日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

魔女たちのたそがれ13

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:12 影《かげ》の中 依子と多江は、平《ひら》たい岩《いわ》の上に腰《こし》をおろして、休んだ。 風が渡《わた》って、汗《
(单词翻译:双击或拖选)
 12 影《かげ》の中
 
 依子と多江は、平《ひら》たい岩《いわ》の上に腰《こし》をおろして、休んだ。
 風が渡《わた》って、汗《あせ》ばんだ肌《はだ》を乾《かわ》かして行く。——静《しず》かだった。
「近道したの。きつかったかな」
 と、多江が言った。
「運《うん》動《どう》不《ぶ》足《そく》でね」
 と、依子は、ハンカチを出して、額《ひたい》を拭《ぬぐ》った。
「あなた、平気なのね」
「そうよ。だって、年中通ってるんだもの」
「年中?」
「うん」
「でも——町で、あなたの姿《すがた》、見かけたことないわ」
「バス停《てい》に直《ちよく》接《せつ》 出るからよ。町は通らないもの」
「そうか。働《はたら》いてるものね」
 と言って、ふと依子は気《き》付《づ》いた。「仕《し》事《ごと》、今日は?」
「休んだの。明日、早く出るから、って言ってね」
「私《わたし》のために? 悪いわね」
「どうってことないわ」
 多江は、遠くへ視《し》線《せん》を向けた。「辛《つら》い生活には慣《な》れてるもの」
 依子は、少し間を置《お》いて、
「——谷には誰《だれ》かいるの?」
 と訊《き》いた。
「うちの一《いち》族《ぞく》、全《ぜん》部《ぶ》で——三十人くらいかしら」
 と、多江は言った。
「三十人も?」
「家が六軒《けん》。谷の底に、固《かた》まって建《た》ってるから、いつの間にか、〈谷のもの〉とか言うようになったのよ」
「——なぜ、あなた方だけが?」
 多江は、ゆっくりと首を振《ふ》って、
「村八分——というのかな、追《お》いやられたのよ。私《わたし》が生れて、間もなくだったらしいわ。私自《じ》身《しん》は憶《おぼ》えていないの」
「で、ずっとそこに?」
「そう。——もう十六、七年になるわ」
「あなた、学校は?」
 多江が肩《かた》をすくめた。
「行ってないわよ」
「まさか!」
 依子が唖《あ》然《ぜん》とした。「でも——ちゃんと住《じゆう》民《みん》 票《ひよう》はあるわけでしょう?」
「書《しよ》類《るい》の上では、行ったことになってるわ。ちゃんと出《しゆつ》席《せき》簿《ぼ》もあるし、成《せい》績《せき》もついていて、卒《そつ》業《ぎよう》したことになってる。——でも、行ったのは一日」
「一日?」
「入《にゆう》学《がく》式《しき》の日よ。——そこで、私、寄《よ》ってたかって、服《ふく》を破《やぶ》られ、泥《どろ》の中へ投《な》げ込《こ》まれたわ。母も同じ。二人して、谷へ戻《もど》って、それきり、一日も行かなかった」
 依子は、体が震《ふる》え出すのを、必《ひつ》死《し》でこらえた。——多江の話し方は、ごく淡《たん》々《たん》としていて、それだけに、胸《むね》に食い入って来た。
「今まで、何人かの先生が、谷へやって来て、学校へ来てくれと話をしたわ。でも、行けばどうなるか、みんな知ってる。——その内《うち》に、その先生も、町を出て行った」
「——水谷先生は?」
「何もかも承《しよう》知《ち》よ。でも、利《り》口《こう》というか。小心というか。ともかく、角田の口ききで、何とか教師をやってられるんだもの」
「角田さんの?」
「水谷先生は、一度、学校のお金を使《つか》い込《こ》んだのよ。クビになるところを、角田が口をきいて助《たす》けてやった。——だから、言いなりなのよ」
 依子は呆《あき》れて、怒《おこ》る気にもなれなかった。
「それに、あの先生は、大体が日《ひ》和《より》見《み》じゃないの」
 と、多江は言った。
 初《はじ》めて、腹《はら》立《だ》たしげな響《ひび》きが、多江の口《く》調《ちよう》に混《まじ》った。
「——今、谷の人たちの中で、小学校へ行く年《ねん》齢《れい》の子はいないの?」
と、依子は訊《き》いた。
「いないわ。——幸《さいわ》いね」
と多江は、微《ほほ》笑《え》んだ。「いたら、先生、黙《だま》ってないでしょうね」
「当《とう》然《ぜん》だわ」
と、依子は言った。「教《きよう》師《し》として? 当り前のことじゃないの」
「おお怖《こわ》い」
と、多江はおどけて見せた。「ねえ、先生、恋《こい》人《びと》、いるの?」
「え?」
「きっと恋《こい》人《びと》と話すときも、そういう調《ちよう》子《し》なんだろうな」
 依子は仕《し》方《かた》なく笑《わら》った。
「でも——なぜ、そんなことになったの?」
「それは私《わたし》が話すより、母に訊《き》いてもらった方がいいわ」
 依子は肯《うなず》いた。
「みんな——谷《たに》を出て行かないの?」
「年《とし》寄《よ》りを置《お》いて? そんなこと、できないわ。行く所《ところ》もないし、お金もない」
「あなたのように働《はたら》きに出てる人も、他《ほか》にいるの?」
「何人かね」
 と、多江は言った。「でも、いいお金を取《と》れる仕《し》事《ごと》にはつけないわ」
「あなたの恋人は、ここの人?」
「恋人?」
 と、多江は訊《き》き返して、「ああ、あのアパートのね」
 思い出して頬《ほお》をちょっと染めた。
「聞かれちゃったんじゃ仕《し》方《かた》ないけど」
「聞いてないわ! 本当よ」
「むきになるところが愉《ゆ》快《かい》ね」
「大人をからかうもんじゃないわ」
 依子は、多江をにらんでやった。
「あの人とは、あの町で知り合ったのよ。ここの人じゃないわ」
「でも、仲《なか》がいいんでしょ」
「傷《きず》をなめ合ってるだけよ。——寂《さび》しさを忘《わす》れるためにね」
 多江の言い方は、まるで、生活に疲《つか》れた大人のそれだった。
「ねえ、あの叔《お》母《ば》さんといってた人——大沢和子さんだったわね。何か分って?」
 と、依子は訊いた。
「いいえ」
 多江は、首を振《ふ》った。「もう、みんな諦《あきら》めてるわ」
「諦めてる……。どうして?」
「戻《もど》るはずがないもの」
「どうして諦めるの? 捜《そう》索《さく》願《ねが》いでも出せばいいのに!」
「むだよ」
「そんなことないわ。現《げん》に、警《けい》察《さつ》の人が——」
 多江が依子の方を見た。
「何と言った?」
「刑《けい》事《じ》さんよ。県《けん》警《けい》の。——私に声をかけて来たわ」
「何のことで?」
「分らない。でも、あの町のことを調《しら》べるんだ、って」
「警察が……」
 多江は、固《かた》い表《ひよう》 情《じよう》で、「でも、信《しん》用《よう》できないわ」
 と言った。
「なぜ?」
「今までだって、ずいぶん私《わたし》たちが悪《わる》者《もの》にされて来たのよ。何かある度《たび》に、『谷の奴《やつ》ら』だって」
「警《けい》察《さつ》は?」
「河村は、角田の飼《かい》犬《いぬ》だわ。——それに、事《じ》件《けん》といっても、この間のような、殺《さつ》人《じん》まではなかったもの」
「でも、それなら——」
 と、依子は熱《ねつ》心《しん》に言った。「却《かえ》って、いい機《き》会《かい》じゃないの! 殺人——それも子《こ》供《ども》よ。県《けん》警《けい》だって、放ってはおけないのよ。この機会に、実《じつ》態《たい》をはっきり訴《うつた》えたら?」
 多江は、ちょっと肩《かた》をすくめた。
「簡《かん》単《たん》に言うけどね……」
「ええ。そうね。——ごめんなさい」
 依子は、声を低《ひく》くした。「局《きよく》外《がい》者《しや》の私が、訳《わけ》も分らずに——」
「そうじゃないのよ」
 多江は、依子の手を握《にぎ》った。「ありがたいと思ってるの。でも、現《げん》実《じつ》は、そう単《たん》純《じゆん》じゃないわ」
「ええ」
「みんな谷から出るのを恐《おそ》れてる。——ひっそりと息《いき》をつめて暮《くら》してるのよ。勇《ゆう》気《き》を出せといったって、とてもむずかしいわ」
 それは、依子にも何となく分った。
「でも、このままにしておいたら——」
 と、依子が言いかけたとき、
「しっ!」
 と、多江が鋭《するど》く言った。「誰《だれ》か来たわ」
 二人は腰《こし》かけていた岩《いわ》の陰《かげ》に、かがみ込んだ。
「——誰かしら?」
「こんな所《ところ》へ来る人、ほとんどいないんだけど」
 と、多江は言った。
 足音が、近《ちか》付《づ》いて来た。
「一人じゃないわ」
 と、多江が、低《ひく》い声で言った。
 なるほど、依子の耳にも、二人らしい足音が届《とど》いて来た。
「——おい、少し休もう」
 と、男の声がした。
「だらしねえな、頑《がん》張《ば》れよ」
 言い返《かえ》した方の声は、依子にも聞き憶《おぼ》えがある。——町の雑《ざつ》貨《か》屋《や》の息《むす》子《こ》だ。
「だけど、重《おも》いぜ」
「早くしねえと、帰りが真《まつ》暗《くら》になるぞ」
「そうか……。それもいやだな。よし、行くか」
「後は下りだ」
「帰りにゃ上りだぜ」
「荷《に》物《もつ》はないよ」
 ——二人の男が、また歩き出した。
「——何かしら?」
 と、依子は言った。
「分らないわ。何かを捨《す》てに行くのか……。でも、こんな山の奥《おく》まで、なんで」
 依子は、そっと頭を出した。
 二人の男たちの姿《すがた》が、木々の間に、見え隠《かく》れしている。
 依子は青ざめた。
「見て!」
「え!」
「あれを——」
 多江も頭を出し、そして短《みじか》く声を上げた。
 二人の男がかついでいるのは、棺だった。
 多江は青ざめていた。
「——きっと、叔《お》母《ば》さんだわ」
「そう思う?」
「でなきゃ、こんな山《やま》奥《おく》に、埋める必要ないでしょう」
「そうね」
「今ごろどうして……」
「きっと、どこかへ一《いつ》旦《たん》埋めてあったのよ。でも、私のことがあったりして、見《み》付《つ》からないように、きっと掘《ほ》り出して、埋め直すんだわ」
 依子は、多江を見た。「——後をつけましょう」
「え?」
「どこへ埋めるか、見《み》届《とど》けるのよ」
 多江が肯《うなず》いた。ためらいはなかった。
 依子と多江は、岩《いわ》陰《かげ》から忍《しの》び出て、遠くに見える男たちの後をつけ始《はじ》めた。
 やがて、黄《たそ》昏《がれ》の気《け》配《はい》が、山の影《かげ》の中に、這《は》い入って来る。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%