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歌月十夜105

时间: 2019-11-28    进入日语论坛
核心提示:*s129□屋敷の物置「あれ?」ごそごそ、とポケットに手をいれると、それらしい鍵が出てきた。【琥珀】「鍵、ですね」「うん、鍵
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*s129

□屋敷の物置
「………あれ?」
ごそごそ、とポケットに手をいれると、それらしい鍵が出てきた。
【琥珀】
「鍵、ですね」
「うん、鍵だ」

しかも二つ。いつのまに手に入れていたのか、明らかにこの金庫の鍵と思われる物が二つとも揃っている。
「……どうしよう。なんか開いちゃうんだけど、琥珀さん」
いざ開けられる、となると中に何が入っているのか不安になる小市民の自分。
【琥珀】
「すごいっ、志貴さんったらグレートです! パーフェクトですっ! ささ、その勢いでズバッと開けちゃいましょう!」
一方、そんなネガティブなコトを考えないマイペースな琥珀さん。
「……………」
【琥珀】
「志貴さん? どうなされたんですか、急に押し黙ってしまわれて」
「え——? あ、いや……なんていうのか、本当に開けていいのかなって。だって八年間も鍵がかかっていたんだろう? なら、それはもしかしたら開けちゃいけないものかもしれないじゃないか」
【琥珀】
「いいえ、そんなコトはありません。実はですね、この中に入っている物がなんであるか見当がついているんです、わたし」
「そうなの? じゃあ八年前、この中に何が仕舞われたか見てたんだ?」
「いえ、直接見たわけではないんです。……志貴さん、わたしずっと探している物があるんです。けれどそれはこのお屋敷の何処にもなかった。あるとしたらもうこの金庫の中なんです」
「それは……その、捨てられちゃってるとかそういうのはないんだね?」
「はい。槙久さまは見られないようにしておらましたが、あの方は優しい方でしたから。それをお捨てになる筈がないのです」
「————そうか。それじゃあ開けるけど、中に何もなくてもがっかりしちゃダメだぜ。ここに無くってもきっと他に隠し金庫ぐらいあるよ。この屋敷、ともかく広くて怪しいんだから」
【琥珀】
「はい、全て承知の上ですよ。ふふ、けどお優しいのですね、志貴さんは」
「うっ———い、いいから開けますよっ。えーと、こっちと、こっちと……」

二つの鍵穴に鍵を挿しこむ。
がちゃり、かちゃり。き、きしっ。
古びた、いかにも機械仕掛けといった音をたてて、金庫の鍵は呆気なく外れた。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
しばし、二人して黙り込む。
「……琥珀さん、どうぞ」
【琥珀】
「いえいえ、鍵を見つけられたのは志貴さんなんですから、志貴さんがお開けください」
琥珀さんの顔がちょっとひきつっているのは、きっと緊張しているからだろう。
 さっきはああ言ってみたけど、琥珀さんがここにしかない、と言ったからにはここにしかない筈だ。
だっていうのにこの中にも無かったら、琥珀さんがずっと探していた物というものはもうこの屋敷には無いという事になる。
「———わかった。それじゃ失礼して」
【琥珀】
「…………………」
琥珀さんは無言で頷く。

飾り気のない鉄の扉を開ける。
 ……一見して、金庫の中には何もなかった。
中はがらんとしていて、まるで新品のように空間が見渡せる。
ただ、よく見ると一つだけ仕舞われているものがあった。
「——————写真が一枚だけ?」
金庫の中に写真が一枚だけ、というのが興味をそそったのか、つい手にとってまじまじと見つめてしまった。
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