日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

殺人はそよ風のように02

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:1 アイドルを追え 車は、少しスピードを落とした。 「今日は成功だったな」 と、永《なが》原《はら》幸《ゆき》男《お》は
(单词翻译:双击或拖选)
 1 アイドルを追え
 
 車は、少しスピードを落とした。
 「今日は成功だったな」
 と、永《なが》原《はら》幸《ゆき》男《お》は言った。
 まだ息を弾《はず》ませている。ホールの裏口から車まで走っただけなのだが、それでもくたびれてしまうのだ。
 四十七歳《さい》という年《ねん》齢《れい》のせいもあったし、また、目が回るほど忙《いそが》しいのに、七十キロから一向に減ろうとしない体重のせいでもあった。
 「でも、この次はもう、この手はきかないよ」
 と言ったのは、助手席に座ったもう一人の男だ。
 「明日のことは、また明日考えるさ」
 と、永原は肩《かた》をすくめる。
 「一度やってみたい方法があるの」
 後部座席の左側に座ったア《ヽ》イ《ヽ》ド《ヽ》ル《ヽ》が言った。
 「どんな手だい?」
 と、永原が訊《き》く。
 本気で訊いている、という口《く》調《ちよう》ではない。訊いてやらないと、アイドルの機《き》嫌《げん》が悪くなるからである。
 「お客と一《いつ》緒《しよ》に正面から出るのよ」
 「そいつはいいな。しかし、もしばれたら、命も危いよ」
 永原はそう言って笑った。
 アイドルは、別に反論するでもなく、窓の外へと目をやった。——その額には、まだ汗《あせ》が乾《かわ》き切らずに光っている。
 大《おお》内《うち》朱《あき》子《こ》は、マンションのバスルームはちゃんと掃《そう》除《じ》してあったかしら、と考えていた。——確か、出て来るときに覗《のぞ》いたはずだけど。でも、考え出すと自信がなくなってしまう。
 考えれば考えるほど、忘れたような気がして来るのだ。これは朱子の持って生まれた性格というものだった。
 大内朱子は、アイドルではない。後部座席の真中に座っている。
 ——あの浮《ふ》浪《ろう》者《しや》が、「男が三人」と思ったのは、朱子が、ジャンパーにジーパンという格《かつ》好《こう》をして、髪《かみ》も、ちょっとした男の長《ちよう》髪《はつ》よりも短く、切ってしまっていたからである。
 それに、朱子は、もともと男っぽい、肩《かた》の張った、いかつい体つきをしていた。
 大内朱子は十九歳《さい》だ。——このアイドルの「付《つき》人《びと》」をしている。
 アイドルは、いつの間にかまどろんでいるようだった。——今、おそらく、日本人で、ごくたまにでもテレビを見、週刊誌の車内吊《づ》り広告を眺《なが》める人間なら、知らない者はまずない顔だった。
 たとえ、中年過ぎの男たちが、彼女と他《ほか》のアイドルの見分けがつかなくても、少なくとも名前ぐらい、知らぬはずはなかった。
 星《ほし》沢《ざわ》夏《なつ》美《み》。——これがアイドルの名である。芸名らしい名だが、実は本名だった。
 十七歳。あと一か月足らずで、十八になる……。
 「明日は久しぶりに休みだよ」
 助手席の男が言った。永原よりも大分若いくせに、頭はかなり薄《うす》くなっている。
 星沢夏美は、返事をしなかった。
 「——寝《ね》ちゃったみたいだ」
 と、永原がそっと首をのばして、様子をうかがう。
 「そうか。——でも、朱子君、ちゃんと風《ふ》呂《ろ》に入るように、夏美に言ってくれよ」
 「はい」
 と、朱子は答えた。
 朱子は、ちゃんと心得ている。いちいち言われるまでもなく、夏美はお風呂に入るだろう。
 ともかく、何が好きといって、お風呂くらい、夏美の好きなものは、他にないのだから。
 朱子が夏美の付《つき》人《びと》になって、もう二年たつ。その頃《ころ》、まだ夏美はやっと少し名前を知られかけた新人に過ぎなかった。
 だから、朱子の仕事もそれほど忙《いそが》しくはなく、夏美の仕事がない日には、適当に休みも取れた。それが今は——この前、いつ休みを取ったか、思い出せないくらいだ。
 「——眠《ねむ》っちゃったわ、本当に」
 と、朱子は、夏美が軽く寝《ね》息《いき》を立て始めたのを聞いて、言った。
 話をするのが面《めん》倒《どう》で、タヌキ寝入りをしているのか、それとも本当に眠り込《こ》んでしまったのか、それが分かるのは朱子ぐらいのものだろう。
 「今週はそんなに詰《つ》まってなかったんじゃないか?」
 と、助手席の男が言った。
 朱子は、この男が嫌《きら》いである。一言で言えば、「やり手」ということになるのだろうか。名は安《やす》中《なか》といった。夏美の所属するプロダクションの常務である。
 社長が、いささか昔《むかし》風《ふう》の、「太っ腹」なタイプなのと好対照で、安中はいかにも計算高い「実利派」である。タレントを、稼《かせ》ぎ高の数字でしか見ていない。
 「でも、移動ばかりで、よく眠ってないんですよ」
 と、朱子は言ってやった。
 夏美の平均睡《すい》眠《みん》時間は四時間。それも、車内、機内での仮《か》眠《みん》を含めてである。今週は多少眠る時間があったと言っても、移動が多かったから、それだけ眠れたはずだ、というだけのことだ。
 「明日は一日寝《ね》かしといてやれよ」
 と、マネージャーの永原がのんびりと言った。
 「あんまり寝すぎても、却《かえ》って疲《つか》れが出るぞ」
 と、安中が言った。
 ともかく、人の言うことに、必ず文句をつけなければ、気の済《す》まない男なのだ。
 「明後日《あさつて》は早いんだっけ?」
 と、永原が手帳を出すと、車内灯を点《つ》ける。
 「君がよくつかんでなきゃ、仕方ないじゃないか」
 「分かってる。——八時、TBSか。六時半だな、迎《むか》えは」
 「私も分かってますから」
 と、朱子は言った。
 「ああ」
 永原は肯《うなず》いた。「君がしっかりしててくれるんで助かるよ」
 ——朱子は、さっきから気になっていた。小さなライトが、ずっと後ろをついて来るのである。
 オートバイか? いや、きっとミニバイクみたいなものだろう。偶《ぐう》然《ぜん》、同じ道を走っているにしては、間《かん》隔《かく》も、ほとんど変らない。
 「運転手さん」
 と、朱子は言った。「少しスピードを上げてみて」
 「はあ」
 運転手は、戸《と》惑《まど》ったような声で答えて、アクセルを踏《ふ》み込んだ。ぐい、と体がシートに引き寄せられる感じがする。
 「——スピードを落として」
 と朱子は言った。
 「どうしたんだ?」
 と、安中が振《ふ》り向く。
 「やっぱりそうだわ」
 と、朱子は言った。「後ろから誰《だれ》かついて来ます」
 永原が振り向く。
 「——あのバイクか。ヘルメットをかぶってるな」
 「ええ。さっきからずっとついて来てるんです」
 「よく気が付くね」
 永原は感心した、というよりは呆《あき》れたような調子で言った。
 「そうついて来れやしないさ」
 安中は、むしろ楽しそうだった。「運ちゃん、振り切ってくれよ」
 「分かりました」
 ぐん、とスピードが上がる。朱子は、振り向いて、後ろのライトが、どんどん遠ざかって行くのを見ていた。やがて見えなくなる。
 「——もう大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》だ」
 と、永原は息をついた。「やれやれ、物好きな奴《やつ》がいるもんだな」
 「その物好きな連中が、夏美のレコードを買ってくれるんだぜ」
 と、安中が言った。「——ああ、僕は次の交差点で降りる。ちょっと停《と》めてくれ」
 「何だ、会社へ戻《もど》るのかい?」
 「ポスターの打ち合わせで、デザイナーを待たせてるんだ」
 「じゃ、僕も降りるよ、Fホテルに寄りたいんだ」
 と、永原は朱子を見て、「後は大丈夫だね?」
 「ええ。構いません」
 朱子は、むしろホッとしている。永原はともかく、安中が一《いつ》緒《しよ》だと、何だか息が詰《つ》まるような気がするのだ。
 ——安中と永原が降りて、車の中が急に広くなったような気がする。
 車が、また走り出すと、夏美が、半分眠《ねむ》ったままの顔で、
 「着いたの?」
 と訊《き》いた。
 「まだ。寝《ね》てていいわよ」
 「ふうん……」
 夏美は、またすぐに寝入った。朱子の方へ寄りかかって来る。朱子は、膝《ひざ》の上に、そっと夏美の頭をのせてやった。
 マンションまで三十分はかかる。
 「運転手さん。少しゆっくりやって」
 と、朱子は言った。
 ——大内朱子は、もともと、芸能界に憧《あこが》れて、この世界に入ったわけではない。
 芝《しば》居《い》が好きだ、というのならともかく、鏡を見れば、スターとかアイドルとかには無縁であることは、公平に見て明らかだった。
 朱子は、もともと看護婦になりたかったのである。それが、同じ「人の世話」でも、スターの付《つき》人《びと》になろうとは、自分でも思っていなかった。
 九州から一人で上京して、あてにしていた就職先が、何とその前日に倒《とう》産《さん》していると知ったとき、朱子は途《と》方《ほう》にくれてしまった。
 中学のときの同級生を尋《たず》ねて、朱子はあるTV《テレビ》局に行った。そこで、たまたま、永原に紹《しよう》介《かい》され、聞いたこともない新人の付人をやらないか、と言われたのだ。
 長くやるつもりは別になく、看護学校へ入るまでの、ほんのアルバイトのつもりだったのだが、周囲の状《じよう》況《きよう》の急変が、朱子をも巻《ま》き込《こ》んでしまった。
 朱子は、少し口を開き加減に、眠《ねむ》り込んでいる夏美を見下ろした。——そこにいるのは、華やかなスポットライトの中で歌っているアイドル、星沢夏美でなく、どこにでもいる十七歳《さい》の少女だった。
 
 車がマンションの地下の駐《ちゆう》車《しや》場《じよう》へと滑《すべ》り込《こ》んで停《と》まった。
 「ありがとう。——夏美さん、起きて」
 軽く揺《ゆ》さぶると、夏美は目を開いた。
 「——着いたの?」
 「そう。さ、早くお風《ふ》呂《ろ》に入って寝《ね》たほうがいいわ」
 「そう……」
 起き上がると、アイドルは大欠伸《あくび》をした。
 ——マンションの最上階、八階が二人の部《へ》屋《や》である。表《ひよう》札《さつ》は出ていない。
 都心のマンションのせいか、普《ふ》通《つう》のサラリーマンはあまりいないようで、他《ほか》の住人に出会うことは滅《めつ》多《た》にない。
 「——目が覚めた?」
 明りを点《つ》けて、朱子は言った。
 「何とかね」
 夏美は思い切り伸《の》びをした。
 「何か食べる? お風《ふ》呂《ろ》に入ってる間に、買って来ようか」
 「そうねえ……。脂《あぶら》っこいものはいや。お茶《ちや》漬《づけ》でも食べたい」
 無理もない。外へ出れば、弁当や丼《どんぶり》物《もの》ばかりで、脂っこいものに、うんざりしているのだ。
 「じゃ、冷《れい》凍《とう》のご飯でも買って来ようか」
 と、朱子は、夏美のドレスの背中を開けながら言った。
 「お願い。海苔《のり》とお茶でアッサリと食べたい」
 「じゃ、買って来ておくわ。のんびりお風呂に入っていてちょうだい」
 「一時間はたっぷり入るから」
 と言って、夏美は笑った。
 やっと目が覚めた、という様子である。多くのファンを魅《ひ》きつける笑《え》顔《がお》が、そこにあった。
 「お湯を入れて行くから」
 と、バスルームのほうへ朱子が行きかけると、
 「自分でやるからいいわ」
 と、夏美が止めた。「買物に行って来て。遅《おそ》くなるわ」
 「そう?——じゃ、着《き》替《が》えはいつもの所」
 「うん、分かってる」
 と、夏美は肯《うなず》いた。
 朱子は財《さい》布《ふ》を手に、部《へ》屋《や》を出た。鍵《かぎ》をかけて、エレベーターのほうへと歩き出す。
 ——場所柄《がら》だろうが、二十四時間開いているスーパーが、近くにあって、夜中まで結構繁《はん》盛《じよう》している。
 「明日のおかずもいるか……」
 一階のロビーを抜《ぬ》けて、顔見知りのガードマンへ、
 「今晩は」
 と声をかけ、外へ出る。
 少し、風が出ていた。
 寒い、というほどでもないが、ちょっと足を早めた朱子は、マンションの向かい側に置かれたミニバイクに気付かなかった。
 
 朱子が通りを急ぎ足で渡って行くのを、星沢夏美はカーテンの隙《すき》間《ま》から見ていた。
 玄《げん》関《かん》のほうへと歩いて行くと、チェーンをかけ、居間へ戻《もど》った。
 セーターとスカートを身につけて、大きく息をつく。
 それから、隣《となり》の部《へ》屋《や》へ入って、明りを点《つ》けた。——夏美の寝《しん》室《しつ》である。
 朱子の手で、きれいに片付けられていた。十七歳《さい》の女の子らしい、可愛《かわい》い部屋である。
 歌手の部屋らしいものといえば、アップライトのピアノ、そしてオープンリールのテープデッキ。スピーカーが、ベッドの両サイドに置かれている。
 夏美は、本《ほん》棚《だな》の下のほうへ身をかがめると、オープンリールのテープを取り出した。
 慣れた手つきで、デッキにかける。アンプの電源を入れて、ボリュームを上げて行くと、スピーカーから、かすかにブーンという音が聞こえて来た。
 テープデッキのプレイボタンを押《お》すと、低いテープノイズがスピーカーから聞こえて来る。少しボリュームを絞《しぼ》った。
 低い絃《げん》の響《ひび》きが、部《へ》屋《や》に広がって行った。
 木《もつ》管《かん》楽《がつ》器《き》が、哀《あい》愁《しゆう》を感じさせる旋《せん》律《りつ》を奏《かな》でると、夏美は、そっとピアノの蓋《ふた》を開け、椅子《いす》に腰《こし》をおろした。
 絃《げん》楽《がく》が、さざ波のような音型で伴《ばん》奏《そう》をつける、その上に、夏美の指が、木管の吹いたメロディを描《えが》いて行った。
 夏美の顔からは、幼なさが消えていた。じっと目を閉じたまま、右手だけで、旋律を弾《ひ》いて行く表情は、ひどく大人《おとな》びて見える。
 ——しばらく進んだところで、手が止まった。
 夏美は、立ち上がると、テープデッキへと歩み寄り、テープを止めて、巻《ま》き戻《もど》した。そして、また初めから、テープを回し始めた。
 だが、今度はピアノの前には座らない。部屋の中央へと進み出ると、真っ直《す》ぐに立って、両手を胸の前でかるく握《にぎ》り合わせた。
 心もち、顎《あご》を引いて、瞼《まぶた》を軽く閉じる。
 木管のメロディが、ゆるやかに部屋をめぐり始めると、夏美は大きく息を吸い込《こ》んだ……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%