日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

迷子の花嫁04

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:3 すれ違った顔「なかなかだったじゃない」 と、神田聡子が言った。「うん。感動的だった」 と、亜由美が素直に肯《うなず》
(单词翻译:双击或拖选)
3 すれ違った顔
 
「——なかなかだったじゃない」
 と、神田聡子が言った。
「うん。感動的だった」
 と、亜由美が素直に肯《うなず》く。「やっぱりいいわねえ結婚式って」
「違うわよ、あのお婿《むこ》さん。結構見られる顔だし」
「何言ってんの」
 と、亜由美がにらむと、足下で、
「ワン」
 とドン・ファンが笑った[#「笑った」に傍点]。
「いや、立派なものでしたな」
 と、殿永が二人の後から出て来て、「私も若いころを思い出した」
「あ、殿永さんにも若いころがあったんですね」
 と、聡子が言った。
「失礼よ、聡子。殿永さんだって、若いころも、細い[#「細い」に傍点]ころもあったのよ。ねえ?」
「どっちが失礼よ」
 とやり合っていると、式場の係の人が、
「恐れ入ります。後がつかえておりますので、お早めに披露宴会場のほうへ移動して下さい!」
 と、叫んでいる。
「大混雑ね」
「大儲《おおもう》けだ」
 と、聡子が現実的な感想を述べる。「ね、写真、とるんだよね」
 ——キリスト教式の式場で、久井隆と小夜子の結婚式が終ったところである。
 この後は披露宴。その間に、記念撮影があるはずだった。
「写真室が大変混み合っておりますので、順番が来しだい、アナウンスいたします」
 と、係の人が大声で言っていた。
 廊下を、何組もの花婿花嫁がすれ違うという、信じがたい盛況ぶり。
「あ、前田先輩」
 と、聡子が言った。
 ウェディングドレスに、頬《ほお》を上気させた小夜子がやって来た。
「塚川さん、どうだった?」
「感動的でした」
 と、亜由美は言った。
「そう? 二人の足どりが合わなくて。リハーサルの時間がないんだものね」
 と、小夜子は笑って、「二人とも、時間あるんでしょ? 全部終ってから、ゆっくりお茶でも飲みましょうよ」
「はい。旦那《だんな》様をじっくり拝見します」
「いくらでも、見てちょうだい」
 と、小夜子は楽しげに言った。「あ、お父さん」
「おい、今スタジオが空いてるから、新郎新婦の写真だけ先にとってくれ、と言って来た。久井君の方は呼びにやったぞ」
「そう。じゃ、行くわ。——塚川さんたちも見に来る?」
「はい!」
 いやと言うわけがない二人である。ついでに、
「ワン」
 と、足下でドン・ファンも同行する旨を告げた。
「じゃ、行きましょう」
 小夜子を先頭にゾロゾロと廊下を歩いて行くと——あっちから、同じようなウェディングドレスの花嫁がやって来る。
 もちろん、あちらも後ろに何人も連れているのだが……。すれ違うのには一応充分な幅があるが、それでも花嫁同士、何となく互いに会釈を交わして行く。
 そして、小夜子は真直ぐに顔を上げ、ドレスの裾《すそ》を少しつまんで、歩いて行ったのだが——。
 小夜子がピタリと足を止める。後を歩いていた亜由美たちは、危うく追突しそうになった。
「前田さん、どうしたんですか?」
 と、聡子が訊《き》いたが、
「そんなこと……」
 と、呟《つぶや》きながら、ゆっくりと振り向いた小夜子には、聡子の声など全く聞こえていない。小夜子の目は、今すれ違って行った人々の方を向いていて、その顔からは血の気がひいていた。
「——おい、小夜子、どうしたんだ」
 と、父親に言われて、小夜子はやっと我に返った様子。
「あ……。何でもないの。何でも……」
 と言いつつ、小夜子は歩き出したが、亜由美は、ドレスの裾をつまんだ手が、細かく震えているのを見てとっていた。
 ——スタジオでは、久井が待っていて、
「さ、急いでくれってさ。全く、一生一度のことなのにね」
「すみませんね」
 と、カメラマンが恐縮している。「何しろ今日は特別で。でも、腕によりをかけてとりますから」
「頼みますよ」
 と、久井は笑った。「——どうした? 青い顔してるよ」
「何でもないの。大丈夫」
 と、小夜子は首を振った。「私でも、少しは緊張するのよ」
 二人が並んでの写真。
 亜由美たちは、邪魔しないように、スタジオの隅の方に立って眺めていた。
「きれいね」
 と、聡子が呟く。「いい男だ」
 でも——亜由美には、さっきの小夜子の驚きようが、気になっていた。あれは普通にびっくりしたというのとはわけが違う。
 一体何があったのだろう?
 ——写真を無事にとって、
「じゃ、お二人はそれぞれ控室でお休み下さい」
 と係の男が言った。「披露宴まで、少し間がございます。それと全体写真もありますので」
 小夜子は、久井へ、
「じゃ、後で」
 と、声をかけた。
「何か食べといた方がいいんじゃないか? パーティじゃ食べられないよ」
「大丈夫。胸が一杯よ」
 と、小夜子は笑顔を見せた。
 そして、急に亜由美のほうへやって来ると、
「塚川さん、聞いて」
 と、小さな声で早口に、「控室へ来てほしいの。一緒に来た方、刑事さんですって?」
「そうです」
「じゃ、お二人で。他の人には内緒よ!」
 何とも答える間もない内、小夜子は両親と何やら話しに行ってしまった。
「どうしたの?」
 と、聡子がやって来たが、
「何でもない」
 と、亜由美は首を振った。
 私と殿永さんだけで?——亜由美はまた、何か起りそうな気がして、足下のドン・ファンを見下ろした。
「クゥーン」
 ドン・ファンは亜由美の顔を見て、鳴いた。
「分ってるわよ。あんたはお腹が空いてるんでしょ」
 と、亜由美は言ってやった……。
 
「馬鹿なことをしました」
 と、小夜子は言った。「もう遅いけど、もう二度とお酒なんか飲まないわ」
 ——花嫁の控室。
 亜由美と殿永は、頼まれた通りここへやって来た。ただし、オブザーバー(?)として、亜由美の足下には「茶色い用心棒」ドン・ファンがうずくまっている。
 それにしても——まさか、こんな告白を聞かされようとは思わなかった。
「とんだことでしたな」
 と、殿永が言った。「まあ確かに感心したことでもない。しかし、それはあなたご自身の問題でしょう。我々は決して口外しませんが……」
「お願いします。塚川さんもお願いね」
「もちろん!」
 亜由美とて、しゃべっていいこと、悪いことの区別はつく。
「——それだけじゃないのです」
 と、小夜子は続けた。「お二人に来ていただいたのは、これまでにも、塚川さんが色々事件に係わり合って来た、と聞いていたからで——」
「係わったどころじゃありません」
 と、殿永が言った。「留置場へ入るわ、犯人と格闘するわ、大変なんです、この人が出て来ると」
「ちょっと! それはないんじゃありませんか? 私がまるで大変な不良みたいでしょ、それじゃ」
「いや、別にそういう意味では——」
「でも、そう聞こえました!」
「待って」
 と、小夜子は笑って、「——仲がいいのね、お二人」
「ワン」
「変なとこで鳴くな」
 と、亜由美が足でちょいとつつく。
「——実は、とんでもないことがあって」
 小夜子が真顔になった。「その——同じベッドで死んでいた老人と、さっき出会ったんです」
「え?」
 亜由美が目を丸くする。
「死んだのは、実業家として有名な人だそうです。内山広三郎[#「内山広三郎」に傍点]といいました」
「誰ですって?」
 今度は殿永が仰天する。「内山広三郎? 確かですか?」
「そうです。その人の屋敷で目を覚まし、息子さん、娘さんともお会いしたんですから。——さっきお話しした通り、どっちも沈黙を守るという条件で、何もなかったことにしたんですけど……。今、廊下ですれ違った花嫁さん、あの後ろについていた人たちの中に、確かにあの老人がいたんです」
「間違いありませんか」
「はい。今思い出すと、あのとき会った息子さんと娘さんも、あの中にいました。いくら似た人がいたとしても、三人もなんて、あり得ないでしょう?」
「それは……、でも、前田さん」
 と、亜由美は言った。「もしかすると、死んでたんじゃなくて、一時的な発作だったとか? 後で意識を取り戻したのかもしれないじゃありませんか」
「ええ……。そうかもしれない。でも——あのときのあの老人の様子……。とても生きてたとは思えないわ」
 と、小夜子は言った。
「確かに妙ですな」
 と、殿永が言った。「——万一、死んでいなかったとしても、昨日の今日。こんな席に出られるほど回復していたとは、とても思えない」
「じゃ、殿永さん——」
「待って下さい」
 と、殿永は亜由美に言って、「前田さん。死んでいるのを発見した男というのは?」
「ええ……。確か秘書だとか言ったと思います」
「その男もここにいたと?」
「それは分りません。寝室は暗かったし、その人の顔はよく見ていないんです」
 と、小夜子は首を振った。
「その男は『救急車を呼ぶ』と言ったんですね?」
「ええ。——でも、そうだわ。救急車が来た様子はありませんでした」
「しかし、電話をしていた、と……」
「でも、どこへかけていたかは分りません。すっかり震え上っていて……」
「そりゃそうでしょうね」
 と、亜由美は肯いた。
 殿永が考え込んでいる。——小夜子は言った。
「私、今心配なのは、あのことが隆さんに知れることなんです。その心配さえなければ、別にあの人がどうなっていても、構わないんですけど」
「お気持はよく分ります」
 と、殿永は静かに言った。「しかし、お話を伺ってると、いささかきなくさいものを感じますね。——まあ、何でもなければ幸い。もし、何かあっても、できる限り、あなたのプライバシーは守ります」
「お願いします」
 と、小夜子は頭を下げた。
「前田さん、元気出して下さい。これから楽しい披露宴ですよ」
「そうね……」
 と、小夜子はやっと微笑を浮かべたのだった……。
 ——亜由美たちは廊下へ出て、ソファを置いたちょっとしたコーナーへ行って腰をおろした。
「どう思います?」
 と、亜由美は言った。
「ワン」
 と、殿永は言った——いや、ドン・ファンが鳴いたのだった!
「いや、結婚直前に、大したことを! そっちの方にびっくりしてしまいますよ」
 と、殿永はハンカチを出して、汗を拭《ふ》いた。
「茶化さないで答えて下さい」
「もちろん、あの女性の思い過しなら結構。しかし、あの話しぶりでは、かなり信用してもいいと思いましたね」
「しっかりした人です。確かに、酔うとわけが分らなくなることもあるんですが」
「目を覚ましたときは酔っていなかったでしょうしね。——そうなると問題です。確かに私も今日、内山広三郎を見ている。しかし、本当に死んでしまったのだとしたら、今日この式場にいる内山広三郎は偽者ということです」
「偽者?」
「何かの理由で、そっくりな人間を雇い、内山広三郎として、ここへ出席させている、ということです。そうなると、理由は何か、ということになる」
「でも、色々知ってる人が大勢集まってるわけでしょ? 偽者なら、すぐ分っちゃうんじゃありません?」
「そこは、周囲がうまくカバーしているんでしょう。ところが、ここに、内山広三郎が死んだと知っている[#「知っている」に傍点]人間が居合せた」
「前田さんが……」
「前田小夜子という名前も、顔も知っている。——向う[#「向う」に傍点]も前田さんに気付いたかもしれませんね」
「そうですね。よく見とけば良かったけど」
「まあ、特別犯罪の匂《にお》いがするというわけでもないが、用心に越したことはありませんからね」
「どうします?」
「私が、見張っていましょう。もちろん、あの花嫁さんにピッタリくっついているわけにはいきませんが、このソファから、廊下と控室も見通せる」
 振り返った亜由美は、殿永がちゃんとそれを考えてソファを選んでいるのを知った。
「さすがにプロですね」
「持ち上げんで下さい。まあ、披露宴が始まってしまえば、人目もある。大丈夫でしょうがね」
「前田さんに言って、殿永さんの分の席もちゃんと用意してありますから」
「どうも。——今日の食費が助かります」
 殿永は至って現実的な感想を述べたのだった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%