日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

眠りを殺した少女04

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:4 卒 業「小西智子」 と、マイクを通した声が、講堂の中に響き渡る。「はい」 はっきりと返事をして、智子は立ち上った。 
(单词翻译:双击或拖选)
 4 卒 業
 
「小西智子」
 
 と、マイクを通した声が、講堂の中に響き渡る。
 
「はい」
 
 はっきりと返事をして、智子は立ち上った。
 
 見てるかな、お母さん。結構、寝坊して遅刻したりして。
 
 いや、やす子がいるから、寝坊はしないだろうが、家を出て途中でちょっと、
 
「お友だちと話し込んだりして」
 
 遅れて来る、ということは、充分に考えられる。
 
 智子は、前の子と十メートルほどの間隔を保って、壇上へ向いながら、後でお母さんに訊《き》いてやろう、と思っていた。
 
 私の前の子が階段でつまずいたの、見たでしょ?
 
 ええ、見たわよ、とでも母が答えれば、何も見ていなかったことがばれてしまうわけだ。
 
 もちろん、実際には誰もつまずいたりしなかった。壇上に上って、足を止める。前の子が、高等部長の青柳先生から、卒業証書を受け取って一礼すると、反対側へと歩いて行く。智子の番だ。
 
 智子は、少し胸を張って、しっかりした足どりで進んで行った。
 
 青柳先生は、以前、このN女子学園の小学部の部長をしていて、そのとき智子も小学生だった。母が父母会の役員をしていたので、青柳先生は智子のことをよく憶えているはずだ。
 
 卒業証書を先生から手渡される。
 
「大学へ行っても、しっかりな」
 
 智子が小学生のころと比べると、すっかり髪が白くなって老《ふ》けた(当然のことだが)青柳先生が言った。低い声だったので、他の人には聞こえなかっただろう。
 
 智子も小さく、
 
「はい」
 
 と返して、一礼した。
 
 壇を下りながら——でも、青柳先生は知らない、と智子は考えていた。何も知らない。
 
 私が人を殺したこと。片倉先生を殺したことを、知らない……。
 
 卒業証書をゆるく丸めて持つと、智子はそのまま講堂から外へ出た。——そう。これで卒業式は終ったのである。
 
 表では、先に証書を受け取った子たちが、みんなで写真をとり合ったりしている。
 
 親たちも講堂から出て来始めていた。
 
 暖かい、よく晴れた一日。卒業式にはうってつけの天気だった。
 
「やあ、智子」
 
 と、肩を叩《たた》いたのは、中学生のころ仲が良かった三井良子である。
 
 もちろん今でも会えば話はするのだが、高校生時代はクラブも別で、あまり会う機会もなかった。
 
 それに——良子は少し変ってしまった。
 
「元気?」
 
 と、良子は言った。
 
「うん。——良子、どこへ行くの?」
 
 と、智子は訊いた。
 
 むろん、このN女子大のどの学部へ進むのか、という意味で訊いたのである。
 
「さあね」
 
 と、三井良子は目を少し細くして空を見上げると、「親の思いのままよ。どこか遠くへやられるんだ」
 
「良子……。大学じゃないの?」
 
 そのときになって智子は、いつか母が、
 
「三井さんのとこは……」
 
 と、小さな声で電話していたことを思い出した。
 
「知らなかった?」
 
 と、良子は卒業証書をヒラヒラさせて、「これだってお情よ」
 
 そう。——高校時代、良子は遊びに遊んで、先生たちに手をやかせていたらしい。
 
 智子もそれは知っていたが、何しろ小学生、中学生、と優等生で通していた良子のイメージしかないので、大したことじゃないだろうと思っていたのだ。
 
「知らなかった……」
 
 と、智子は言った。「外へ出るの」
 
「少年院に入れられないだけましかな」
 
 と、良子は笑った。
 
 智子がドキッとするほど、良子は「大人の女」に見えた。背も高く、体つきも、すっかり大人だ。
 
 髪もパーマをかけ、少し染めているようだった。
 
「何かやったの?」
 
 と、智子は訊いた。
 
 すると良子は、智子の腕をとって、
 
「こっちへ来て。——こっち」
 
 と、講堂のわきへ引張って行くと、「これよ」
 
 ブレザーのポケットから、紙にくるんだ物を取り出す。
 
「何? タバコ?」
 
「マリファナ」
 
 と、良子は平然と言った。
 
「本当に?」
 
「これ持ってるとこ、捕まったの。言い逃れはしなかった。友だちの、預かってただけなんだけどね。でも、私もやってないわけじゃなかったし」
 
「良子……」
 
「いいのよ、心配してくんなくても。好きでこうなったんだから。智子は真面目ね。いい大学生、いいOLになって、いいお嫁さんになる、か。——でもね、男と女の間は、どんなに見た目が幸せな夫婦でも、分んないものよ」
 
 良子の言葉は、すでに彼女が男を知っていること——それも、単に経験したことがあるというだけでなく、もっと愛とか憎しみとかを通り抜けて来ていることを、感じさせた。
 
「残念だね」
 
 と、智子は言った。「小学生のころ、良子、私のことをいつもかばってくれた」
 
 良子は笑って、
 
「あのころ、智子は本当に赤ちゃんでさ。よく泣いたしね」
 
「そうだった」
 
 と、智子も笑った。
 
 でも——もう戻れない。誰も、時間は戻せないのだ。
 
「元気でやりなさい」
 
 と、良子は智子の肩をポンと叩いた。
 
 良子はマリファナで、結局、退学同然だ。私は人を殺したというのに。
 
 もちろん、殺すつもりではなかったし、責任といえば向うにある。でも人一人の命を、この手で奪ったことは確かである。
 
「——智子! ここにいたのか」
 
 と、姉の聡子がやって来る。「あら。三井さん? 良子ちゃんでしょ」
 
「今日は」
 
「久しぶりね。——智子、向うでお母さん、待ってるよ」
 
「すぐ行く」
 
 と、智子は肯《うなず》いた。
 
「——お姉さん、相変らず美人だね」
 
 と、良子が聡子の後ろ姿を見送って、言った。
 
「この間の、片倉先生の事件で、すっかり落ち込んでたの」
 
 と、智子はさりげなく言った。「でも、やっと元気になったみたい」
 
「片倉教授殺害事件か」
 
 と、良子は肯いた。「迷宮入りかね、あの事件」
 
「どうかしら」
 
「女だよ」
 
 と、良子が言った。
 
「どういう意味?」
 
「犯人。——みんな見当違いの推理ばっかりしてるけど、犯人は女」
 
 智子は、まじまじと良子を見て、
 
「どうして分るの?」
 
「あの先生、女の子にもてた。分るでしょ?」
 
「そりゃあ……。でも——」
 
「頭が良かったのよ。それなりに噂《うわさ》になる女子大生とか、わざと目につくようにして付合ってた。分る? その代り、調べても、決して深い仲じゃないってことが知れる。すると、あの人は見たところほど、女の子に手を出しちゃいなかったんだ、ってことになるでしょ」
 
「本当は——そうじゃなかったの?」
 
 良子は、チラッと遠くへ目をやって、
 
「もう行った方がいいよ」
 
 と、言った。「お母さんが待ってるでしょ」
 
「うん……」
 
 智子は、良子の話に興味があった。片倉のことを、もっと聞いていたかったが、そうは言いにくい。
 
「じゃ、良子——」
 
「うん」
 
 と、良子は肯いて、「もし片倉先生のこと、もっと聞きたかったら、今日夕方の六時に、〈P〉へおいで」
 
「〈P〉? あの駅前の?」
 
「そう。じゃあね」
 
 智子が行きかけると、
 
「ここにいたのか」
 
 と、厳しい顔の男がやって来た。「良子! 何してるんだ、こんな所で」
 
 良子の父親なのだ。智子は気になって、足を止めて振り返った。
 
「何もしてないよ」
 
 と、良子は言った。
 
「行くぞ。その卒業証書、大事にしろ。高かったんだ」
 
 有無を言わせぬ口調。
 
「そんなに高かったの。悪いわね」
 
 と、良子が言い返した。
 
「何が悪いんだ」
 
「これよ」
 
 良子は、父親の目の前で、卒業証書を一気に二つに裂《さ》いた。父親の顔から血の気がひく。
 
 良子は足早に、学生たちの間を抜けて行ってしまった。父親は、地面に落ちた卒業証書を震《ふる》える手で拾い上げると、ていねいに丸め、よろけるように歩き出した。
 
 智子は、父親にも同情していたが、同時に、良子だって何か理由がなければ、ああはならないだろう、と思った。
 
 母が待っている。——智子は、もうほとんどの学生が集まっている方へと歩いて行った。
 
「智子、何してたの」
 
 母親の紀子が和服姿で立っている。その母のそばに、今はパリにいるはずの父親の姿を見出して、智子はびっくりした。
 
「お父さん……。何してるの」
 
「ご挨《あい》拶《さつ》だな」
 
 と、小西邦和は笑って、「パリから飛んで来たんだぞ」
 
「へえ。ご苦労様」
 
「おい、それだけか、言うことは」
 
 と、父が笑う。
 
「もう明日の飛行機で発《た》つんですって」
 
 と母の紀子は不満顔。「二、三日いられないの?」
 
「仕事がある。仕方ないだろ、お前らを食わしてくためだ」
 
 と、父は言って、「午前中の飛行機だ。少し早く出ないとな。——おい、どこかで晩飯を食べよう。お祝いだ」
 
「うんと高い店でね」
 
 と、聡子が言った。
 
「これだから、稼がんとな」
 
 と、小西邦和は笑った。
 
 智子は、さっきの三井良子の言った「六時に〈P〉で」という言葉を思い出して迷った。片倉のことも訊きたい。しかし、父がわざわざパリから戻って来たのに、夕食に付き合わないとは言えない。
 
「智子! 写真、写真!」
 
 と、同じクラスで一番仲良くしていた、堀内こずえが駆けて来る。
 
「あ、そうか。——両親もよ、一緒に」
 
「そうか。じゃ、行こう」
 
 と、小西が妻を促《うなが》す。
 
 講堂前の階段に、ズラッとクラス全員が揃《そろ》って、その後ろに親たち。ほとんどの子は両親揃っているので、智子も父が帰って来てくれて良かった、と思った。
 
「いつも娘がお世話に」
 
 と、父が青柳先生に挨拶している。
 
 父、小西邦和は、目立つ人間である。大柄で胸が厚く、堂々とした印象を与えるからだろう。実際、青柳先生と話していると、大人と子供みたいである。
 
 自信と力に溢《あふ》れている。——そんな雰囲気を、小西邦和は身につけていた。
 
「あなた、後ろに」
 
「ああ、並ぼうか。では、失礼します」
 
 小西が青柳先生に一礼して、父母たちの端に加わる。母は顔見知りの母親たちと挨拶を交わしていた。
 
 智子は、堀内こずえと並んで立った。こずえが小柄なので、一番前の列になってしまう。
 
「はい、皆さん、カメラの方を見て!」
 
 カメラに詳しい先生が、6×6判の大型カメラで、記念撮影である。
 
「はい、笑って。——はい、もう一枚」
 
 智子は、姉がわきの方に立ってこっちを眺めているのに気付いた。微《ほほ》笑《え》んで見せると、姉も小さく手を振った。
 
 そして、智子は、そのまま姉の背後に視線をやって、そこに場違いな人間を見付けていた。
 
 あの山神完一、「疫病神」のニックネームのある助教授だ。もちろん、このN女子学園の職員なのだから、通りかかるのは不思議じゃない。しかし山神は、立ち止って、じっとこっちを眺めていた。
 
 智子には、山神がわざわざこの卒業式を見に来たように思えたのだ。
 
 そして——なぜか山神の陰気な視線は、智子を見ているようだった。
 
「はい、笑って!」
 
 という声にハッと我に返った智子は、カメラの方へ視線を戻し、ニッコリと笑った。
 
 カシャッ、とシャッターの落ちる音がした……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%