この前お話ししたと思うが、今年の「ジュエリーベストドレッサー賞」をいただくことになった。
ま、自分の口からは言いづらいけど、大人のいい女っていうことで、最近いろんなところからお声がかかる私。賞をいただくのは、今月になってから二回めよ。このあいだはフランス食品振興会から、フランスの食文化に貢献した、っていうことで�シュバリエ�の称号をもらって、この時もイブニングドレスで出席。そして今日のジュエリーベストドレッサー賞もイブニングで出席よ、といっても、私の持っているものは限りがある。このジル・サンダーのイブニングは、昨年ニューヨークで買ったものだ。一回着て雑誌に出てるけどいいかしらん。構わないわよね。誰か私のことを見るわけでもなし。
他に受賞者が何人もいるが、おそらく目玉は、スポーツ部門で受賞するマラソンの高橋尚子さんであろう。それか人気絶頂の本上まなみちゃんかナ。
当日、私はひとりで着替えを持ち、タクシーに乗って会場に向かった。そして控え室の札を見た。とにかく私は忙しくて、当日の今日まで他の受賞者のことをほとんど知らなかったのであるが、デヴィ夫人とか中村江里子さんといった�濃い�、話題の方々も混じっていたのね。
裾をひきずるドレスを着て、胸をあらわにしたデヴィ夫人は、すごい迫力であった。あでやかなすっごい色気。オジさんたちの人気はバツグンで、ディナーの最中も五十代、六十代の関係者が群がっていた。
意外におとなしかったのが中村江里子さんで、黒いパンツスーツである。が、スタイルのいいことといったら唖然《あぜん》としてしまう。セレモニーの最中、私は後ろに座っていたのでよく見えるのだが、お尻《しり》がものすごい高い位置にあるのだ。私は彼女に一回だけ会ったことがあるが、その時はまだアナウンサーであった。今は洗練度といい、美しさといい、オーラといい、すっかり芸能人である。結婚が延びたとか何とかで、ワイドショーのレポーターたちに囲まれていた。
そして十代の受賞者は深田恭子ちゃんだ。私は深キョンと同じテーブルに座った。こちらは何ていおうか、神さまが特別にこさえた超美少女という感じ。睫毛《まつげ》が信じられないぐらい長く、真白い陶器のような肌に影を落としていた。ブルーのドレスも可愛い。
こういう美女たちに囲まれ、座ったり立ったりする私は、なんて不利なんでしょう。付き人とかマネージャーとか、スタイリストもいない。ヘアメイクしてくれた人も、仕事が終わったら帰ってしまった。だから私はひとりで、チェックをしてくれる人もいないのよ。着替えもバッグも、ひとりで持たなきゃいけないのよ。ちらっとトイレで見たら、くたびれきった顔をしていたわ。
それなのにひとりひとり記者会見があって、テレビカメラは、足元からてっぺんまでなめるように映すのよ〜。ペディキュアとか、手を抜いているところを撮られたらどうしよう……。もう、芸能人に混じって、私のようなシロウトがこういうところに出るのは、本当によした方がいいのね。
が、せっかくだから他の有名人のところへ行って、記念写真を撮ってもらいましょう。デヴィ夫人のところへ行ったら、オジさんたちが二重にも三重にも囲んでいて、とても近づけなかった。隙を見て、高橋尚子さんのところへ行ってツーショットを頼む。Qちゃんは今日もおしゃれをしてきて、すごく可愛い。この方も芸能人じゃないわけだが、なにしろ�時の人�であるから、全身キラキラしているぞ。
次の日、ワイドショーを見てたら、たいてい高橋尚子さんか中村江里子さんが出ていて私はホッとする。が、日を追うごとに私がやたら出るようになった。どういうブランドのドレスを着ているのか、バッグはどこのかを結構詳しくやっている。
が、やっぱり私だけ�ハグレ者�という感じ。他の方たちは、立ち方も笑顔もさまになっているけれど、私は何もかもぎこちない。すごく緊張しているのが、画面から伝わってくる。
うちの夫もテレビを見ていて、
「バッカじゃねえのか。君だけ完全に浮いてるじゃん」
なんて言う。仕方ないの、だって私、シロウトなんだもん、なんていう言いわけは通用しないもんね。こういう場合、みんなひとくくりにされて「芸能人のファッション拝見」ということになってしまうんだもんね。
ところでこのジュエリーベストドレッサー賞の賞品として、私は宝石を何点かいただいた。ブローチ、指輪、ネックレスの類だ。今年はアクセサリーが流行《はや》っていて本当によかった。買ったばかりのスーツに、アンティック風のブローチをつけた。
決めた、次の目標は何にもつかない「ベストドレッサー賞」だ。毎年暮れになると発表される、有名人男性を対象にした有名なやつだ。あの中にただ一人、女性枠があるんですね。あれをぜひいただきたい。私なんか「アンアン」の撮影以外ほとんどスタイリストがつかない。タイアップなんか皆無。すべて自前である。こんだけお金と手間をかけてるんだから、ぜひ評価してほしいと真剣に願う私である。