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霧の夜にご用心05

时间: 2018-09-28    进入日语论坛
核心提示:一美の秘密 「しっかりして!」 私は、床に倒れた小浜一美を抱《だ》き上げて、小さなベッドのほうへと運んで行った。 どうな
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 一美の秘密
 
 「しっかりして!」
 私は、床に倒れた小浜一美を抱《だ》き上げて、小さなベッドのほうへと運んで行った。
 どうなっちゃってるんだ?
 私とて、あまり力のあるほうではないので、いくらやせたとはいえ、小浜一美の体を運んで行くのは、一苦労だった。
 「やれやれ、参った……」
 私は呟《つぶや》きながら、洗《せん》面《めん》所らしきドアを開けた。風《ふ》呂《ろ》はついていなくて、シャワーだけの部《へ》屋《や》だ。
 私はコップに水をくむと、ぐいと一口飲んだ。少し気持を落ち着かせるには、水を飲むのが意外と効《き》くのである。
 タオルを水に浸《ひた》して、軽くしぼり、ベッドのほうへ戻《もど》った。小浜一美は、苦しそうな息をしている。
 濡《ぬ》れタオルで顔を拭《ふ》いてやると、彼女の瞼《まぶた》が微《かす》かに震《ふる》えて、少しして目を開いた。
 私はホッとした。
 「——平田さん」
 彼女は弱々しい声で言った。
 「大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》? 医者を呼《よ》んでもらおうか?」
 「いいえ、いいの」
 と首を振って、「何でもないのよ」
 「何でもないって……急にぶっ倒れて、何でもないってことはないだろう」
 「原因は分ってるもの」
 「どこが悪いんだい?」
 小浜一美は、ちょっと恥《は》ずかしそうに唇《くちびる》の端《はし》で微《ほほ》笑《え》んだ。
 「この二日間、何も食べてないの……」
 「何だって?」
 私は唖《あ》然《ぜん》とした。「どうして? 外へ出ればいくらでも食べる所があるじゃないか」
 「お金がないのよ。もう全然。——このままここにあと何日いられるかしら、と考えてたの。そしたらあなたが来てくれて……。ホッとして、気が緩《ゆる》んだのね」
 「待ってなさい。今、食べる物を買って来てあげる」
 私は小浜一美を部屋に残して、急いで外へ出た。ホテルから少し行くと、大衆食堂があって、折《おり》詰《づめ》の安い弁当を売っている。これでも、ないよりはましだろうと、二つ買い込み、ホテルへ取って返した。
 ——小浜一美は、弁当の一つをアッという間に平らげて、今度は、空《すき》っ腹《ぱら》に急に食べたせいか、腹《ふく》痛《つう》でまたベッドに横になったが、
 「こんな痛《いた》さなら、大歓《かん》迎《げい》だわ」
 と、笑《わら》って言った。
 少し落ち着いて来ると、私は彼女に、気になっていたことを訊《き》こうと思った。つまり、なぜ急に姿《すがた》をくらましたか、である。
 「ねえ、小浜君——」
 と口を開きかけると、
 「平田さん」
 彼女のほうがそれを遮《さえぎ》った。「山口課長から——何か預かってない?」
 「ああ、そうか。いや、君がいきなり倒れたりしたんで、忘れてたよ」
 私は、山口課長が手渡してくれと言った封筒を出した。「何か、お金と手紙が入ってるって——」
 彼女は、その封筒を引ったくるように取って、封を切ると、お金がいくら入っているかなど、気にもせず、手紙を出して開くと、じっと目を見開いて、読んで行った。
 手紙は二枚《まい》あったが、一枚目だけしか書いてはいないようで、小浜一美は、すぐに読み終った。
 その表情からは何も読み取れなかった。ついさっきまでの、多少和《なご》んだ顔つきが、固く、凍《こお》りついたような無表情に変っていたのだ。
 「小浜君……」
 そっと言ってみると、彼女はその手紙を私へ差し出した。少しためらってから、受け取る。
 山口の、なぐり書きに近い悪筆である。
 〈小浜君。
 心配しているよ。体のほうは大丈夫か?
 ちょうど悪い時期にとんでもないことになった。僕《ぼく》は反対したのだが、結局社長の一存で君は解《かい》雇《こ》されることになってしまった。
 僕には家族がある。会社をクビになったら、女《によう》房《ぼう》子供を食べさせていけなくなる。
 今の僕にできるのは、同封の、わずかな金だけだ。これでも女房に知られたら、大変なことになる。
 どうか察してくれ。
山口〉
 弁解と逃《に》げ口上のみで成り立っているような手紙だった。
 「——小浜君、君はなぜ急に姿をくらましたんだ?」
 私はやっと訊いてみることができた。
 「子供を堕《お》ろしてたの」
 と、彼女は言った。
 私は、何も言えなかった。——しばらく間《ま》を置いて、彼女は続けた。
 「山口課長の子供よ。あの日、帰ってみると、山口課長から電話で、『明日、医者が待ってるから』って連《れん》絡《らく》して来たの。もう大分前から、あの人が医者を見付けると約《やく》束《そく》してくれてたの」
 「それでお金もおろして……」
 「そう。でも大してもってなかったの。預金をおろして、やっと費用になるくらいだったのよ」
 「でも、君は地味な暮《くら》しをしてたから……」
 「大分貯《た》めてたわ、一時はね」
 と、彼女は自分に向って冷ややかな笑いを浴《あ》びせるように、「全部、山口課長に貢《みつ》いじゃったのよ」
 「課長に?」
 「あの人、株に手を出して、定期預金なんかをゼロに近いくらいまで減らしてたのね。——今思えば、それがあるから私に言い寄って来たんだと思うわ。でも……そのときは私にも分らず……」
 小浜一美は、唇をかんだ。目に悔《くや》し涙が浮《う》かんでいたが、それが溢《あふ》れ出るのを、必死でこらえているようだった。
 「ベッドの中で頼《たの》まれれば、いやとは言えないわ。どんどん私の預金が山口課長の口座へ振り込まれて行って。……残ったのは、中絶費用ぐらいだったの」
 「それも課長は出さなかったのかい?」
 「妊《にん》娠《しん》したのは、私が大丈夫だと言ったからだって言うの。まあ——私も、出してもらいたくもなかったけど」
 「ひどいじゃないか、それは、いくら何でも!」
 「ありがとう。でもね、普《ふ》通《つう》のサラリーマンが、小《こ》遣《づか》いの他に五万も十万も用意するって、大変なことよ。だから私も自分で出そうと思ったの」
 「しかし……」
 「ともかく、計算違《ちが》いだったのは、ちょっと妙《みよう》な医者にかかったものだから、料金は倍もとられて、ほとんどお金が残らなくなっちゃったのよ」
 「それで二日間、飲まず食わずか」
 「水は飲んだけど……」
 と、小浜一美は、微笑みながら言った。「もう一つは、後の具合が良くなかったことね」
 「大丈夫かい、そんな……」
 「ともかく、この安ホテルへ着いて、それきり微《び》熱《ねつ》を出して寝《ね》込《こ》んでしまったの。三日間ベッドから出られなくて……。やっと起き出してみると、あの事件でしょ。私が指名手配されてる。びっくりしたわ」
 「警《けい》察《さつ》へ行けばよかったんだ」
 「私もよほど、そうしようと思ったわ。でも、そうなると、なぜ急に行方《ゆくえ》をくらましたと訊かれるでしょ。当然、山口さんの名も出るし、と思ったの」
 「出たっていいじゃないか」
 「まだ少し未練があったのよ」
 と、小浜一美は、天《てん》井《じよう》をじっと見上げた。
 「——それから、今度は高い熱が出たり、出血したりして、寝込んでしまって、三日前に、やっと山口さんへ電話したの」
 「ともかく体が大切だよ。ちゃんとした病院へ行かないと」
 「もう大丈夫、痛みも熱もないわ」
 と、肯《うなず》いて見せ、「困《こま》ったのは、手持ちのお金がなくなっちゃったことなの。支《し》払《はら》いをしなきゃ、出るに出られないし。——ともかく、山口さんが来るのを待ってたのよ」
 そう言って、小浜一美は寂《さび》しげに笑った。
 「結局、捨《す》てられたのよ、私」
 私は、何とも言いようがなかった。山口へ激《はげ》しい怒《いか》りを感じたが、しかし、今の私に、何ができるだろう?
 「これからどうするんだい」
 と、私は言った。
 「ともかく、そのお金で、ここの清算をするわ。もう出てくれと何度も言われてるの」
 「それから?」
 「それから?——そうね」
 小浜一美は、ベッドに起き上がって、ちょっと考えると、「ともかく残ったお金で、焼肉か何かを思い切り食べるわ」
 と言った。
 
 「——それにしても、桜田さんを殺したのは、誰《だれ》なのかしら?」
 ちょっとま《ヽ》し《ヽ》な、鉄板焼の店に入って、私と小浜一美は、二人で四人前の皿《さら》をペロリと平らげた。もっともその内訳は、三人分が彼女で、私は一人分だった。
 小浜一美は、手配されていることは承知しながら、一向に人の目を気にしなかった。
 却《かえ》って気にしていないので、人目をひくこともなかったのかもしれない。大体、人は新聞やTVでちょっと見ただけの、ぼやけた写真の顔など、どの程度、憶《おぼ》えているだろうか?
 「見当がつかないね」
 と私は言った。「しかし、いやな奴《やつ》だったからな。恨《うら》んでる人間はいくらもいたんじゃないのか」
 「それにしても、あの殺しかたは、まともじゃないわ」
 と、一美は首を振《ふ》った。
 「ともかく、警察はどうかしてる。あんなことぐらいで人を殺すものかどうか、考えりゃ分りそうなもんだ」
 「それは分らないわよ」
 と、一美は、最後の肉の一切れを口へ入れて言った。「——私だって、怒《ど》鳴《な》られてるときは、殺してやりたいくらい、憎《にく》らしかったものね」
 「でも、そりゃ当然だろう。それを実行するのは異常なのさ」
 「たぶん通《とお》り魔《ま》的な犯罪でしょうね」
 「きっとそうだろう」
 と、私は肯く。「男によほどひどい目に遭《あ》わされている女なんだよ」
 一美が、ちょっと目を見開いて、
 「どうして犯人が女だと思うの?」
 と訊いた。
 「いや——それは——」
 私は詰《つ》まった。つい口が滑《すべ》ってしまったのだ。
 「何となくさ。その……男を殺してるから女だろう、とね」
 我ながら、下手《へた》な言い訳だと思った。しかし、一美は妙だとも思わなかったようで、
 「そうかしら? まあ、女のほうが、いざとなると残《ざん》酷《こく》ですものね」
 と肯いた。私は、内心、そっと胸《むね》をなでおろした。
 「これから、どうするんだい?」
 と私は話を変えた。
 「そうね……」
 一美はちょっと考え込んで、「口の中がさっぱりしないわ。外へ出て、どこかでコーヒー飲まない?」
 と言った。
 山口に捨てられたことで、一美は却ってふっ切れたようだった。以前よりずっと明るい感じになり、よくしゃべり、笑った。
 誰が見ても、彼女のことを、指名手配中の殺人容《よう》疑《ぎ》者とは思わなかったに違いない。
 ——喫《きつ》茶《さ》店を出ると、もう大分夜がふけていた。
 「さて、どこへ行こうかしら」
 と、一美は言って深《しん》呼《こ》吸《きゆう》した。
 「友達とか、親《しん》戚《せき》とかは、いないの?」
 「だめよ! そんな人たちに迷《めい》惑《わく》かけられないわ」
 と一美は強い口調で言った。
 「警察へ行って事情を話したら?」
 と私は言った。「よく話せば納《なつ》得《とく》してくれると思うよ」
 一美はゆっくりと首を振った。
 「——どうして?」
 「山口さんのことはしゃべりたくないの、私……」
 「まだ山口に義理立てするのかい? あんな奴、自《じ》業《ごう》自《じ》得《とく》じゃないか」
 「違うのよ。山口さんの奥《おく》さんや子供さんたちのことを考えるのよ」
 私はなるほど、と思った。一美は続けて言った。
 「それに私の話を立証してくれる人はいないのよ」
 「だが、山口が——」
 「否定したら?」
 「手紙があるよ」
 「でも、あそこには、子供を堕《お》ろしたとは書いてないわ。『体は大丈夫か』っていうだけだもの。風邪《かぜ》ひきだっていいわけですものね」
 「じゃ、山口のほうは放《ほ》っとくつもりなのかい?」
 「どうしようもなければ話すけど……家族の人たちにはショックでしょうからね」
 「それじゃ、これから……」
 「分らないわ」
 一美は肩《かた》をすくめた。「ゆっくり一《ひと》晩《ばん》考えてみる」
 「今夜はどこに泊《とま》るんだい?」
 「どこか、また安宿を捜《さが》すわ」
 「僕の所へ来たら?」
 そう言って、私は自分でもびっくりした。
 びっくりしたのは一美のほうも同様だったようだ。
 「平田さん——」
 「い、いや——これはその——決して変な意味で言ったんじゃないよ!」
 私はあわてて言った。
 「分ってるわ。——いい人ね、平田さんって」
 彼女は微笑んで、「ともかく、今夜は一人でゆっくり考えたいの。お金も少しは余《よ》裕《ゆう》があるし。その先はまた考えるわ」
 と私のほうへ向き直って、
 「どうも色々とありがとう」
 と、手を出した。私は、その白い手を握《にぎ》った。
 一美は私の頬《ほお》に軽く唇を触《ふ》れた。そして、ちょっと手を握って、足早に去って行った。
 どこへ行くのか? どうすれば連絡が取れるのか。
 私は声をかけたかったが、彼女の後ろ姿は、それを拒《こば》んでいるようで、ついに、彼女の姿は見えなくなってしまった。
 少し風が出て来た。私は歩き出した。
 「また霧にならないかな……」
 ふと、私は呟《つぶや》いていた。
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