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日本むかしばなし集192

时间: 2020-01-30    进入日语论坛
核心提示:太郎の望み昔のお話を読みますと、沢山面白いことが書いてあります。神様が人間の処へやって来て、「お前何になりたいか。それと
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太郎の望み

昔のお話を読みますと、沢山面白いことが書いてあります。神様が人間の処へやって来て、「お前何になりたいか。それとも何が欲しいか。三つだけは叶《かな》えてやる」こんなことを云ったものです。しかし今はもう神様なんてなくなったのでしょうか。学校でも家でも、村の中でも、そんなことを話している人は一人もありません。新聞にだって、こんなことの書いてあったことは一度もないそうです。神様は死んでしまったのでしょうか。それとも人間を棄てて、何処《どこ》かへ行ってしまったのでしょうか。それともまたもう人間を相手にすることをやめてしまったのでしょうか。
一度でいいから、神様に云われてみたいものです。
「何でもお前の欲しいものを云ってみなさい。」
太郎は村の牛乳屋の小僧でした。朝は三時から起き、晩は九時にねるのです。仕事がえらくてなりません。そうして、その眠いことと云ったら、一寸《ちよつと》でも腰を下ろせば、直ぐもう目がふさがって、コクリコクリと居眠りがつきます。そこへ持って来て、そこの親方のやかましさと来たら、——これを考えるだけでも、神様があったらなあ、と思わずにいられません。
ある日のこと、彼は籠《かご》を背負って、山の池へ出かけました。池の土手の草を刈るのです。それに三匹の山羊《やぎ》をつれておりました。これも草をどっさり食べさせなければなりません。朝七時頃のことでした。まず土手の上に山羊を放してやりました。それから背中の籠を下ろし、鎌と砥石《といし》を側に置き、長々と草の上に身を伸ばしました。あああ、ちょっと、十分ほど休みたい。極楽極楽。そう思って、露で着物や顔がぬれるのもかまわず、太郎は仰向《あおむ》けになって、晴れた空を見上げました。すると、自然に目がふさがって来ました。
昔ならこんな時、神様はやって来られました。
「草刈の太郎、お前は正直か。」
もし神様が聞かれたら?
「へえ、私は不正直が恐ろしゅうてなりません。けれど、神様、正直一つに頼っていればええので御座んしょうか。」
「ええとも、しかしお前は怠けたいか。」
「どういたしまして、怠けるどころか。朝三時から夜九時迄、三十分と休むことはありません。」
「よろしい。」
「へえ、よろしゅう御座いますか。正直で働いておれば、それでもうよろしいので御座いますか。」
「ウン、それでええ。」
「へ、へい。」
太郎は待っていました。その次、神様が何と云われるかと——。しかし神様はそれきり何とも云われません。待っても待っても、云われません。云われない筈です。神様なんか何処にも居られないのです。唯だちょっと、太郎がこんなことを考えてみたばかりです。そこで太郎ががっかりして、寝返りを致しました。そしてひとりごとを云いました。
「あああ、正直で働くのか。働くばかりなんか。」
その時のことです。池の上に虹《にじ》が立ちました。虹の中に鶴のように白いものが見えました。太郎はまぶしくて目が開けていられません。
「草刈りの太郎。」
おお、今度はほんとうの神様のようです。
「何が欲しいか。何になりたいか。一つだけ、かなえてやるぞ。」
「へい。」
これは有難い。ほんとうの神様が来て下さった。こんなだったら、お願いすることを何か考えておけばよかった。着物がいいだろうか。下駄がいいだろうか。|ようかん《ヽヽヽヽ》がいいだろうか。キャラメルがいいだろうか。いやいや、そんなことより巡査になったものか。兵隊になったものか。それとも、内の旦那のように、お金持になったものだろうか。こまったなあ。今直ぐ返事をすると云っても、直ぐには、考えつかないもの。
「神様、どうも直ぐ直ぐ云っては、何が何だか考えつきませんが、しばらく考えさせて下さいませんか。」
「よしよし、いくらでも考えるがいい。」
「ああ、ありがたい。それでは、何でもよろしゅう御座いましょうか。」
「ウン、何でも、お前の望みのこと、一つは、かならず叶えてやる。」
「へい、それでは、お金でも戴けましょうか。」
「ウン、お金であろうと、家であろうと、この国でさえ、お前が望みなら、お前のものにしてやるぞ。」
「ああ、有難い。この国でもですか。」
「そうじゃ。」
「この山でも、この森でも、この川でも、この池でも——。」
「そうじぁ。」
「ああ、有難い。しかし神様、この国を戴いて、私はどうしましたらよろしいのでしょう。」
「さあ、それはお前のものじゃ。思う通りにするがよい。」
「困ったなあ。どうしていいか解りゃしない。そうすりゃ国なんてつまらないものじぁ。やっぱりお金がいいかしらん。お金がありゃ欲しいものは何でも買える。しかしお金で兵隊さんになる訳にゃ行かない。そうすると、兵隊さんのえらいのがいいかしらん。しかし|おれ《ヽヽ》が兵隊さんになったって何が出来る。そうじぁ。」
こんなことを考えている時、池の水の上を一羽の雀が飛んで行きました。
「ああ、あの雀がいい。空が飛べて、森の中で勝手気ままにねたり起きたり——しかし。」
と、また太郎は考え始めました。考えに考えても、これはというものがありません。その間神様は池の上に立って、じっと太郎の言葉を待っておられます。太郎は困ってしまいました。
「あああ、神様、私はもうここで眠るだけで結構です。もう五分、いえ、もう一分でもよろしゅう御座います。心配なしにここで眠らせて下さいませ。」
つい、太郎はこう云ってしまいました。そして、それなり目をつぶり、草の中に顔を埋め、ぐっすり寝こんでしまいました。
涼しい風が池の水の上をわたり、林の木枝を吹いて、それから太郎の周囲の草をなでて行きました。
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