は……。サングラスをかけていたみたいだけど……。
 もちろん、サングラスをかけた男が一人しかいないというわけではない。でも——偶然だろうか?
 席へ戻ると、コーヒーと紅茶が来ていた。
「仁美、ミルクティーでいいのね」
 と、千代子が言った。
「うん」
 と、仁美は肯《うなず》いた。「いつもの通りね」
「そう。いつもの通りに、ね」
 千代子は、夫の方を見て、「あなた、ここの支払いはどうするの?」
「そうだな……。現金で払っておくか」
「迷惑はかけたくないわ」
「そうだな」
 と、白浜は肯いた。「現金にしよう」
 デザートが来て、仁美はきれいに平らげてしまった。
 食事が喉《のど》を通らないのでは、と思っていたのだが、そんな心配は不要だったようだ。
「そろそろ部屋へ行くか」
 と、白浜が言った。
 九時半だった。
 
 広いツインルームに、エキストラベッドを入れてもらって、部屋は快適そのものだった。
「——さあ」
 と、千代子はカーテンを閉めた。「ちゃんとお風呂へ入って、きれいになってからね。あなた、先に入って」
「そうするか」
 仁美は、父が上《うわ》衣《ぎ》とネクタイをハンガーへかけて、バスルームへ入って行くのを、ベッドに引っくり返って、見ていた。
「——仁美」
 と、千代子が言った。
「なに?」
「お手紙とか、書く?」
「別に。——でも遺書は、置いといた方がいいよ。見付けた人が、迷わなくてすむし」
「そうね」
 と、千代子は微《ほほ》笑《え》んだ。「何だか眠くなったわ」
「後で、ゆっくり眠れる」
「本当にね。——ここ何日も、ろくに眠れなかったのに……」
 千代子は、ソファに腰をおろした。
 バスルームから、お湯の入る音が聞こえて来る。
 仁美は、起き上がると、
「お母さん」
「え?」
「どこかへ行ってようか」
「どこへ?」
「下の喫茶とか。お父さんと、最後に二人きりになりたいでしょ」
 千代子は、少し頬《ほお》を染めた。
「そう……。いいの?」
「うん。下でジュースでも飲んで来るから」
 仁美は靴をはくと、「一時間? 二時間?」
「一時間で充分よ」
 と、千代子は言った。
「じゃ——一時間半。ごゆっくり」
 仁美は、部屋を出た。
 エレベーターでロビーへ下りると、コーヒーラウンジへ入る。
 お腹はもう満腹。奥の席について、コーヒーを頼んだ。
 本でも持って来りゃ良かった、と思いながら、表の車の流れを見ていると、
「失礼」
 と、声がした。「いいかな?」
 振り向いた時には、そのサングラスの男は、もう向い合った席に座っていた。
「あの……」
「私もコーヒーを」
 と、ウエイトレスに言って、「——びっくりさせてすまないね」
 近くで見ると、老人というには若々しい。
 六十歳ぐらいかな、と思った。しかし、少しも老人くささは感じられない。
「あの——ディズニーランドでも」
「そう。さっき、ここのレストランでも会ったね」
 口調は穏やかで、自然だった。
「何かご用ですか」
 と、仁美は訊いた。
「間違ってたら、申し訳ないが」
 と、その男は言った。「君たち一家が、一家心中しようとしているんじゃないかと思ったんでね」
 仁美は、凍りついたように、動かなかった。
 二人の前にコーヒーカップが置かれ、熱いコーヒーが注がれる。
「ごゆっくりどうぞ」
 ウエイトレスの声が、仁美の耳を素通りして行く。
「——やっぱり当ったかな」
 と、男は言った。「誤解しないでくれよ。私は、心中を止めようとしているんじゃない。君らなりの考えがあってのことだろう。しかし、できたら、その事情を話してみてもらえないかね」
 仁美は、ゆっくりとコーヒーにミルクと砂糖を入れた。
 スプーンでかき回しながら、
「父は、祖父から会社を受け継いだんです」
 と、言った。「創業者はその父親で、父は三代目の経営者でした。ところが——」
 一口、コーヒーを飲んで、
「実質的に会社を動かしていた専務が、こっそり株を買い占めたり、得意先を味方につけておいて、突然独立してしまったんです。——父はあわてました。坊ちゃん育ちで、人を疑ったことのない人です。会社は仕事が三分の一ぐらいまで減って、材料の支払いができなくなりました。そこへ古い知人が、儲《もう》け話がある、と持ちかけて来て——」
「大損か」
「ええ」
 と、仁美は肯いた。「その人も、専務に頼まれていたんだと後で分りました」
「ひどい話だね」
「何億円もの借金をかかえて……。家も全部抵当に入っていました。父は、残った現金を、社員へ分けて、退職させ、私と母に、家も何もかも失うことになった、と話してくれました」
「なるほど」
「それでも、まだ借金は残っています。取り立てに追われ、住む家もなくて逃げ回るなんて、とても……。母は体が弱いので、無理がききません。それで話し合って、こうすることに決めたんです」
「しかし……君はまだ若い」
 仁美は首を振って、
「父と母を死なせて、一人で生きてるなんて、いやです。——父も母も、人はいいんですけど、逞《たくま》しさなんてない人だし、惨《みじ》めな暮しをするぐらいなら、死んだ方が、という方ですから」
「なるほどね」
 と、男は、ゆっくりとコーヒーを飲みながら、「気の毒な話だ」
「でも、薬をのんで眠っちゃうだけですから。——大して苦しくないと思うし」
 男は、少し間を置いてから、
「どうかね」
 と、言った。「君らに頼みがある」
「え?」
 仁美は面食らった。「あの世の誰かへ伝言でもあるんですか」
 男は、愉快そうに笑った。
「いや、面白い子だね、君は」
「そうですか」
「実は、ちょっと危険を伴う仕事があるんだ。これをもし引き受けてくれたら、君の家の借金はすべて私が肩代りしよう」
 仁美は呆《あつ》気《け》に取られて、その男を見ていた……。
 
「——もう一時間半たつわ」
 千代子は、ベッドから出ると、「仁美が戻って来るわよ」
「もう?——時間がたつのが早かったな」
 白浜は息を弾ませて、「いや、最高だった!」
「早くして」
 と、千代子は急いで下着をつけると、バスルームのバスローブをはおった。「あの子が気をきかしてくれたのよ」
「いい子を持って幸せだ。いや、幸せだった、と言うべきかな」
 部屋のチャイムが鳴った。
「ほら、早く!」
「おっと」
 白浜はあわててベッドから飛び出した。「バスルームでシャワーを浴びてる」
「ええ」
 千代子は、ドアを開けて、「お帰り……。あら」
「お客様よ」
 と、仁美は言った。
「まあ、あの……。すみません、ちょっとお待ちを」
 と、千代子は赤くなって、言った……。
 ——十五分後、サングラスを外したその紳士は、仁美に言った言葉をくり返していた。
「分りませんね」
 と、白浜は言った。「どうして私たちにそんな……」
「これは家族でしかやれない仕事です」
 と、その男は言った。「本《ヽ》物《ヽ》の《ヽ》家族しか。しかも、危険がある」
「どんな危険です?」
「命にかかわる、と言っておきましょう」
 と、男は言った。「引き受けて下されば、もっと詳しいことをお話しします」
「はあ……」
 白浜と千代子は、顔を見合わせた。
「お疑いでしょうか」
 と、その男は言った。
「いや……。しかし、負債は五億円以上ですよ」
「ご心配なく」
 と、男は言った。「取りあえず、ここに現金で三百万あります」
 一万円札の束が三つ、置かれた。
「これで、あなた方三人、その家へ移り住むために必要な支度をして下さい。その上で——」
「待ってください」
 と、仁美は言った。「その危険っていうのは……。殺されるとか、そんなことなんですか?」
「私にも分りません」
 と、男は首を振った。「——あなた方は、これから死のうとしている。それは楽な死でしょう。この頼みを聞けば、恐ろしい目にあったり、殺されかかったりするかもしれない。それは事実です。しかし——もし、無事にこの仕事をやりとげて下されば、あなた方には自由が待っている」
「自由……」
 と、千代子が呟《つぶや》いた。
「借金も何もない、三人の生活が、です。どうです?」
 ——しばらく、誰も口をきかなかった。
 仁美が、その三つの札束の一つを手に取った。
「私、今度はベッドにしよう。ずっと布団だったんだもの」
「仁美——」
「どうせ死ぬのよ。——やってみようよ。少し痛い思いしても、一人でも生き残れば……。ね、お母さん」
「あなた……。どうする?」
 白浜は、ギュッと手を握り合せた。
「お父さんはいいの」
 と、仁美が言った。「私とお母さんが言えばついて来る。——ね、お父さん」
 白浜は、二人の顔を見て苦笑した。
 そして言った。
「俺《おれ》には、何を買ってくれるんだ?」
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%