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迷子の花嫁06

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:5 殴った男「まあ、人間誰しも間違いというものはありますよ」 と、塚川亜由美が殿永刑事を慰めている。 何だか逆ではないか
(单词翻译:双击或拖选)
5 殴った男
 
「まあ、人間誰しも間違いというものはありますよ」
 と、塚川亜由美が殿永刑事を慰めている。
 ——何だか逆ではないかと思われそうだが、この文章はこれで正しいのである。
「いや、どうも……」
 と、殿永は大分落ち込んでいる。「もう私もぼけて来たのかもしれません」
「そんな……。そうだとしても、まだ大したことありませんわ」
 これじゃ慰めていることにならない。
 結婚式場K会館のロビー。
 昼の挙式、宴会が一段落して、今度は夕方から夜にかけての組がもう準備に入り、客も集まって来ている。
 ——殿永と亜由美は、前田小夜子の身に何かあっては、と花嫁の控室へと駆け出して行き……そこに小夜子の血まみれの死体を発見した——わけではなかった。
 もしそうなら、ロビーには警官が大勢来ていることになっただろう。
「小夜子さんが殺されていたとか、そんなことになるより、ずっと良かったんじゃありません?」
「ワン」
 ドン・ファンも賛意を表した(?)。
「どうも。——私もそう考えて自分を慰めているところです」
 と、殿永は肯《うなず》いた。
 それというのも——控室へ駆けつけた殿永たちは、ノックもせずにドアを開け(そんな余裕はなかったのである)、ウェディングドレスを脱いで、下着だけでいた小夜子を見出したのだった……。
 そこへ小夜子の母親が来合せたから、ますますタイミングが悪く、
「痴漢!」
 などと騒がれて、ガードマンが駆けつけるという結果になってしまったのだ。
 もちろん、すぐに誤解はとけたし、小夜子は怒ってはいなかったが、それにしても——というわけで、殿永は落ち込んでいるのだった。
「あの女はどこへ行ったんでしょうね」
 と、亜由美は言った。
「ただ逃げただけなのかもしれません。しかし、久井さんにとっては深刻でしょう。身に覚えのないことだと証明するのが、むずかしくなった」
「そうですね」
 まあ、小夜子の方にも、酔って内山広三郎と寝てしまったという弱味がある。しかし、逆に言うと、それだけに久井と、あの女の関係をつい疑ってもしまうのだろう……。
「——クゥーン」
 と、ドン・ファンが鳴いた。
「あ、あの人たち……」
 と、亜由美が、ロビーを歩いて行く、内山広三郎と、その親族たちに目を留めた。
「あれが果して本物か偽物か——。まさか当人に訊《き》くわけにもいきませんしね」
 と、殿永は言った。
 内山広三郎は胸をそらし、今にもひっくり返るんじゃないかと思えるほどそっくり返って、歩いている。そのすぐわきについているのは、小夜子の話に出て来た、娘の大倉有紀であろう。
 そのすぐ後ろにいる人相の悪いのが、内山秀輝かな、と亜由美は思った。「秀輝」って名前に完全に負けている。
 少し遅れて、投げやりな調子で歩いているのは、有紀の夫の大倉貞男だろう。頭はそう悪くないようだが、人生を投げている、という印象。
 小夜子の人物描写は、なかなか的確だった、と言うべきか。
 内山広三郎たちが、ロビーから、広いガラス扉の方へと歩いて行くと——。
 何だか、ごく当り前の格好をした女が(妙な言い方だが、要するに結婚式に出るという服装でないということ)、スタスタと内山たちの方へ歩いて行った。
 誰もその女を気にもとめなかったのは、その歩き方とかが、全く普通で、少しも緊張したものを感じさせなかったからだろう。
 そして、その女は、内山広三郎の所へ行くと、いきなり拳《こぶし》をかためて、広三郎の頭を、ポカッと殴ったのである。
 誰もが呆気《あつけ》にとられていた。
 大倉有紀が、
「何するの!」
 と、声を上げる。
 するとその女は、フンと鼻を鳴らして、
「この助平じじい!」
 と一声、プイと背を向けて、玄関から出て行く。
 誰もが、あまりに思いがけない出来事に、唖然《あぜん》としている様子。
 殿永が、進み出て、
「失礼」
 と言った。「私は警察の者ですが、今の女を暴行の現行犯で逮捕しましょうか」
「あ、いえ——」
 と、有紀が急いで言った。「それほどのことでも。ねえ、お父さん?」
「いや、やはり逮捕しましょう」
 と殿永は駆け出した。
 そのときには、亜由美も表に出ていて、その女の腕をつかんで引き止めていたのである。
「何よ! 手はなしてよ」
 と、その女が目をつり上げて怒っている。
「人を殴っといて、それはないんじゃありません?」
「殴られて当り前の奴《やつ》を殴っただけ。どこが悪いのよ」
 三十五、六といったところだろうか。あまり化粧っ気のない、普通のOLという様子である。
 殿永が駆けつけて来ると、
「警察の者だ」
 と、手帳を覗《のぞ》かせ、「一緒に来てもらおうか」
「フン、逮捕するの? 勝手にしなよ。こっちは平気よ」
 と、女はつっかかって来る。
「あの——刑事さん」
 と、あわてた様子で出て来たのは、大倉有紀。
「もういいんです。その人、何か人違いをしたんですわ。ねえ、そうでしょ?」
「人違いなんかしないわよ」
 と、女は言い返した。「内山広三郎の奴をぶん殴ってやったの。間違いなくね」
「後はお任せ下さい」
 と、殿永は女の腕をとって、「さ、来るんだ」
「はいはい。どこへ行くの? 三泊四日で温泉旅行?」
「留置場ホテルさ。五ツ星とはいかないが、天井と壁はある」
「結構寝られるわよ」
 と、亜由美が、経験から(?)言った……。
 
「すると、内山広三郎と、深い仲だったんだね?」
 と、殿永が訊いた。
「そうよ。一年間ぐらい」
 女は、まるきり隠しだてはしなかった。
「きっかけは?」
「うちの社へ内山が仕事でやって来て……。まあ何ていばってるじいさんだろう、って思ったのね。私は課長にくっついて、お茶出したりしてただけ」
 結城美沙子、というのが、その女の名前だった。
 取調室でも、大いに話は弾んだ。珍しいことである。
「そしたら、帰ってから二、三日して、課長が、『夜、ここへ行ってくれ』って。——Tホテルのスイートルームだったの。何だか分んないで行ったら、内山が待ってて……。シャンパンだの、料理を並べて。——私のこと、取引の条件にして、課長もOKしてたのね」
「ひどいわね」
 と、聞いていた亜由美が言った。
「頭に来たけど、それなら、好きなだけ食ってから帰ろうと思って。——ところが、途中で飲んだワインに薬が入ってたらしくて、眠り込んでしまい、目が覚めたら、内山のベッドの中……。やけになって、それから一年近く、愛人って身分で、こづかいもらっていたの」
 亜由美にはその辺のことは理解できなかったが、まあそこは人生観の違いかもしれない……。
「それで、どうして突然ぶん殴ったりしたんだね?」
「だって——昨日になって、急にあの野口って奴が来てさ」
「野口?」
「内山の秘書よ。何考えてるんだか、よく分らない奴」
 と、結城美沙子は、「タバコ一本くれる?」
「ああ……」
「ありがと」
 と、タバコに火を点《つ》け、フーッと煙を吐き出すと、「野口がね、『内山さんはもうあんたに飽きたと言ってる。これで手を切る』と、こうよ。百万円の小切手出して。——頭に来るじゃない? いやならいやでいい。でも、自分で言いに来いっての。ベッドを何回も共にしといてさ、飽きたからって、秘書を寄こすなんて、失礼だと思わない?」
「そりゃまあ……。それで殴ったのかい?」
「そう。ぶん殴って、小切手を目の前で破ってやろうと思ったの。気持いいでしょ」
「で、小切手は?」
「考えたら、もったいないから、破るのやめたわ」
 亜由美はふき出してしまった。
 この結城美沙子という女、相当にいい加減ではあるが、どこか憎めないものを持っている。
「ま、向うは君を訴える気はないらしいが。どうするね、君?」
「またOLでもやるわ」
 と、肩をすくめて、「どうせ、ずっと勤めてたんだし。おこづかいだけじゃ食べて行けないから、パートで働いてたの」
「それがいい。地道に働くのが、一番いいんだよ」
 結城美沙子は、殿永を見て、
「あんた、面白い刑事さんね」
 と、言った。
「ところで、一つ訊きたいんだが」
「え?」
「さっき君が殴った相手、間違いなく内山広三郎だったかね?」
「どういう意味?」
 と、目をパチクリさせる。
「いや、どこかいつもの内山広三郎と違うってところはなかったかね」
「そんなによく見なかったけど……。でも、どうして?」
「まあ、色々あってね」
 殿永は、美沙子の肩を軽く叩いて、「いいかね、もし、内山家の誰かか、その野口とかいう秘書が君に連絡をとって来たら、私に知らせてくれないか」
「いいけど……。何があるの?」
「分らないから言ってるのさ」
 と、殿永は真顔で言った。「万に一つ、君の身に危険が及ぶことも考えられるからね」
 美沙子も、真剣な表情になって、肯いたのだった……。
 
「——妙な一日でしたな」
 と、殿永は車を運転しながら言った。
「何か起ると思います?」
 と、亜由美は助手席で言った。
 後ろの座席には、ドン・ファンと神田聡子が、くたびれて、仲良く眠っている。
「起らないでほしいが」
 と、殿永は首を振って、「問題は内山広三郎が、果してどうなったか、です」
「そうですね。——もし死んで、偽者が入れ替ってるとしたら……」
「その目的は何か。そして、事情を知っている、前田小夜子と、愛人だった結城美沙子の二人は、邪魔になるかもしれない」
「小夜子さんが狙《ねら》われる?」
「いや——そこまで考えるには根拠が薄いですがね。いずれにしても、今の段階じゃ、こっちとしては、手が出せない」
「つまり——」
 と、亜由美が言った。「私たち[#「私たち」に傍点]なら、ってことですね」
「そんなこと言ってませんよ。自分に都合良く解釈しないで下さい」
 と、殿永が顔をしかめる。
「私、殿永さんの心が読めるんですもの」
 と、亜由美はすまして言った。
「——あの久井隆と小夜子さんのことも、問題です。あの女が姿を消した以上、果して本当に恋人だったかどうか、知りようがないわけですからね」
「でも今夜は……二人の初めての夜でしょう」
 と、亜由美は言った。「——どうなるのかしら」
「うまく行ってくれるといいですがね」
 ——もう夜になっていた。
 車は、亜由美の家に着いて、
「ドン・ファン! 起きないと置いてくよ!」
 と、亜由美に怒鳴られ、ドン・ファン、あわてて窓から出て来る。
「ウァー」
 と、聡子が欠伸《あくび》して、「もう朝?」
「何、寝ぼけてんだ」
 と、亜由美は笑って、「じゃ、殿永さん、何かあったら、知らせて下さい」
 と手を振って……。
 さて——家に入ろうとドン・ファンを促して——。
「——何してるの?」
 ドン・ファンが、一向に動かないのである。
 すると、道の暗がりから、
「塚川さん」
 と、出て来たのは——小夜子だった。
「あ……。どうしたんですか?」
「うん……。何だか、どうしても今夜はあの人と一緒にいたくないの」
 と、小夜子は言った。「泊めてくれないかしら」
「もちろん。でも……知ってるんですか。久井さん」
「手紙、置いて来た。心配してもいけないしね。あなたの所へ行くって」
「じゃ、大丈夫ですね。——どうぞ、花嫁さん[#「花嫁さん」に傍点]」
 亜由美が冗談めかして言うと、小夜子はホッとした様子で笑ったのだった。
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