堀井が主張するコースを追跡するより、まだしも、空路のほうが可能性ありと直観したためである。
次の大歩危発の下りは、十四時五十分のL特急�南風5号�があった。
土佐山田着は、十五時三十八分。
浦上と澄子は、何はともあれ、高知空港へ向かった。
五日ぶりの空港である。
あの日と同じ、ロビー二階のレストランに立ち寄ろうとして、浦上の足がとまった。チケットカウンターの前だった。
『九月一日からは、夏期航空ダイヤ(七月二十二日—八月三十一日)ではありません。乗り継ぎなどのご搭乗時間に、ご注意ください』
浦上の視線は、カウンター近くに張り出された注意書《メツセージ》を捉えていた。
鉄道ダイヤは月々変更されるわけではないが、季節列車や臨時列車の運転があるので、浦上は毎月新しい時刻表に買い換えている。今回ショルダーバッグに入れてきたのも、無論九月からの新しい時刻表だ。
九月の時刻表で、八月の航空ダイヤをチェックするなんて、
(こいつは、初歩的なミスもいいところだ)
浦上は舌打ちをし、唇をかみ締めてチケットカウンターに行った。
だが、問題の出発便は、さっきのチェックと変わらなかったのである。
福岡行きは九月も八月も同じダイヤなので、松山への時間短縮ルートはないし、大阪行き�ANK418便�の発着も、今月号の時刻表から書き出したとおりだった。
「じゃ、あれはどういうことですか」
浦上は思わず声を荒立てて、張り紙を指差した。
「それは、同じダイヤで運航されている便も多いですよ。お客様がお問い合わせの便は、変更なしということです」
と、カウンターの中の係員はこたえた。一部ダイヤが変わったと言っても、これでは進展がない。これも駄目か。
浦上がさらに渋い表情になると、
「お客様は、どちらへ行かれるのですか」
制服の係員は浦上の顔をのぞき込んだ。
「実は、ある事件の取材をしているのですが」
浦上は、大歩危峡のレストハウスで書き出したメモを、カウンターに載せた。
そのとき、若い女性客が現われた。会話は一時中断された。