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虹に向かって走れ09

时间: 2018-07-31    进入日语论坛
核心提示:9 ダーツの少女「いよいよ佳《か》境《きよう》だね」 と、剣《けん》崎《ざき》が、啓《けい》子《こ》のいれたコーヒーを飲
(单词翻译:双击或拖选)
 9 ダーツの少女
 
「いよいよ佳《か》境《きよう》だね」
 と、剣《けん》崎《ざき》が、啓《けい》子《こ》のいれたコーヒーを飲みながら言った。
「何を呑《のん》気《き》なこと言ってんのよ」
 と、啓子は顔をしかめた。
「だって、そうじゃないか。いよいよロケだぞ」
 剣崎は、ウーンと伸《の》びをした。「ま、スケジュールはきついけど、ロケってのは緊張感があっていいね。——天候待ちとか、むだな時間があるけど、何が起るか分らないってスリルがあるじゃないか」
「そりゃね、いつ雨が降るか、ぐらいのスリルならいいわよ。だけど、いつ殺されるか、なんてスリルじゃありがたくもない」
 ——聡《さと》子《こ》たちのマンションである。
 明日からはロケに入る。今日の夕方、飛行機で九州へ飛ぶのだ。
「仕度は済《す》んでるの?」
 と、剣崎が訊《き》いた。
「聡子ちゃんは大丈夫。それより、あなた忘れ物ない?」
「俺《おれ》か? 大丈夫! 今度の仕事は意気込みが違う」
「怪《あや》しいもんね」
 いつかはシナリオを忘れて来たこともある。——以来、啓子は必ず何部か余分に取っておく。
「そろそろ出かけなくていいのかい?」
 と、剣崎が時計を見て言った。
「うん。車が来ることになってるのよ。今《いま》川《がわ》さんと一緒」
「今川公《きみ》子《こ》女史?」
 剣崎がびっくりした様子で、「どうして彼女が?」
「だって、〈殺意のプリズム〉のライターじゃないの」
「そりゃ分ってるけど……。ロケにまでついて来るのかい?」
「峰《みね》川《かわ》さんの希望よ。現場で手直しする時に立ち合ってほしいって」
「へえ」
 剣崎は首を振って、「驚《おどろ》いたね。巨匠、本気だな」
「賭《か》けてるわよ、この映画に。もう二度とやれないだろうって」
「少しリラックスした方がいいと思うけどなあ」
「あんたがその分、リラックスしてるじゃない」
「ひどいなあ」
 と、剣崎が顔をしかめる。
「あ、今川さんかな」
 玄関のチャイムが鳴ったので、啓子は、急いで立って出て行った。
「——お待たせ」
 と、今川公子がの《ヽ》っ《ヽ》そ《ヽ》り《ヽ》という感じで入って来る。
「まだ時間ありますよ。荷物は?」
「車の中。待たせてあるわ」
「じゃコーヒーでも一《いつ》杯《ぱい》いかが?」
「いただくわ。ありがたい」
 今川公子は、居間へ入って来ると、剣崎をチラッと見て、「どうも」
 とだけ言った。
「——寝不足?」
 と、啓子がコーヒーを注《つ》いでやると、
「まあ……ね」
 今川公子は欠伸《あくび》しながら、「峰川のオヤジさんには参《まい》っちゃう。『ここ、もうちょっとどうにかならない?』って毎晩電話がかかって来るんだもの」
「どのシーン?」
「あちこちよ」
 と、今川公子は肩をすくめた。「それも、『こう直して』じゃないの。ただ、『どうにかしてくれ』だもんね。私は峰川さんじゃないんだからね、って言ってやった」
 啓子は、ちょっと笑った。
 峰川の気持はよく分る。欲が出るのだ。もっと良くなる、もっと良くなる、と……。
「でも、この暑い時期に九州へ行かなくたってね」
 と、今川公子は顔をしかめた。「地《じ》獄《ごく》だよ、真夏の雲《うん》仙《ぜん》なんて!」
「何とか地獄ってのがあるじゃないか」
 と、剣崎が言った。「いつか見て回って、がっかりしたけど」
「聡子ちゃんは?」
 と、今川公子が訊《き》いた。
「もう仕度できてると思うけど。——弟もいるから」
「利《り》口《こう》な子ね。役者にしとくにゃ惜《お》しいや。シナリオ書かせたい」
「うちの社長が聞いたら目を回すわ」
 と、啓子が笑った。「呼んで来ましょ」
「僕が行くよ」
 剣崎は、珍《めずら》しくパッと立って、聡子の部屋の方へ歩いて行ったが……。
 ドアの前に立って、ちょっと面《めん》食《く》らった。
「——おい、ケイ」
「どうしたの?」
「何だ、これ?」
 ドアに貼《は》り紙《がみ》がしてあって、〈いきなり開けるな! 命は保証せず〉と、サインペンで大書してある。花やマンガの顔でふち取りがしてあった。
「ああ、聡子ちゃんね、ダーツをやってるのよ」
「ダーツ? ああ、あの、羽のついたのを投げる……」
「そう。ドアの内側に標《ひよう》的《てき》がかけてあるから、いきなり開けると、ダーツが飛んで来て刺《さ》さることもある、ってわけ」
「怖《こわ》いね」
 と、剣崎は首をすぼめた。
 ちょうどドアにズシン、と何かが当る音がした。
「やってるようね」
 啓子は、ドアをノックして、「聡子ちゃん、入るわよ」
「どうぞ」
 と、返事がある。
 ドアを開けて、啓子は、
「そろそろ出かけるわよ」
 と、声をかけた。
「はい、いつでも」
 聡子は、軽快に立ち上って、やって来た。
「当ったかい?」
 剣崎が部屋へ入って来て、ドアの裏側を見ると、目を丸くした。「——おい、聡子ちゃん、これ……」
 かけてあるのは、確かにダーツの標的だが、そのど真《まん》中《なか》に突き刺さっているのは、小さな、しかし、どう見ても切っ先鋭いナイフ……。
「ああ、これ?——護身用」
 と、聡子はナイフを抜くと、手の中で軽く弄《もてあそ》んでいる。
「危いよ! けがするぜ」
「私、小学生のころから、ナイフ投げの練習してたの。いい腕なのよ」
 聡子は、ヒョイと振り向いた。同時にその手からナイフが飛んだと思うと、壁のカレンダーに突き立った。
「八月一日。今日の所に刺さってるでしょ?」
 剣崎は、歩いて行って、
「本当だ!」
 と、目をみはった。「こいつは凄《すご》い!」
「毎日練習してんだもの」
「聡子ちゃん」
 と、啓子も呆《あき》れて、「一体何を考えてんの?」
「犯人と対決することがあったら、こっちも何か武器がないと。シナリオみたいに、うまく誰《だれ》かが助けに来てくれるとは限らないでしょ」
「物《ぶつ》騒《そう》ねえ……」
 啓子としても、聡子の気持は分る。しかし、逆に聡子が殺されることだって、あるかもしれないのだ……。
「いいじゃないの、好きにさせてやりなさいよ」
 と、声がした。
 振り向くと今川公子が立っている。
「今川さん。じゃ、あなたも——」
「聡子ちゃんから聞いたわよ。そんな奴《やつ》、許せないものね。力になるわよ」
 剣崎は、ナイフを壁から抜くと、戻って来て聡子に渡した。
「頼むから、僕を的《まと》にして練習しないでくれよな」
 と、半ば本気である。
「信用してよ」
 と、聡子は笑った。「じゃ、出かけましょうか。——恵《けい》一《いち》! 仕《し》度《たく》、できたの?」
 聡子は自分のバッグを手に取ると、大声で言った。
「さあ、出発、出発!」
 啓子がパンパン、と手を叩《たた》く。
 五分とたたない内に、マンションから全員出て行った。
 
 夏休みである。——世間一般では、の話だが。
 羽田空港は、旅行客でごった返していた。大体、ただでさえ狭いところへ夏の帰省や家族旅行の客、団体のツアー。そこへ今や天下のアイドルとなった永《なが》谷《たに》聡子が現われたら、どんな騒ぎになるか、想像がつこうというものだ。
 スタッフや何人かのキャストは、一つ前の便で発《た》つことになっていた。
 啓子たちは、一《いつ》旦《たん》近くのホテルに入って、ぎりぎりの時間まで待ってから、入ろうということになっている。空港内での混乱を避けるためである。
「暑いわね、本当に」
 と、今川公子が、ホテルのラウンジで、落ちてくる汗を拭《ぬぐ》った。
「暑さには弱いんですか」
 と、聡子が訊く。
「シナリオ・ライターなんて、机《つくえ》の前に座《すわ》りっきりの仕事だからね。外へ出るのは苦《にが》手《て》よ」  
「その点、役者は大変さ」
 と、剣崎が言った。「この暑さの中で、オーバーを着て、寒い寒い、って震《ふる》えてなきゃいけない」
「今度は大丈夫よ。そんな無茶をやるシーンはないわ」
 と、公子が言った。「聡子ちゃんは、危いシーンもあるけどね」
「私なら大丈夫です。暑い時は暑い方がいいの。変に涼しいと却《かえ》ってつまらない」
「十代の内よ、そう言ってられるのは」
 と、啓子が笑った。「あら、監督だ」
 峰川がバッグを下げてやって来る。
「やあ、ここじゃないかと思ったんだ」
「どうしたんですか、監督。前の便じゃなかったの?」
 と、公子が呆《あき》れたように、「二日酔でしょう」
「アルコールは絶ってるよ」
 と、峰川は笑って、「連《ヽ》れ《ヽ》ができたんで、君らと一緒の便にしたんだ」
「連れ?」
 啓子は、面食らって、「誰ですか」
「分った。峰川さんもやるな」
 剣崎がニヤリとして、「ズバリ、女《ヽ》でしょう」
「残念ながら、そんな色っぽい話じゃないんだ」
 峰川は、啓子たちの隣のテーブルについた。「もっと無《ぶ》粋《すい》な連れさ」
「申《もう》し訳《わけ》ありませんね」
 と、少し遅れてラウンジに入って来たのは、何と畠《はた》中《なか》刑事だった。
「まあ、畠中さん。じゃ、私たちと一緒に——?」
「お邪《じや》魔《ま》でしょうが、まあ、できるだけ目立たないようにしますから」
「いえ、そんなことありません。ありがたいんですけど、でも……」
「ご心配なく」
 と、畠中は微《ほほ》笑《え》んで、「これは純然たる私用ですから」
「私用?」
「休暇を取ってあります。何といっても、永谷聡子ちゃんのロケについて歩けるという、めったにない機会ですから」
 この刑事、どこまで本気なのかしら、と啓子は思った。
 いくらファンだからといって、カメラマンの太《おお》田《た》一《かず》哉《や》が殺された事件も未解決だというのに……。
 しかし、もちろん啓子としては安心である。大歓迎、というところだった。
「軽く何か食べておきましょう」
 と、啓子は、メニューを広げた。「飛行機の中じゃ、ジュースぐらいしか出ませんからね」
「サンドイッチでもつまむか」
 と、剣崎が言って、みんなそれに賛成すると、
「——珍《めずら》しい! 僕の言うことがスンナリ通るなんて!」
 大げさな言い方に、みんなが大笑いした。
「松《まつ》原《ばら》さんはいつ?」
 と、今川公子が訊《き》く。
「御《おん》大《たい》は一週間遅れでロケに参加だよ」
 と、峰川が言った。「しかし、実に助かるよ、あの人がよく動いてくれるんで」
 峰川の気持は、啓子にもよく分る。
 松原市《いち》朗《ろう》ほどの大物だと、よほどの大監督でもない限り、言うことを聞かないことが多い。しかし、この映画に限っては、松原は実に素直に峰川に言われた通り、何度でもやり直すのだ。
 松原が言うことを聞いている限り、他のスターたちも、そうしないわけにはいかない。峰川がありがたがるのも当然といえた。
「本当ね」
 と、今川公子がタバコに火を点《つ》けながら、「あの井《い》関《せき》真《ま》弓《ゆみ》も、借りて来た猫《ねこ》みたいじゃないの」
「しっ! おい——」
 峰川がチラッと周囲へ目をやって、「その辺にいるかもしれないぞ」
「あら、真弓さんは何か他《ほか》の仕事が入っていて、明日のはずよ」
 と、啓子は言った。
 峰川が眉《まゆ》を寄せて、
「本当か?——じゃ、妙《みよう》だ」
 と、首をひねる。
「どうして?」
「今朝見かけたよ、ここで」
「今朝?」
「うん。——ああ、俺《おれ》はゆうべここへ泊ったんだ。一人になって、コンテを立てたかったからな」
 コンテ、というのは、シナリオよりずっと詳《くわ》しい、撮影用の台本のことだ。
「へえ、乗ってますね」
 と、剣崎が冷やかすと、峰川は照れたように、
「よせよ」
 と、言った。
「じゃ、朝見かけたってことは……」
 と、聡子が考えて、「真弓さん、ここへ泊ったってことですね」
「そういうことになるな。もちろん、一人じゃあるまい」
 啓子は、ちょっと不安になって来た。
「監督、相手の男、見ました?」
「いや、見てない」
「そうですか」
 峰川も気にしている。それは当然だった。
 もし井関真弓が、ゆうべこのホテルに男といたとすると、その相手は、松原でないのは確かである。
 松原と会うのなら、こんな所まで来る必要は全くないのだから。
 真弓が、このところ松原に腹を立てていたことは、みんな知っている。他の男に手を出す気になってもおかしくはない。
 ただ、問題は、それを松原が知った時である。松原はプライドの高い男だ。真弓が他の男と寝たと知ったら、黙ってはいまい。
 しかも、その相手は——このホテルに、ゆうべ泊ったということは、一便早く九州へ発った、他のメンバーの一人である可能性が高いのである。
 ロケ先で、もしこれが発覚して、松原が怒《おこ》ったら……。撮影の中断も、ありえないことではない。
「もめないといいけどな」
 と、剣崎が言った。「製作中止なんてことになったら——」
「やめてよ」
 と、啓子が顔をしかめる。「監督、こうなったら、どんどん撮《と》っちゃいましょう。三分の二まで行けば、誰もやめようなんて言いませんよ」
「全くだ」
「それじゃ、私と君《きみ》永《なが》君のラブシーンを後回しにした方がいいわ。きっと長くかかりますよ」
 と、聡子が言ったので、みんなが笑って、大分ホッとした気分になる。
 そうこうする内、サンドイッチや飲物が来て、話は他のことに移って行った。
 でも、と啓子はため息をついた。
 聡子の「探《たん》偵《てい》業」はともかく、松原と井関真弓、そして畠中刑事の同行。——色々、波乱含みではあるわ、と啓子は思ったのである……。
 
「通して!——はい、ごめんなさいね! ちょっと通して下さい!」
 啓子の馬《ば》鹿《か》でかい声が、こういう時には大いに役に立つ。
 きっかけは、やはりどこかの中学生らしい女の子だった。
 五、六人のグループで、空港のロビーを、キャアキャア言いながら歩いていた。
 そこへ、聡子たちが行き合わせたのである。こういう点は、実に目ざとい。
「あーっ! 永谷聡子!」
 辺《あた》りに響きわたる声を上げた。——まずい、と啓子が、聡子へ、
「急ごう」
 と促《うなが》した時は、すでにワーワーと何百人という人が集まって来てしまったのである。
「ほら! 聡子ちゃんを向うから守って!」
 剣崎があわてて聡子のそばに寄《よ》り添《そ》って、ロビーを突っ切って行く。
 剣崎だって、いい加減顔は知られているはずだが、この際はガードマンに徹することになった。
「早く!——ちょっと、ちょっとどいて下さい!」
 啓子も汗だくだ。やっと、搭《とう》乗《じよう》口《ぐち》から入って、手を振ったり大声で、
「聡子ちゃん!」
 と叫ぶ女の子たちへ、聡子も振り返って手を振る余裕が出来たのだった。
「——しかし、凄《すご》いな」
 剣崎も汗を拭《ぬぐ》った。
「すみません、ご迷《めい》惑《わく》かけて」
 と、聡子が頭を下げた。
「いいのよ、聡子ちゃんが悪いわけじゃないんだから。人気商売の辛《つら》いところね」
「僕には誰も気が付かないね」
 と、剣崎がふくれて見せる。
「ま、聡子ちゃんにゃ勝てないわよ」
「分ってます」
 と、そっぽを向く。
 そこへ、中年のおばさんが一人、カメラを手にやって来ると、
「すみません!」
 と、剣崎へ、声をかけた。
「はい?」
「シャッター切っていただけません?」
「——いいですよ」
 剣崎の顔が引きつっているのを見て、啓子は笑い出すのを必死でこらえていた……。
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