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木川田くんが磯村くんの部屋に転がり込んで来たのは一月十日のことでした、という話でしたが一向に転がりこんで来ませんね。
悪いクセです。
「どうせ、僕は大学のノンポリ少年で、あいつは都会の妖精さ」って磯村くんが思ったとこまででした。
あ、それから、二人が相模大野から電車でテレビを運んだ日、木川田くんは磯村くんの部屋には泊りませんでした。「バイトがあるから帰る」って、木川田くんは次の日の心配をしてその日の夕方に帰って行きました。
木川田くんは、近所の電気屋さんでバイトの店員をしていたのです。
悪いクセです。
「どうせ、僕は大学のノンポリ少年で、あいつは都会の妖精さ」って磯村くんが思ったとこまででした。
あ、それから、二人が相模大野から電車でテレビを運んだ日、木川田くんは磯村くんの部屋には泊りませんでした。「バイトがあるから帰る」って、木川田くんは次の日の心配をしてその日の夕方に帰って行きました。
木川田くんは、近所の電気屋さんでバイトの店員をしていたのです。
二人はまだそういう関係でした。
焦《じ》らしてはいけません。
焦らしてますけど。
その内なんとかなるからサ——。
焦《じ》らしてはいけません。
焦らしてますけど。
その内なんとかなるからサ——。
それはそうと、あの�医科大生�って、スゴーく、リアルでしょ? 勿論全部|創作《フイクシヨン》だけどサ。
まァいいから。
まァいいから。
という訳で(よく言うよ)、磯村くんは、「どうせ、僕は大学のノンポリ少年で、あいつは都会の妖精さ」と、いつか�テレビ�を二人で揃って取りに行った日のことを思い出して、そう思っていたのでした——。
「あんなヘンなのと知ってるんだから、僕の知らないとこで絶対一杯いんだ」と、磯村くんは思いました。ホントは「あんなヘンなのと知り合い」って思いかけたんですけど、そんなヘンなこと思いたくないから、「あんなヘンなのと知ってるんだ」なんていう、ヘンな思い方をしたのでした。
結局、嫉妬《しつと》してたんですけど、男なんてそういうもんです。それを�嫉妬�という言葉で表現出来るような関係を持ってないだけです、�嫉妬�という言葉を使えないのは——。
磯村くんは「七日ぐらいに帰って来る」と言いましたけど、でも、七日になってもアパートには帰りませんでした。まだ大学は始まってないし、大学始まってなかったら高幡不動にはなんにもないことを、磯村くんは知っていたのです。なんにもないだけなら高円寺もおんなじですが、高幡不動はなんにもない上に寒いので、それでグズグズしていたのです。ここら辺がさり気なく心理描写になっちゃうところですね。
結局、嫉妬《しつと》してたんですけど、男なんてそういうもんです。それを�嫉妬�という言葉で表現出来るような関係を持ってないだけです、�嫉妬�という言葉を使えないのは——。
磯村くんは「七日ぐらいに帰って来る」と言いましたけど、でも、七日になってもアパートには帰りませんでした。まだ大学は始まってないし、大学始まってなかったら高幡不動にはなんにもないことを、磯村くんは知っていたのです。なんにもないだけなら高円寺もおんなじですが、高幡不動はなんにもない上に寒いので、それでグズグズしていたのです。ここら辺がさり気なく心理描写になっちゃうところですね。