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迷子の花嫁02

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:1 大安吉日「ほら、ドン・ファン! 邪魔しないでったら!」 塚川亜由美は、苛々《いらいら》しながら叱《しか》りつけた。「
(单词翻译:双击或拖选)
 1 大安吉日
 
 
「ほら、ドン・ファン! 邪魔しないでったら!」
 塚川亜由美は、苛々《いらいら》しながら叱《しか》りつけた。
「クゥーン……」
 ドン・ファン——こんな変な名前だが、ダックスフントの由緒正しい名犬(?)である——は、つまらなそうに鼻を鳴らした。
「急ぐのよ、こっちは!——聡子も何やってんだろ。もう二十分も遅れてる」
 と、亜由美はブツクサ言いつつ、自分も仕度が遅れているので、正直なところホッとしてもいたのだった。
「亜由美」
 と、例によって、母親の清美がドアを開けた。
「お母さん! ノックしてって言ってるでしょ。こっちは女子大生なのよ」
「はいはい」
 と、清美の方は一向に聞いていない。「神田さんが迎えにみえたわよ。——あら、あんたも、そういう格好すると、結構可愛いじゃない」
「『結構』はないでしょ。自分の娘に向って」
 と、亜由美は言った。
 確かに、今日の亜由美は少し肩の出た、ピッチリと体のラインを出すドレス姿で、我ながら「魅力的!」と認めないわけにはいかない出来栄えだった。
「どう? 花嫁がかすんじゃってもいけないんだけどね」
「それなら大丈夫よ」
「本当に、お母さんは変なとこばっかり請け合ってくれるんだから」
 と、亜由美は苦笑した。「すぐ行くって、聡子に言って」
「はいはい。——亜由美。もし式場で適当な人を見付けたら、酔っ払わせて、結婚しちまったらどう?」
「無茶苦茶言わないで」
 亜由美はバッグをつかみ、「行って来るからね。——あれ?」
 ドン・ファンの姿が見えない。大方、叱られてすねているんだろう(プライドだけはやたらと高いのだ)。
 亜由美はトントンと階段を下りて行った。
「お待たせ」
 と、玄関へ出て行くと、親友の神田聡子が、こちらはレース飾りのついた、えらく可愛いワンピースで立っている。
「ハハ、可愛く決めたね」
 と、亜由美が言って、「——お母さん! 行って来るね」
 と、呼びかけると、居間から出て来たのは、父親の塚川貞夫。
「あら、お父さん、いたの? あ、今日は日曜日か」
「亜由美。——行くのか」
 と、塚川貞夫はいやに深刻な表情で、言った。
「うん……。だって、もう出ないと式に遅れちゃう」
「そうか! お前も行ってしまうのだな」
 塚川貞夫はひし[#「ひし」に傍点]と亜由美を抱きしめて、「いつかまた、神様の思召《おぼしめ》しで、再び会える日が来る。そう信じていよう」
「あ、あのね、お父さん——」
 と、亜由美が焦っていると、
「さ、行った行った」
 と、清美がやって来て、「お父さんはね、今見てたアニメの場面を『追体験』してるのよ」
 塚川貞夫は、優秀なエンジニアだが、唯一変っているのは、少女アニメの熱狂的ファン、それも「涙、涙」のパターンのものが大好きと来ている。
「行け、娘よ!」
 と、赤く目を潤ませて、亜由美を離すと、「神が共にあらんことを!」
「行って来ます」
 亜由美は、聡子を押し出すようにして、外へ出た。「——ああ、冷汗が出る」
「でも、可愛いじゃない、お宅のお父さん」
「あれで? その内、家中にスピーカーでも置いて、一言話すたびに『ジャーン!』って音楽が入るんじゃないかしらね」
「楽しいじゃないの。純情なのよね、きっと。——でも、いいお天気になったわね」
 五月。お昼に近い空の青さは、まぶしいほどだった。
 道に車が一台|停《とま》っている。
「やあ」
 と、窓から顔を出したのは——。「お二人とも美しいですな」
「殿永さん!」
 と、亜由美はびっくりして、「何してるんですか、こんな所で?」
「お二人をお送りしようと思いましてね」
 何かと物騒なことによく係わり合う亜由美たちが、その都度迷惑をかけている(?)、太った男——殿永刑事である。
「でも……お仕事は?」
 と、聡子が訊《き》いた。
「クビになったんですか、警察?」
 と、亜由美。
 殿永は笑って、
「いやいや。そういうわけじゃありません」
 と、ドアを開け、「さあ、乗って下さい。〈K会館〉ですね、行先は」
「あの——もしかして母が?」
 と、亜由美が訊く。
「そうです。たまたま今日は非番でしてね。『うちの娘たちが襲われたら、殿永さんもお困りでしょ』と言われて」
「全くもう!」
 と、亜由美はため息をついた。
「まあいい。乗って乗って。——ちゃんと助手もついてます」
「助手?」
 助手[#「助手」に傍点]席から、ヌッと顔を出したのは、ドン・ファンだった。
「あんた、いつの間に……」
「大安吉日ですよ。さあ、参りましょう」
 殿永は楽しげに言った。
〈K会館〉は、確かに今日が大安吉日であることを印象づけた。
 ともかく、フル回転で、式と披露宴が次々に進み、ロビーや廊下も、人が溢《あふ》れんばかり。
「ドン・ファン。あんた、踏みつぶされたって知らないからね」
 と、ロビーへ入った所で、亜由美はそう宣言した。「それから、言っとくけど、ウェディングドレスのスカートの中なんかに入ったりしたら、しめ殺すよ!」
「ワン」
 亜由美の迫力に、さしものドン・ファンも素直に肯《うなず》いた(?)。
「やあ、大変な混雑だ」
 殿永が車をパーキングへ入れて、やって来た。——いつもと違って、ダブルのスーツとシルバータイ。それなりにさま[#「さま」に傍点]になっている。
「先輩の前田小夜子って人の結婚式なんですの」
 と、亜由美は言った。「相手、誰だっけ」
「ええと……。〈久井〉って言うんだ、〈久井隆〉ですって」
「どこへ行けばいいのかな」
 ズラッと〈××家・××家結婚式場〉という案内の札がかかっているパネルを眺めて、「——あった。三階だね、〈久井家・前田家〉」
「そうらしいわね、こんなに式があるの? 凄《すご》い」
 と、聡子が呆《あき》れた様子で、「これなら、私だって、ねえ」
「関係ないでしょ。——行こう。あれ、殿永さんは?」
 殿永が少し遅れてやって来る。
「失礼しました、ちょっと知ってる顔を見たもんで」
「凶悪犯ですか?」
「塚川さん」
 と、殿永はため息をついて、「何か他に考えることはないんですか?」
「性格ですの」
「残念ながら犯罪者じゃありません。どこかで見た顔だと思ったんですが。確か——財界人ですよ、有名な」
「TVに出てます?」
 と、聡子が訊いた。
「有名か否か」の判断は、TVに出ているかどうか。これが聡子の信念である。
「さ、行きましょう」
 亜由美たちは、ちょこまかと人の間をすり抜けるドン・ファンともども、エレベーターへと向った。
 エレベーターがゆっくりと三階へ上って行く途中、
「そうだ」
 と、殿永が言った。「思い出した」
「何を?」
「今、ロビーで見かけた人物です。有名な実業家ですよ。そう。——内山広三郎[#「内山広三郎」に傍点]だ、あれは」
 
 トントン、とドアをノックされて、控室に一人でいた小夜子は、ドキッとして飛び上りそうになった。
「は、はい!」
「入っていい?」
 と、懐しい声がする。
「あ——どうぞ」
 変に他人行儀になってしまうのが、我ながら妙である。
「やあ、すてきだ」
 と、久井隆が入って来て、小夜子のウェディングドレス姿を眺める。
「そんなにジロジロ見ないでよ」
 と、小夜子は赤くなって目を伏せた。
「でも、大丈夫かい? 今朝は何だか青い顔してたって——」
「もう何ともないわ。飲みすぎたの、おとといの夜。本当に馬鹿みたいだった」
「ゆうべじゃなくて良かったよな。二日酔で結婚式じゃ、辛いからね」
 と、久井は笑った。
 小夜子は一瞬ゾッとする。——二日酔、と言われると、昨日、あの大きなベッドの中で目を覚ましたことを思い出してしまうのだ。
 もう忘れなきゃ! 一刻も早く、忘れてしまうこと!
 小夜子は、昨日、アパートへ帰ってからも気が気ではなかった。あの内山広三郎という男の親戚《しんせき》とかが、押しかけて来るんじゃないかと……。
 しかし、もちろんそんなことはなく、夕方にはやや気をとり直して、上京して来る両親を東京駅へ迎えに行ったのである。
「今夜も、仲間の連中が僕を酔い潰《つぶ》れさせようと企んでるんだ」
 と、久井が言った。
「まあ。大丈夫?」
「任せて。大事な夜じゃないか。そんなことさせるもんか」
 と、久井はニヤッと笑って、「ちゃんと裏をかいてやることにしてるんだ」
「裏をかくって?」
「二次会の会場へ連中が集まるだろ。そこへドカッと花束と飲物を差し入れて、〈勝手にやっててくれ〉ってメッセージを入れてやる。泊るホテルも、でたらめを教えてあるからね。分りゃしないよ」
「まあ、いいの? そんなことして。お友だちに——」
「友だちだって、礼儀ってもんがある。そうだろう? 一番プライベートな時間を邪魔する権利は、誰にだって、ないさ」
 久井の言葉は、小夜子の胸を熱くした。
「嬉《うれ》しいわ。——あなたがそんな風に気をつかってくれてるなんて……」
「当り前だろ。君と結婚できるんだから」
 と、久井は屈託なく笑った。
 ——久井隆は、二十六歳。小夜子より二つ年上だが、見たところ童顔で若々しいので、同年代に見える。
 小夜子と久井は見合結婚である。——故郷の親類の口ききでお見合したときには、小夜子は正直、遊び半分という気持だった。
 しかし、久井のほうは一目見るなり小夜子のことが気に入った様子で、かなり積極的にこの話を進めてしまった。小夜子の方でも、「そう嫌いなタイプでもないし……」と思っている内に、いつの間にやらプロポーズされ、OKしていた、という具合だった。
 いくらか気楽に考えていた、そんな気分が、あんなとんでもない出来事につながってしまったのかもしれない。
 そう思うと、小夜子は久井に申しわけなくて、胸苦しい気持になるのだった。
「ご両親は?」
 と、久井が言った。
「ええ、今ちょっと——何だか売店で買って来るって、出て行ったわ」
「じゃ、あんまりここにいても良くないな。僕の方も色々客が来るからね。後で会おう」
「ええ」
 と、言って、小夜子は、「——ね、隆さん」
 と、呼び止めた。
「え?」
 振り返った久井は、「『隆さん』って呼んでくれたのは、初めてだね」
 と、微笑《ほほえ》んだ。
「そう……。そうね」
 小夜子は、まるで初恋に震える少女のようだった。「ずっと——ずっと、そう呼びたいわ。一生、ずっと」
 久井は、小夜子のほうへ歩み寄ると、そっとヴェールを持ち上げ、額に軽く唇をつけた。
 そこへ、
「先輩! いますか!」
 と、ドアを叩《たた》く音。
「塚川さんだわ」
 と、小夜子は笑って、「あなたも会って行って。面白い子なの」
「どんな風に?」
「会えば分るわ」
 ——その通りだったということは、改めて述べるまでもないだろう。
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