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怪指纹:奇怪的旅行者

时间: 2021-08-15    进入日语论坛
核心提示:異様な旅行者 間もなく、応接間の窓のブラインドやドアが元のように開かれ、宗像博士と、ソフト帽と外套(がいとう)の襟で顔を隠
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異様な旅行者


 間もなく、応接間の窓のブラインドやドアが元のように開かれ、宗像博士と、ソフト帽と外套(がいとう)の襟で顔を隠した異様の人物とは、偽物の川手氏をあとに残して、さりげなく川手邸を辞去した。ソフト帽と外套の男が、替玉と入れ替わった本物の川手氏であったことは云うまでもない。同氏は咄嗟に取纒めた重要書類と当座の着換えを詰めたスーツケースを、外套の袖に隠すようにして下げていた。
 二人は書生に送られて、玄関を出ると、門前に待たせてあった、宗像博士の自動車に乗り込んだ。
「丸の内の大平(たいへい)ビルまで」
 博士の指図に従って車は動き出した。
「近藤さん、サア、これからが大変ですよ。色々意外なこともあるでしょうが、驚いてはいけません。一切僕にお任せ下さるんですよ」
 博士は川手氏を近藤さんと呼ぶのだ。
「お任せします。だが、山梨県へ行くのに、丸の内というのは、どうした訳ですか。汽車は新宿駅からでしょう」
 と川手氏が不審を起して訊ねると、博士はいきなり口の前に指を立てて「シーッ」と制しながら、
「だから、お任せ下さいというのです。これから妙なことが幾つも起る筈ですから、びっくりなさらないように。みんなあなたを賊の目から完全に隠す為めの手段なのですからね。これから目的地へ着くまでに、探偵という商売がどんなものだか、あなたにもお分りになるでしょう」
 と、何か意味ありげに囁くのであった。
 それから二十分程のち、車は大平ビルディングの表玄関に横着けになった。博士は運転手に賃銀を支払うと、外套で顔を隠した川手氏の手を引くようにして、いきなりビルディングの中へ入って行ったが、エレヴェーターに乗ろうともせず、階段を登ろうともせず、ただ廊下をグルグル廻り歩いた末、いつの間にか建物の裏口へ出てしまった。
 見ると、そこの道路に大型の自動車が一台、人待ち顔に停車している。博士は川手氏を引っぱりながら、大急ぎでその自動車の中に飛込んだ。
「怪しい奴は見なかったか」
「別にそんなものはいないようです」
 運転手が振向きもせず答える。
「よし、それじゃ云いつけて置いた通りにするんだ」
 車は静かに走り出した。
 博士は手早く、窓のブラインドをおろし、運転席との境のガラス戸を閉め切って、さて、面喰っている川手氏の方に向き直った。
「近藤さん、これが尾行をまく、ごく初歩の手段ですよ。犯罪者が用いる籠抜(かごぬ)けというのはこれですが、探偵も犯罪者も、時には同じ手を使うものですよ。
 こうして置けば、仮令(たとえ)お宅から我々をつけて来た者があったとしても、或は又、あの自動車の運転手が敵の廻しものであったとしても、大丈夫です。
 しかし、普通一般の悪人を相手なればこれで十分ですが、なにしろあいつは神変自在の魔術師ですからね。まだまだ手段を施さなければなりません。今度は変装です。この運転手は僕の部下も同様のものですから、先ず心配はありません。この車の中で変装をするのです。探偵というものは、走っている自動車の中で、姿を変えなければならない場合が往々あるのですよ」
 博士は小声に説明しながら、予め車内に置いてあった大型のスーツケースを開いて、先ず髭()りの道具を取り出した。
「近藤さん、あなたの口髭を剃り落すのです。つまり川手さんの面影を出来るだけなくしてしまおうという訳です。構いませんか。では失礼して、お顔に手を当てますよ。サア、もっとこちらを向いて下さい」
 川手氏は博士の用意周到なやり口に、感に堪えて、されるがままになっていた。あの恐ろしい復讐鬼の目を逃れる為とあれば、口髭を落すくらい、何の惜しいことがあろう。
 車は予め命じられていたと見えて、徐行しながら、麹町区内の屋敷町をグルグルと廻っていた。
 左右と後部の窓のブラインドがおろしてあるので、通行者から車内を覗かれる心配はない。安全至極な移動密室である。
 博士はチューブから石鹸液を絞り出して、川手氏の鼻の下を泡だらけにしながら、手際よく剃刀(かみそり)を使って、見る見る髭を剃り落してしまい、剃りあとにメンソレータムを塗ることさえ忘れなかった。
「ウフフフ……、大変若返りましたよ。サア、これでよし、今度は僕の番です」
「エッ、あなたもその髭を剃るのですか。惜しいじゃありませんか。君まで何もそんなことをしなくっても」
 川手氏はびっくりして、博士の立派な三角型の顎髯を見た。この特徴のある美髯(びぜん)をなくしては、宗像博士の威厳にも関するではないか。
「ところが、この髯は一目で僕という事が分りますからね。いくら変装をしても、髯があっちゃ何にもなりません。
 しかし、剃り落すのじゃありません。剃らなくてもいいのです。これは僕の取って置きの秘密ですが、この際ですから、あなたにだけ明しましょう。ごらんなさい、これです」
 云うかと見ると、博士は揉上(もみあ)げのところを指でつまんで、まるで顔の皮を剥ぎでもするように、いきなりメリメリと引きむしり始めた。すると、驚くべし、あの立派な三角型の美髯が、見る見る顔を離れて行き、そのあとに(なめら)かな頬が現われた。次には口髭に爪を当てると、それも美しく剥がれてしまった。
「つけ髯とは見えなかったでしょう。これを作らせるのには随分苦心をしたものです。ある鬘師(かつらし)と僕との合作なんですがね。普通に註文したんでは、(とて)もこんな見事なものは出来ません。
 この三角髯は、僕の謂わば迷彩なのですよ。無髯(むぜん)の探偵がつけ髯で変装するということは、よくありますが、こんな髯武者の男が、逆に無髯の人物に変装出来るなんて、ちょっと考え及ばないでしょう。僕はそこへ目をつけて、逆手を用いることにしたのです。数年前から、(わざ)と目につき易いこんな髯を貯えたと見せかけ、宗像といえばすぐに三角髯を聯想するように、世間の目を慣らして置いて、実はその逆の効果を狙った訳です。ハハハ……、探偵というものはいろいろ人知れぬ苦労をするものですよ」
 川手氏は益々あっけにとられてしまった。なる程その道によっては、外部から想像も出来ない苦心のあるものだと、感嘆しないではいられなかった。
 博士は十年も若返ったような、のっぺりとした顔に微笑を(たた)えながら、今度はスーツケースの中から、変装用の衣服を取り出して、膝の前に拡げた。
「近藤さん、これがあなたの分です。ここで着更えをして下さい。あなたは印半纒(しるしばんてん)の職人になるのですよ。僕はその親分の請負師(うけおいし)という訳です」
 川手氏の分は、古い印半纒に紺の股引(ももひき)、破れたソフト帽子まで揃っている。博士の分は、茶色の古い背広に、廉手(やすで)なニッカーボッカー、模様入りの長靴下、編上靴、ソフト帽などで、いかさま土方の親分といった服装である。
 二人は車の中で、窮屈な思いをしながら、どうやら着更えを済ませた。今まで身につけていた着物や外套は、一つに纒めてスーツケースの中へおし込まれた。
「サア、これでよし。近藤君、これから口の利き方もちっと乱暴になるからね。悪く思っちゃいけないぜ」
 親分が云い渡すと、子分の川手氏は、急には答える言葉も見つからぬ様子で、破れソフトの下から、目をパチパチさせるばかりであった。
「もういいから、東京駅へ直行してくれ給え」
 博士が境のガラス戸を開けて、運転手に声をかけた。車は忽ち方向を変えて、矢のように走り出す。
 やがて、駅に着くと、二人は銘々のスーツケースを下げて、車を降り、遠方へ出稼ぎに行く職人といった体で、構内へ入って行った。
 博士は川手氏を待たせて置いて、三等切符売場の窓口に行き、沼津(ぬまづ)までの切符を二枚買った。
「オヤ、こりゃ沼津行きじゃありませんか。山梨県じゃなかったのですか」
 川手氏は切符を受け取って、けげん顔に訊ねる。
「シッ、シッ、何も訊かないという約束じゃないか。サア、丁度発車するところだ。急ごうぜ」
 博士は先に立って、改札口へ走り出した。
 発車間際の下関(しものせき)行き普通列車に間に合って、二人は後部三等車の片隅に、つつましく肩を並べて腰かけた。
 ゴットンゴットン各駅に停車して、横浜(よこはま)へついたのは、もう正午に近い頃であった。
「この次の駅で、少し危い芸当をやりますからね。足もとに気をつけて下さいよ」
 博士は川手氏の耳に口を寄せて囁いた。
 やがて保土(ほど)()。だが停車しても博士は別に立上ろうとするでもない。
「ここですか」
 川手氏が気遣わしげに訊ねると、博士は目顔で(うなず)いて、平然としている。一体どんな芸当をしようというのだろう。
 車掌の呼笛(ふえ)が鳴った。ガクンと動揺して汽車は動き始めた。
「サア、降りるんです」
 矢庭に立上った博士が川手氏の手を取って、後部のブリッジへ走った。そして、もう速力を出し始めている車上から、先ずスーツケースを投げ出して置いて、サッとプラットフォームへ飛び降りた。川手氏も手を引かれたままそれに続く。二人とも足がもつれて、(あやう)く転がるところであった。
「一体これはどうした訳です」
「イヤ、驚かせてすみませんでしたね。これも尾行をまく一つの手なんですよ。まさかここまであいつが尾行していようとは考えられませんが、ああいう敵に対しては、無駄と思われる程念を入れなければなりません。
 こうして置いて、今度は東京の方へ逆行するんです。若しあの汽車に我々の敵が乗っていたとすれば、まんまと一駅乗り越す訳ですから、いくらくやしがっても、もう我々のあとをつけることは出来ません。オオ、丁度向うから上り列車が入って来たようです。向うへ渡りましょう。ナアニ、切符は中で車掌に云えばいいんですよ」
 ガランとしたプラットフォーム。あたりに聞く人もないので、博士は普通の口を利いた。
 それから反対側のフォームに渡り、上り列車に乗って、二駅引返すと東神奈川(ひがしかながわ)である。二人はそこで下車して、今度は八王子(はちおうじ)への線に乗替え、八王子で再び目的の中央線に乗替えた。つまり、東海道線に乗ったと見せかけ、桜木町八王子線の聯絡を利用して、まんまと中央線に方向転換をしたのである。その大迂回(だいうかい)の為めに、乗替えの度に時間をとり、甲府(こうふ)へついた頃にはもう日が暮れかけていた。
「サア、やがてN駅です。今度こそ思い切った放れ業を演じなければなりませんよ。しかし、決して危険なことはありません。N駅の少し手前で汽車が急勾配(きゅうこうばい)にさしかかって、速力をウンとゆるめる場所があります。僕らはそこで土手の下へ飛び降りる予定なのです。これが最後の冒険ですよ。
 何もそれ程にしなくてもとお思いでしょうが、必ずしもあいつの尾行を恐れるばかりじゃありません。いくら変装をしていても、あなたはただ口髭がなくなっただけですからね。知っている人が見れば疑います。そして、どこの駅で降りたかということを記憶していて、人に話せば、それがどんなことで敵の耳に入らないとも限りません。
 当り前なれば、N駅で下車するのですが、丁度そのN駅に我々の知人が居合わさないと、どうして断言出来ましょう。中途で飛び降りるというのは、必ずしも無駄な用心ではないのですよ。それに汽車の速度が決して危険がないまでににぶることが、ちゃんと確かめてあるのですから、少しも心配は要りません」
 博士は川手氏の耳に口をつけて、こまごまと説明するのであった。幸い、日もとっぷりと暮れて、窓の外は真暗になっていた。冒険にはお誂え向きの時間である。
「ボツボツ、ブリッジへ出ていましょう。今に急勾配にさしかかりますから」
 二人は何気なく、鞄を下げて、後部のブリッジへ忍び出た。幸い、車掌の姿もなく、こちらを注意している乗客も見当らなかった。
 やがて、トンネルを知らせる短い汽笛が鳴り響くと、汽車の速度が目に見えて減じて行った。ボッボッボッという機関の音、黒煙に混って、火の粉が美しく空を飛んで行く。
「サア、ここです」
 博士の声を合図に、二つのスーツケースが闇の土手下へ投げ出された。つづいて博士の手が鉄棒を離れると見るや、まん丸な肉団となって、サーッと地上へ。印半纒の川手氏もおくれず、闇の中へ身を躍らせた。
 線路の土手の草の上を、二つのスーツケースと、二つの肉団とが、相前後して、コロコロと転がり落ち、下の畑に折り重なって倒れた。
 暫らくして闇の中に低い声が聞えた。
「大丈夫ですか」
「大丈夫です。飛び降りなんて、存外訳のないものですね」
 川手氏は数十年来経験せぬ冒険に、腕白(わんぱく)小僧の少年時代を思い出したのか、ひどく上機嫌であった。
「すぐその向うに細い村道(そんどう)があるので、そこを二三丁行って、右に折れた山裾に、例の城郭が建っているのです」
 二人は闇の中に、ムクムクと起き上り、(ちり)を払って、スーツケースを下げると、畑を踏んで村道に出た。
 雑木林を過ぎて、右に折れ、雑草を踏み分けて、こんもりとした森の中へ入って行くと、行手の木の間に、チロチロと燈火が見えた。
「あれですよ」
「なる程、山の中の一軒家ですね」
 しばらく行くと、森の切目から、夜目にも白い土蔵づくりの不思議な建物が見え始めた。なるほど城郭である。屋根のつくりにも、何かしら天守閣(てんしゅかく)を思い出させるようなところがある、高い土塀も見えて来た。なお近づくと、土塀の一ヶ所に、いかめしい門があって、その前に堀の跳橋(はねばし)が吊り上げられているのが、ぼんやりと、まるで夢の中の不思議な城門のように眺められた。
「変った建物ですね」
「お気に召しましたか」
 二人はそんな冗談を云い交して、低い笑い声を立てた。

    过了一会儿,客厅的百叶窗和门都像原来那样打开了,宗像博士和用礼帽和外套领子把脸遮盖起来的奇怪人物留下了假川手,若无其事地离开了川手公馆。不用说这个头戴礼帽身穿外套的男子便是与替身交换的真川手,他像是藏在外套袖子里似地提着塞有临时整理起来的重要文件和替换衣服的皮箱。
 
    两人由书生送着一出大门,便乘上了让它等在门前的宗像博士的汽车。
 
    “去丸内的大平大厦。”
 
    车子按博士的吩咐开动了。
 
    “近藤君,从现在开始可够你吃的,也许还有各种各样意想不到的事,可你不要吃惊,一切都交给我吧。”
 
    博士管呼叫近藤君。
 
    “交给您吧。可是,不是说去山梨县吗?去丸内是怎么回事?火车是从新宿站发车吧?”
 
    呼怀疑地问道。博士立即把手指竖在嘴前“嘘”的一声制住了他,好似有什么用意似地轻声说:“所以我不是说请你交给我嘛。今后会发生几件奇怪的事,所以您不要吃惊,因为都是为了把您从凶贼眼里完全隐藏起来的手段嘛。从现在起到抵达目的地,大概您也会知道侦探是个什么样的行当吧。”
 
    二十分钟以后,车子在大平大厦的大门口停了下来。博士向司机付了车费后拉着用外套掩着脸的川手的手,突然走进了大厦,但既不想乘电梯又不想爬楼梯,只是在走廊里来回转圈子,末了又不知不觉来到了大厦的后门口。
 
    只见那儿的马路上像是等什么人似的停着一辆大型汽车。博士拉着川手匆匆忙忙跳进了那辆汽车里。
 
    “有没有看到可疑的家伙?”
 
    “好像并没有那种人。”
 
    司机连头都不回地回答说。
 
    “好,那就按我事先吩咐的去做。”
 
    车子悄悄地跑了起来。
 
    博士很快地放下了车窗帘,关上了和司机之间的玻璃门,然后朝慌了神的川手转过脸来:
 
    “近藤君,这是甩掉尾巴的初步手段呀。犯罪者使用的所谓金蝉脱壳就是这东西,但侦揉和犯罪者有时候可都使用相同手段。这样,即使有人从府上开始一直跟踪着我们或者那汽车的司机是内奸,那也不要紧了。可是,如果对方是普通的坏人这就足够了,但因为那家伙是变化自如的魔术师,所以还必须采取许多手段。这回是化装。这司机等于是我的部下,所以您不必担心。就在这车里化装。当侦探的往往要在开着的汽车里变个样子。”
 
    博士一边小声说明一边打开事先放在车里的大型手提箱,先取出刮胡子的工具。
 
    “近藤君,先剃掉您的胡子,就是说,要尽量去掉川手的模样儿。不介意吧?那对不起了,我替您剃。来,把脸再朝我这儿转一下。”
 
    川手十分感激博士这套准备周密的做法,都依了他。如果能从那可怕的复仇狂的眼睛里逃掉,剃掉胡子这点小事有什么可惜的呢!
 
    车子好像事前接到了吩咐,一面缓缓行驶,一面在题盯区内的住宅街兜着圈子。
 
    左右和前后的窗帘都放下了,所以不必担心行人张望车内。是个极其安全的密室。
 
    博士从管子里挤出肥皂液,把川手的鼻子下面弄得全是泡沫,随后用剃刀渐渐剃掉了川手的胡子,甚至连在剃掉胡子的地方涂上雪花膏都没有忘记。
 
    “啃、畸、畸……变得年轻多啦。这就行了,这回该轮到我了。”
 
    “啊?!你也刮胡子吗?不太可惜吗?何必连你也那样做呢!”
 
    川手吃惊地看了看博士那漂亮的三角胡子。要是剃掉了富有特征的胡子,不也关系到宗像博士的威严吗?
 
    “可是,因为这胡子一看就知道是我。无论怎么化装,要是有胡子,那就怎么也无济干事。但不是刮掉。不刮也行。这是我秘藏的一招,因为是这个时候,所以跟你一人说明了吧,你瞧,是这个。”
 
    刚说罢,博士就用手指抓住鬓角,像要剥掉脸上的皮似的,突然开始嘎巴嘎巴地撕了起来。令人吃惊的是,只是那漂亮的三角胡子眼看着离开了脸,露出了光滑的脸颊。然后把指甲放到胡子上,那胡子也被剥得干干净净的。
 
 
 
 
    “看不出是假胡子吧。让人家做这东西可是费了一番苦心,这是一个假发师和我合作的结果啊。倘是一般的订货,怎么也做不出这么漂亮的东西来。这三角胡子可以说是我的一种伪装,从平素就让人认为是个有胡子的人。从几年前开始,就故意装作蓄着这种显眼的胡子,使世人的眼睛习惯,一说宗像就联想到三角胡子,其实当然是想获得其相反的效果。哈哈哈哈哈……侦探这一行,可有着许许多多人所不知的辛苦啊!”
 
    川手越发目瞪口呆了,他禁不住赞叹:搞这一行的,他们费的苦心的确是外部的人所无法想像的!
 
    博士在仿佛年轻了十岁之多的平板的脸上堆着微笑,这回从提箱里取出化装用的衣服,摊开在膝前。
 
    “近藤君,这是你的一份,请在这儿更换一下,你当穿号衣的手艺人,我就是你的老板。”
 
    川手的一份是一件旧外衣和一条藏有细筒裤,连破礼帽都备着。博士的一份是一件茶色旧西装、一条便宜的灯笼裤、一双有花样的长袜子、一双高统皮鞋和一顶礼帽等,果然是一套力工头头的服装。
 
    两人在车子里总算换好了衣服。刚才穿着的衣服和外套等归拢在一起塞进了手提箱里。
 
    “这就行了。近藤君,今后我说话也会粗鲁一点,你可别见怪呀!”
 
    头头一说,手下的川手像是一下子找不到回话的样子,只是从!日礼帽下面眨巴着眼睛。
 
    “行了,把车子直升到东京站。”
 
    博士打开玻璃门,对司机说道。车子立即改变方向,箭似地奔驰起来。
 
    不久车子到达车站,两人提着各自的箱子下了车,像是去远方挣钱的手艺人似地走进了站内。
 
    博士让川手等着,自己跑到出售三等车票的窗口,买了两张去泪津的车票。
 
    “哎呀,这不是去泪津的吗?不是山梨县吗?”
 
    呼接过车票,神色诧异地问道。
 
    “嘘!嘘!不是说好什么也不问吗?快,刚好要发车了,咱们赶紧走吧!”
 
    博士在前面朝检票口跑去。
 
    两人赶上了即将发出的去下关的慢车,在后部三等车厢一个角落里彬彬有礼地肩并肩坐了下来。
 
    火车咯喀咯隘地在各站都停车,到达横滨时已经将近中午了。
 
    “我要在下一站耍个小把戏,所以请你脚下要留神一点呀!”
 
    博士把嘴凑近呼耳畔,小声说道。
 
    不久火车到达保土谷。即使停车,博士也并没有想站起来。
 
    “是这里吗?”
 
    川手不安地问道,博士立即以目示意是的,一副若无其事的样子。究竟想搞什么玩艺儿呢?
 
    乘务员的哨子响了,咯噎地摇晃了一下,火车起动了。
 
    “快,现在下去。”
 
    突然间站起来的博士拉着川手的手,跑到了后部的车厢连接处,从已经开始加速的车上先扔下手提箱,然后唤地跳到了月台上。川手也被拉着手跟着跳了下来。两人都脚缠脚地差一点没有摔倒。
 
    “到底这是怎么啦?”
 
    “啊,让你吃了一惊,真对不起呀。这也是甩掉尾巴的一个方法呀。虽然那家伙绝不会跟踪到这儿,但对那种敌人还是得格外地小心谨慎呀!这样做了以后,这日我们就倒过来去东京方向。如果我们的敌人乘在那列火车上,那就完全多乘了一站,所以不管怎么后悔,也已经盯不上我们了。啊,好像刚好从对面开进了一列上行列车,我们就去对面吧。哪里,车票在车厢里跟乘务员说一下就行了。”
 
    空空荡荡的月台。因为周围没有人听他们说话,所以博士用普通的声音说道。
 
    然后过铁路来到另一侧月台,乘上了上行列车,返回两个站就是东神奈川。两人在那里下了车,这回改乘了去八王子的火车,在八王子再次改乘了去目的地的中央线火车。这就是说,装作乘上了东海道线,利用樱木镇八王子线的衔接,巧妙地改乘方向乘上了中央线。由于绕了这么一个大圈子,每次改乘都费了时间,到达甲府时天已经开始黑了。
 
    “快到N站了,这回得玩一个大胆的把戏吸,但决不是危险的事。在N站的这边儿有一处陡坡,火车开到那里将大大放慢速度。我们预定在那里跳到路基下。这是最后的冒险了。大概你会想,何必那样做呢,但这不一定全是因为害怕那家伙追踪。再怎么化装,你也是没有了胡子罢了,所以熟人见了一定会怀疑的,而且如果他们记着你是在那块儿车站下的车,对人说了,那说不定会因什么事传到敌人耳朵里的。本当要在N站下车的,但怎么能断言那N站上刚好没有我们的熟人呢!中途跳下车可未必是多此一举呀,况且早就弄清火车的速度已经慢到丝毫没有危险的程度了。所以你一点也不用担心。”
 
    博士把嘴贴着呼的耳朵详细说明道。幸好暮色深沉,窗外已经一片漆黑,对冒险来说,这是再好不过的时间了。
 
    “咱们慢慢去连接处吧,马上就要到陡坡了。”
 
    两人若无其事地提着手提包溜到了后部的连接处。幸好乘务员不在,也没有看到注意着这边的乘客。
 
    过了一会儿,响过几声短短的通报要过隧道的汽笛声后,火车的速度显然减了下来。“轰、轰、轰”的蒸汽机声音,火星混在黑烟中在空中飞舞,看去煞是美丽。
 
    “来,是这儿。”
 
    以博士的声音为信号,两只手提箱被扔到了路基下,接着博士的手刚一离铁律就成了圆圆的一团肉团,埃地滚到了地上。身穿号衣的川手也紧跟着纵身跃入黑暗中。
 
    在路基的草皮上两只手提箱和两个肉团一前一后骨碌碌地滚落着,交错地握着倒在下面的田地里。
 
    过了片刻,黑暗中传来了低微的声音:
 
    “没有事吧?”
 
    “没有事。跳火车没有想到这么容易啊!”
 
    川手或许是由这数十年来从未经历的冒险想起了淘气的少年时代,显得十分高兴。
 
    “就在前面有条小村道,沿那条路走两三百米,往右拐就是山脚,那个城郭就建在那儿。”
 
    两人在黑暗中霍地爬起,掸掉尘土后,提起手提箱就踩着田地来到了村道。
 
    过了杂木林后向右拐去,用脚瞪着杂草一走进茂密的树林子,就在前方的树林间隐隐约约看到了灯火。
 
    “是在那里。”
 
    “的确是山里的独所房子呀。”
 
    走了一会儿,开始从树林间看到夜间看上去是白色外涂泥灰的奇怪建筑物。果然是座城郭。屋顶的建法有些地方也让人想起了天守阁。看到了高高的土围墙,再靠近一看,土围墙的一处有扇堂皇庄严的门,它前面吊着吊桥,看去模模糊糊的,仿佛是梦中奇怪的城门。
 
    “这房子真奇怪啊!”
 
    “您喜欢吗?”
 
    两人互相开着玩笑,发出了轻轻的笑声。
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