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死体は眠らない06

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:6 身《みの》代《しろ》金《きん》要求 「ユ、ユーカイですか?」 と、吉野は、しばらくポカンとしてから、言った。「ユーカ
(单词翻译:双击或拖选)
 6 身《みの》代《しろ》金《きん》要求
 
 「ユ、ユーカイですか?」
 と、吉野は、しばらくポカンとしてから、言った。「ユーカイというと……誘うという字と……それから何ていうんでしょう、『誘拐』の『拐』という字を書く……」
 何だか大分混乱している。
 「そう。要するにさらわれたのさ」
 と僕は言った。
 「そ、それは大変です! すぐに一一〇番を——」
 「待った! いいか、吉野、落ち着いてよく聞いてくれ」
 僕は、電話へ駆け寄ろうとする吉野をあわてて押し止め、ソファに座らせた。
 「社長! 犯人の身代金の要求は?」
 「それはこれからだ」
 「ではすぐに電話にテープをしかけて——」
 「あわてなくてもいい」
 「ですが……いつ頃ですか、さらわれたのは?」
 「それもこれからだ」
 「なるほど。では早速手を打って——」
 と言いかけ、「今……何とおっしゃいました?」
 と訊き返して来た。
 「まあ落ち着け。吉野、君は僕のためによく働いてくれている」
 「恐れ入ります」
 「実際、美奈子やその家族の用にまでかり出されて、たまったもんじゃなかろう」
 「はあ。——いえ、決してそんな——」
 「いいから聞け。——実は君に頼みがあるんだ」
 いつしか、僕は吉野を「お前」でなく、「君」と呼んでいた。
 「どうぞ何なりと」
 「美奈子を誘拐してもらいたい」
 「さようですか。では早速重役会にはかって——」
 「聞いてるのか?」
 「ゆ、誘拐? 私がですか?」
 吉野は目を丸くしてひっくり返りそうになった。
 「実はね、美奈子は家を出てしまったんだ」
 僕はため息をついてみせた。
 「どちらへ行かれたんですか」
 「それが分りゃ苦労はない」
 「はあ……」
 「男と二人で出たんだ」
 「すると……ダンスパーティにでも?」
 僕はジロッと吉野をにらんだ。
 「鈍《にぶ》いやつだな! 恋人ができて駆け落ちしたんだ」
 「駆け落ち! 奥様が? 誰とですか?」
 「分らない。しかし前から気付いてはいたんだ」
 僕はメロドラマの主人公よろしく、深刻な顔で肯いてみせた。「相手が誰かなんて、調べさせたりすりゃ、こっちが惨《みじ》めなだけだからね」
 「ごもっともです」
 「ともかく美奈子は出て行ってしまったんだ……」
 僕は思い入れたっぷりに言った。この分なら、その内映画界に誘《さそ》われるかもしれない、なんて思いも頭をかすめた。
 「そこで君に相談なんだよ」
 「はあ……」
 「僕としても、妻が他の男と逃げたなんてことは知られたくない。分るだろう? たちまち社内で評判になって、出社しても、みんなが僕の方を見て忍《しの》び笑いをしたり、そっと囁き合ったりする。——そんな目にあうのはごめんだよ」
 「分ります」
 と、吉野は熱心に肯く。
 この単《たん》細《さい》胞《ぼう》が! 僕は続けて、
 「だから、一つ、美奈子が何者かに誘拐されたという狂《きよう》言《げん》をやろうというんだ。それならみんな僕に同情こそすれ、馬鹿にしたりはしない」
 「なるほど」
 「その役を君に頼みたい」
 「わ、私がですか?」
 「何も心配はいらない。実際には美奈子はどこかの男と二人で旅の空だろう。君はただ誘拐犯のふ《ヽ》り《ヽ》をして、脅《きよう》迫《はく》電話をかけてよこせばいい」
 「すると……身代金の要求でも?」
 「そうとも。でなきゃ脅迫にならないじゃないか」
 「それもそうですね」
 「いいか」
 僕は、吉野の肩へ手を置いた。「こういう段取りにしたい。——僕はこのところ美奈子とは寝室を別にしていた」
 「それは感心しません。離《り》婚《こん》の噂《うわさ》はたいていそういうところから広まります」
 「本当のことじゃない! 話の上でだ。つまり、君から美奈子の父親が死んだという知らせを聞いて、彼女を起こしに行ってみると、彼女の姿がない。探してみたが、どこにもいない」
 「私も捜しましょうか?」
 と立ち上りかける。
 「話の上でだ!——座って。そこへ君が来る。そのとき犯人から、美奈子を誘拐したという第一の電話が入る。君は急いで警察へ連絡する」
 「私が私に電話をかけるんですか?」
 「第一の電話なんて、僕の話だけでいい。問題は昼頃にかかる第二の電話だ」
 「それが私のかけるやつで——」
 「そう。君は、美奈子の父の葬《そう》儀《ぎ》の手配があるから、と、昼前にここを出ろ。そしてどこか外からここへ、声を変えて脅迫電話をかけるんだ」
 「そう簡単に声が変りますか?」
 「ハンカチで送話口をくるむかどうかすりゃいいさ。あんまり長く話すな。逆探知されるぞ」
 「はあ。——で、どう脅迫すりゃいいんでしょう?」
 「好きでいいさ。別に本当に身代金を払うわけじゃないんだ。誘拐が事実と思わせればそれでいいんだからな」
 「じゃ、場所、時間は適当に」
 「うん、任せる」
 「お値段の方はいかほどにしておきましょうか?」
 お中元の買物か何かと間《ま》違《ちが》えているらしい。
 「好きにしろよ」
 「では……三十万円では?」
 「おい! 身代金が三十万? 月給を決めるのとは違うんだぞ。せめて三千万ぐらいはいえよ」
 「ではいっそ三億円とか」
 「それじゃ多い。——一応五千万ということにしておこう」
 「はあ、五千万ですね。税込みですか、それとも手取りで?」
 生《き》真《ま》面《じ》目《め》な人間も困りものだ。
 「——しかし、社長」
 一通り打ち合せを終ったところで、吉野が言った。「そうやって……でも実際は奥様はどこかに旅をしておられるんでしょう?」
 「それともホテルにいるか。その辺は分らないよ」
 「ニュースを聞いたらびっくりなさるでしょう」
 「誘拐事件は報道しないよ。それにびっくりしたって一向に構わないさ。向こうが弱い立場だからな」
 「ははあ。しかし、身代金を持って行く、真似ぐらいしなきゃならないでしょう。それでも犯人が現れなくて、それきり連絡もないというのはおかしくありませんか?」
 「誘拐犯人が何を考えるかなんて、こっちには分りゃしないさ。警察が首をひねっても、別にこっちが説明してやる必要はないんだからな」
 「なるほど」
 「分ったか?」
 「よく分りません」
 僕は、やや絶望的な気分になったが、そこは何とか自らを励《はげ》まして、
 「よし! ともかく警察へ電話だ!」
 と力強く——正確に言うとやけっぱち気味にだが——言った。
 
 「ご心配ですね」
 と、その男は僕に心から同情を寄せてくれているらしかった。
 「恐れ入ります」
 僕は、妻を誘拐されている夫としてふさわしく見えるように、ヒゲも当らず、多少、憔《しよう》悴《すい》した顔で言った。
 「私は添《そえ》田《だ》といいます」
 刑《けい》事《じ》にしては愛想のいい男だった。いや、僕だって、そう刑事に知り合いはないから、人相の悪い、無愛想な刑事は、小説やTVの中のもので、実際には、みんなこの程度は愛想がいいのかもしれない。
 添田という刑事、年《ねん》齢《れい》は四十そこそこであろう。きちんとした身なりで、刑事イコール貧《びん》乏《ぼう》くさいというイメージとは無《む》縁《えん》であった。
 「犯人は、昼過ぎにまた電話すると言ったのですね?」
 「ええ。警察へ知らせると命がない、とも。でも……やはりこれは市民の義務ですから」
 「信《しん》頼《らい》を裏切らないように努力しますよ」
 と添田刑事は肯いた。
 居間は大変だった。刑事たちが、電話にテープレコーダーを取り付けたりする仕事にかかっていた。
 「おい、まだか?」
 と添田刑事が声をかける。
 「もう大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》です。いつかかって来ても、テープに取れますよ」
 「OK。では待ちましょう」
 「何もお構いできなくて申し訳ありません」
 と僕は言った。「何しろ、使用人がみんな休みを取っているものですから」
 「いや、どうぞご心配なく」
 と添田刑事はソファに腰をおろした。
 「——社長」
 と、吉野が声をかけて来た。
 「ああ、君はもうあっちへ行ってくれないか。僕と美奈子のことは、病気とか何とか、巧く話してくれ」
 「かしこまりました」
 吉野は馬鹿丁寧に頭を下げて、出て行った。
 「——奥さんも不運ですね。お父さんをなくされた上に……」
 「全くです」
 「誰かお心当りはありませんか。最近この辺をうろついていたとか……」
 「さあ。僕は何も気付きませんでしたが……」
 「個人的に奥さんやあなたを恨《うら》んでいる人はありませんか?」
 「まあ社長業なんて、多少は人に恨まれるものですよ」
 と僕は肩をすくめて見せた。「家内はどうでしょうか……。ともかく、誰からも愛される性格で、家内を恨むなんて人間は、よほど狂《くる》ってるとしか思えません」
 いかに演技とはいえ、ここまで言うのは、容易なことではなかった。やはり僕は根が正直なのだろう。
 その後、添田刑事は、僕に美奈子のことをあれこれと訊いた。細かいことばかりで、大して重要でもないようなことだったが、せっせとまめにメモしている。
 よほど暇なのか、それとも電話を待つ緊《きん》張《ちよう》を少しでも和らげるためだったのかもしれない。
 吉野が出て行って三十分が過ぎた。
 「もうお昼ですな」
 と添田刑事が言ったとたん、電話が鳴った。居間にいた刑事たちが一《いつ》斉《せい》に色めき立つ。
 「——落ち着いてしゃべって下さいよ」
 と、添田刑事は言った。「——さ、どうぞ」
 僕はそっと受話器を上げた。
 「もしもし」
 と、僕が言った。
 「池沢さんだね」
 低い男の声。びっくりした。吉野の奴、やるじゃないか!
 「そうだ」
 「奥さんは預かってるぜ」
 「要求を言え」
 相手が低く笑う。その声は正に、誘拐犯らしい、不気味なものだった。
 こいつはアカデミー賞ものだ。
 「金を用意しろ」
 「今日は土曜日で、もう銀行は——」
 「分ってるさ。こっちは急がねえ。月曜日に一億円、揃えてもらおう」
 「一億?」
 吉野の奴、話が違うぞ! 仕方ない。こっちが合せる他はないのだ。
 「分ったよ」
 「その先はそれからだ。また夕方に電話するぜ」
 電話は切れた。
 「だめだな」
 と添田刑事は首を振った。「時間が短くて逆探知は無理です」
 僕は、受話器を戻して考え込んだ。今のは、本当に吉野の声だろうか……。
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