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長い夜19

时间: 2018-06-29    点击:216进入日语论坛
核心提示:19 穏やかな死 見当はついていた。 運が良かったのだ。三神がたまたまよく寄るガソリンスタンドの男が、ちょうどそれらしいオ
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 19 穏やかな死
 
 見当はついていた。
 運が良かったのだ。——三神がたまたまよく寄るガソリンスタンドの男が、ちょうどそれらしいオートバイが十何台か駆け抜けて行くのを、見ていたのである。
「そうだ。一台は後ろに女をのっけていたよ」
 と、言ったので、まず間違いはないだろうと三神は思った。
 あの連中だ。女は小西宏子に違いない。
 オートバイが向かっていた方向から、三神は行先の見当がついた。大きな公園がある。
 人にあまり見られたくないことをやろうとすれば、あの公園の裏手だろう。
 三神はベンツを、スピード違反など構わずにぶっ飛ばした。大型車だけにスピードを上げても安定感がある。
 あの女——小西宏子は、まだ無事でいるだろうか?
 三神は決心していた。必要とあらば、この車で、オートバイをけちらしてやる。
 ——公園が近付いたので、少しスピードを落とした。それでなかったら、殺していただろう。
 突然、道へ飛び出して来た男を見て、反射的にブレーキを叩《たた》きつけるように踏む。体が歪《ゆが》むような圧迫感があって、それでも車はスピンもせずに停った。その直前、ガクン、と衝撃が来た。
 はねたな! 男が路面に転がるのがチラッと目に入った。
 車を出て駆け寄ると、あの暴走族の連中の一人だ。まだひどく若い。
「おい。——大丈夫か?」
「足が……。足が……」
 と、男は呻《うめ》いた。
 真青になって、汗がふき出している。
「折れてるかな。足が折れたって死にゃしねえさ」
 と、三神は言った。「俺《おれ》が分るか」
「ああ……」
「女を連れてったな?」
 男は、身震いした。
「どうしたんだ?」
 と、三神は言った。「——おい! しっかりしろ!」
「あの女が……女が……」
 と、途切れ途切れに言って、男は泣き出してしまった。
「おい! 折れた足をけとばしてやろうか?」
「やめてくれ!」
 と、金切り声を上げる。
「じゃ、言え。どこにいる?」
「公園の—— 中だよ」
「他の連中は?」
「死んだよ」
「何だと?」
「どんどん死んでくんだ。あの女——化物だよ!」
 三神の顔から血の気がひいた。嘘《うそ》をついているとは思えない。
「兄貴たちも殺された……。俺、逃げて来たんだよ、必死で」
 と、声が震える。「腹が裂けてたり……首がなかったり……」
 あの女が? そんなことをやったのか?
「公園の中だな」
「ああ」
 三神が車へ駆け戻る。
「——俺を放っとかないでくれよ!」
 と、泣き声で訴える。
「待ってろ。後で拾ってやる」
 三神はそう言って、ベンツへ乗り込んだ。
 公園までは、数百メートルだ。——入口の辺りに停めて、三神は車を降りた。
 公園からは、オートバイの音らしいものは聞こえて来なかった。静かなものだ。
 三神は入口の幅の広い階段を駆け上った。
 階段状の池があって、水が落ちている。水は濁っていた。
 池の中央に、暴走族の一人が浮いていた。首の周囲が鋭くえぐられて、溢《あふ》れ出た血が、池の水を染めているのだ。
 公園の中へ入って行くと、ガソリンの匂《にお》いや、漂う煙の匂いに気付く。
 木立ちの間の焼けこげた死体。——木のない枝に、まるで釘《くぎ》で打ちつけたようにぶら下がっている死体。
 中央の池まで出ると、首のなくなった死体が、転がっている。
 三神も、膝《ひざ》が震えた。何があったんだ? 一体何が……。
 足音がして、ハッと振り向くと、リーダーの男が、よろけるような足取りでやって来るのが見えた。
「お前か……」
 三神を認めたらしく、唇を引きつらせて笑った。「やったぞ。——あの化物を……やっつけた」
 手にしたナイフは、血を浴びて、手首まで濡《ぬ》れていた。
 しかし——胸から腹にかけて、ジャンパーは引き裂かれて、血がふき出すように流れ落ちている。歩いているのが不思議だった。
「畜生……」
 と、リーダーの男が呟《つぶや》くように、「死なねえぞ、俺は——」
 そのまま、バタッと倒れる。
 呆《ぼう》然《ぜん》としていた三神は、急いで、その男がやって来た方向へと駆けて行った。オートバイが倒れて、タイヤはフルスピードで回転していた。
 女は——道の中央に、倒れていた。
「——宏子!」
 三神は駆け寄った。
 ナイフで切り裂かれた傷が、胸から喉《のど》もとへ、口をあいて、血潮が三神の男もののシャツを染めている。
 もう、息はなかった。——三神は、そっと宏子の体を抱き起こした。がっくりとのけぞるように落ちた宏子の顔を、青白い月明りが照らし出す。
 ——この女が「何もの」だったのか、三神には分らない。この凄《せい》惨《さん》な有様を見れば、何かとんでもないことが起こったのだということは、疑いもなかった。
 しかし、この凄《すさ》まじいほどの月光の下で、今は眠りについた宏子の顔は、ごく当り前の——いや、穏やかな美しさをたたえた、一人の女のそれに過ぎなかった。
 三神は、宏子の体を抱えて、立ち上がった。おそらく、やがて警察も駆けつけて来るだろう。
 宏子を、好奇の目にさらしたくはなかった。何があったのか、誰にも分るまい。
 あの若いやつが一人で何を言っても、誰も信じないだろうし、おそらくしゃべりたくもないだろう。
 宏子を、ベンツの中へ運び込んで、三神は、深々と息をついた。
 俺が用心していれば……。いや、病院へ早く返していれば、と思わないではなかったが、しかし、これで良かったのだ、という思いの方が、なぜか強かった。
 宏子は、自分でこの道を選んだのだ。今の宏子の顔に見られる穏やかさは、満足感そのもののように、三神には思えた。
 ——車を少し公園から離して停めてから、三神は小西へ電話をかけた。
 
 小西がやって来るのに三十分ほどかかった。
 その間、何台かパトカーがサイレンを鳴らして通り、救急車も通り過ぎた。もちろん、誰も助かるまい。
 タクシーの明りが見えて、三神はベンツのライトを二、三度点滅させた。
 小西が、タクシーを降りてやって来る。三神は外へ出て、待った。
「——宏子は?」
「後ろの席に」
 と、三神は言った。「殴られても、殺されても構いません」
「馬鹿を言うな」
 小西はドアを開けて、中へ入った。宏子の手を取ると、両手でそっとさするようにして、
「これで良かったのかもしれん……」
 と、呟《つぶや》いた。
「申し訳ありません」
 と、三神は頭を下げた。
「家へ帰ろう」
「はい」
「話はそれからだ」
 小西は、娘の体をしっかりと抱き寄せて言った。
 ベンツが走り出すと、三神が、
「一人、生き残ったのがいますが」
 と、言った。
「どこにいる?」
「足を折って、たぶんこの少し先に……。まだいると思います。若いチンピラです」
「そうか」
「どうしますか」
 小西は少し間を置いてから、
「殺してやりたいな」
 と、普通の口調で言った。
「やりましょうか」
 と、三神は言った。
「本気か?」
「もちろんです」
 少し間があって、小西は首を振った。
「いや……。話が聞きたい。拾ってやれ。病院へ連れて行こう」
「はい」
 と、三神は肯《うなず》いた……。
 道端で、ほとんど失神状態だった、あの若い男を拾って助手席へ乗せると、近くの救急病院へ運ぶ。——その途中、小西は宏子が暴走族を相手に、人間とは思えない戦いぶりを見せた様子を、聞いた。
「——分った」
 と、話がすむと、小西は肯いて、「病院でおろしてやる。入院したら費用も持ってやる。その代り、今夜見たことを、一生口に出すな。分ったか?」
「頼まれたって、しゃべりません……」
 と、男は泣き出しそうな声を出した。
「よし。もう、暴走族なんかに入るんじゃないぞ」
「オートバイなんて、見るのもいやですよ」
 どうやら本音らしかった。
 ——病院へ寄ってから、ベンツは小西の自宅へと向かった。
 もう夜の道は空《す》いていて、車はひたすら走り続けた。言葉を交わす必要がないのは、三神にとっても小西にとっても、いいことだったかもしれない。
 小西の家に着くと、二人で宏子の体を寝室へ運んで、白いシーツで覆った。小西はしばらくその遺体の前で、身じろぎもしなかったが、やがて三神の方を振り向いた。
「車のガソリンは充分か」
「はい」
「急いで行ってもらいたい所がある。急を要するのだ。信号も無視しろ。パトカーも振り切れ。できるか」
「はい」
「よし、出かけよう」
 小西の声には、再び力が——生命力が漲《みなぎ》って来ていた。三神は体が芯《しん》から熱して来るのを感じた。
 絶望も、悲しみも、この男を叩《たた》きのめすことはできないのだ。——何という怪物だ、この小西という男は!
 小西はベンツの後部座席に座ると、
「事故を起こしたら心中だな」
 と、言った。
「悔やみません」
 三神はぐいとアクセルを踏んだ。深夜の町を、ベンツは巨大な弾丸のように、疾駆して行く。
 
「——電話だ」
 白浜は布団に起き上がった。
「本当。こんな夜中に……。誰かしら?」
 千代子も起き上がって、「出るわ」
 と、急いで布団から出て行った。
 白浜も後からついて行く。千代子は受話器を取った。
「白浜さんかな? 小西です」
 と、小西晃介の、よく通る声がした。
「まあ、小西さん。白浜の家内です。何か——」
「今、そちらへ向かう車の中からかけてます。無事ですか、そっちは?」
「はあ……。何か事件が?」
「娘さんは?」
「仁美ですか?——あなた、仁美を見て来て!」
 白浜は飛んで行ったが、すぐに戻って来ると、
「いないぞ、出かけたらしい!」
 と、青ざめた顔で言った。
「出かけたって……。どこへ?」
「奥さん。聞いて下さい。急いで娘さんを捜すのです」
「小西さん、娘に何が——」
「満月の夜です。お宅の娘さんは何かを探りに出たのかもしれない。いいですな、武器になるものを持って、捜すんです! こっちもあと一時間ほどでそっちへ着くはずです」
「はい!」
 ——電話を切って、白浜と千代子は顔を見合わせたが、
「ともかく、仁美を見付けるんだ!」
 と、白浜があわてて寝室へ駆け戻り、服を着る。
「あなた、武彦君を呼びましょう。病院にいるわ」
「うん、そうだ、駆けつけてくれと言うんだ。——武器か。包丁でも持つか」
 白浜が台所の包丁を布でくるんで持って来る。その間に千代子は病院へ電話をして、武彦を呼び出した。
「——え? いない?」
 千代子は目を丸くした。「あなた。武彦君が病院にいないんですって!」
「おばさん」
 ヌッと、当の武彦が顔を出したので、
「キャッ!」
 と、千代子は飛び上がってしまった。
「すみません!——玄関があいてたんで」
「あの……仁美は?」
「いないんですか?——あいつ! 勝手に何かやらかしてるんだ」
「ともかく、外へ出てみよう」
 と、白浜が言った。
 白浜と千代子、そして武彦の三人は、表の通りへ出た。
「凄《すご》い満月だ……」
 白浜は、夜空を白く染め上げんばかりに輝きわたる月を見上げて、ゾッとしたように言った。
「何かにかまれて入院してた女が、猛烈に暴れて、押えて鎮静剤を射ったら、死んでしまったんです」
 と、武彦が言った。「ともかく、この月はまともじゃない。心配になって、やって来たんです」
「そうか。しかし、どこへ行けば?」
「小さな女の子に手をかまれた場所の方へ。たぶん、あの辺りにいるんですよ」
「いるって……何が?」
 と、千代子が訊《き》く。
「ともかく、行こう。仁美が心配だ」
 武彦を先頭に、三人が町の外れ辺りまでやって来た時だった。
 茂みがガサッと揺れて、男の子が飛び出して来た。そして、三人を見るとハッとして、
「——あの先《ヽ》生《ヽ》の?」
 と、息を弾ませる。
「仁美が家庭教師をしてる子ね、あなた」
「大変だよ!」
 と、男の子は叫ぶように言った。「殺されちゃうよ、先生!」
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