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シャドウテイカー アブサロム21

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:    3 暗闇《くらやみ》の中で葉《よう》は目を開ける。彼女は布団《ふとん》の中で横向きに寝ていた。顔の手前で重ねられ
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 暗闇《くらやみ》の中で葉《よう》は目を開ける。彼女は布団《ふとん》の中で横向きに寝ていた。顔の手前で重ねられた両手は、いつのまにか固く握りしめられている。
とてもいやな夢を見ていた気がしたが、内容までは思い出せない。夢でよかった、という気持ちだけが残っていた。
彼女はほっと息をついて力を緩《ゆる》めた。耳を澄《す》ますと、かすかに雨の音が聞こえる。葉《よう》はこの音があまり好きではない。いやな夢を見たのも、そのせいかもしれなかった。
「起きた?」
不意にツネコの声が聞こえた。薄暗《うすぐら》い部屋の窓際《まどぎわ》に、正座しているツネコのシルエットがぼんやりと見える。彼女は窓の外を眺めているらしい。
「あんまりお客も来ないから、さっき店閉めたのよ。雨も降ってきたしね」
ツネコは外を見たまま呟《つぶや》いた。前にもこんなことがあったと葉は思う。それがいつだったのか、思い出す前にツネコが口を開いた。
「兄さんたちがいなくなった後、何日もこんな雨が降ってたね。あの団地の部屋で、あんたと夜中にこんな風に座ってたの、憶《おぼ》えてる?」
葉は布団の中でこくんと頷《うなず》く。ツネコの言葉ではっきり思い出した——あの時もなにを話すでもなく、ぼんやりと外を眺めていた。雨の音が嫌いになったのは、あれからだと思う。
「そういえば、葉は『お父さんたちはどこに行ったの』って、周りの大人《おとな》に聞いたことないね」
と、ツネコは呟いた。質問のようにも独り言のようにも取れる言葉だった。葉は体を固くして次の言葉を待ったが、ツネコはなにも言わなかった。
ふと、葉は裕生《ひろお》の姿が見えないことに気づいた。
「……先輩《せんぱい》は?」
「さあ。明日出直して来いって言って、追い出しちゃった」
葉は思わず体を起こしかける。ツネコはちらりと葉を振り返った。
「でも、どっかに泊まって明日来るわよ。多分《たぶん》ね」
「……ひどい」
外は雨が降っている。泊まるところが見つからなかったら、どうするのだろう。
「どうにかするでしょ。お兄さんがこっちの方に住んでるんだし」
「どうして」
「うーん。なんか腹が立ったのよね」
葉も腹を立てていた。ツネコおばさんはどうしていつも意地悪なんだろう、と彼女は思った。自分が寝ている間に、色々ひどいことを言ったに違いない。
彼女が口を開きかけた時、ツネコがぽつりと言った。
「あの子、いい子だね」
「えっ」
葉は自分の耳を疑った。
「ちょっと掃除《そうじ》させたんだけど、てきぱきこなしてたわ。そこそこ礼儀《れいぎ》正しいし、食事のマナーも悪くない。見た目はボーっとしてるけど、大事なところではちゃんと度胸も据《す》わってるし」
ツネコはなにかを思い出したように、くすっと笑った。彼女がこんな風に人を誉《ほ》めるところを見たのは初めてだった。驚《おどろ》きのあまり、気がつくと葉《よう》の怒りはしぼんでいた。
「ねえ、あんた、人助けに来たんだって?」
と、ツネコが尋ねる。
「あの子がそう言ったんだけど」
葉は顔を赤くした。
「他《ほか》になにか言ってた?」
「それだけ。後は言えないって。人助けって本当のこと?」
葉はかすかに頷《うなず》いた。
飯倉志乃《いいくらしの》が死んだ時、葉は裕生《ひろお》に「カゲヌシにとりつかれている人たちを助けたい」と言った。しかしそれは、人助け、というほど大げさなものではない気がする。志乃を助けられなかった後悔を埋めようとしているだけかもしれない。なんにせよ分かっているのは一つだけだった。
「わたしにしか、できないかもしれないから」
ふと、かすかに嘲笑《ちょうしょう》が聞こえた気がした。ツネコからではない。彼女の心の中の「黒の彼方《かなた》」の声だ。葉は聞こえないふりをした。
「あんたのことだから、どうせ聞いたって話しゃしないと思うけど」
と、ツネコが言った。
「誰《だれ》かを助けるなんてね、そう簡単《かんたん》にできることじゃないの。すごく難《むずか》しいことなの」
「え……」
「色々やったつもりでもね、後悔するぐらいしかできない時もあるんだから」
いつものように叱《しか》るような口調《くちょう》だったら、葉も言い返したかもしれない。しかし、ツネコの声はまるで自分に言い聞かせるように沈んでいた。彼女はいつのまにか窓ではなく、仏壇《ぶつだん》の方を見ていた。
葉ははっとした。ツネコは交通事故で夫を亡くしている。彼女もずっと一人で暮らしてきたのだ。
「『自分が代わりになればよかった』って思ったりとかね」
その言葉には不思議《ふしぎ》と聞き覚えがあった。昼間、あの天内《あまうち》茜《あかね》が言っていた言葉によく似ていた。
突然、葉は頭が押しつぶされそうな衝撃《しょうげき》を覚えた。例の発作《ほっさ》だった。葉は歯を食いしばってそれに耐える。昼間よりもさらに強烈な飢餓感《きがかん》が彼女を襲《おそ》った。昼間の戦闘《せんとう》で傷ついたこのカゲヌシは、回復のための餌《えさ》を望んでいるに違いない。
葉は布団《ふとん》の中で体を縮《ちぢ》める。やがて、ゆっくりと発作はおさまっていった。
不意にぱんと手を叩《たた》いてツネコは立ち上がった。
「さてと。お腹空《なかす》いてない?」
少し、と葉《よう》は答えた。本当は食欲など感じなかったが、今は一人になりたかった。ちょっと待ってなさい、と言いながら彼女は下へ降りていった。
『人助けですか』
ツネコがいなくなるのを待っていたように、「黒の彼方《かなた》」が言う。葉は答えなかった。
『あなたがそのつもりでも、今の私たちには弱点があります』
他《ほか》のカゲヌシを察知できないことだ——ふと、葉は思う。どうして、「黒の彼方」は他の怪物と違うのだろう。
『普段《ふだん》、私たちの意識《いしき》はあなたの脳の中で二つに分かれていますが、私が具現化した瞬間《しゅんかん》に境界はなくなります。具現化した私は、あなたの手足と同様にあなたの脳が操《あやつ》っています』
珍しく饒舌《じょうぜつ》に語りかけてくる。葉は警戒《けいかい》しながらも耳を傾けざるを得なかった。
『本来であれば、それらは一つの意識が操るべきものなのです。しかし、私たちの意識は融合《ゆうごう》していない。あなたがそれを拒《こば》んでいるからです』
まるで、意識の融合が当たり前であるかのように「黒の彼方」は言う。
『弱点を補うには、司令塔を一つに絞ることが不可欠です。そうしなければ、あなたが考える人助けも難《むずか》しくなりますよ』
「……わたしを乗っ取るつもりでしょう」
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先月の「ヒトリムシ」との戦いで分かったことがある——戦いのさなかに一度|葉《よう》が意識《いしき》を失えば、彼女は自分から目を覚ませなくなる。そうなれば、カゲヌシを抑える者はいなくなる。
『いいえ。ただ、昼間会ったあの人間を助けるつもりなら、もう一度戦う必要があるでしょう。あの人間は、あの鳥を手放しそうもないですからね』
確《たし》かに天内《あまうち》茜《あかね》の誤解は解けたようだったが、それですべてが解決するわけではない。葉の目的は、彼女の解放にあるからだ。
『あの鳥は、本来であればさしたる力を持ちません。知能も発達していない。だから、あの人間が覚醒《かくせい》している限りは、完全に支配下に置かれることになります。私たちが苦戦を強《し》いられたのはそのためです』
葉は「黒の彼方《かなた》」が負わされた傷のことを思った。カゲヌシが本来の力を発揮するには、あの天内茜のようにカゲヌシを完全に支配下に置くか、あるいは意識を乗っ取られることで支配下に置かれるかのどちらかしかないのだ。
『契約を結びなおすことができますよ』
と、「黒の彼方」は囁《ささや》いた。
「……どういうこと?」
『正確には新しい契約を付け加えます。私を呼び出すのと同時に、条件つきであなたの意識を遮断《しゃだん》します。その代わり、戦いが終わったらあなたに肉体を明け渡す。時間による制限をつけてもいい……契約者のほとんどはやっていたことです』
「……」
最終的に以前の契約者たちがどうなったのか、「黒の彼方」は語ったことはない。自我を食い尽くされたのか、あるいは死んだのか。
『悪い話ではないでしょう? あなたもいやな戦いに参加しなくとも済みます』
畳みかけるように「黒の彼方」は言う。聞いている限りでは、妥当な提案のような気もする。
「本当に約束を守るの?」
いくぶん、弱々しく葉は尋ねた。
『わたしたちの種族は、名を与えた契約者との契約に縛《しば》られます。それを違《たが》えることは絶対にできないのです。契約者が契約者であり続ける限り、それは変わりません。現にわたしはあなたが名を呼ばなければ、決して現れることができない』
おかしい、と葉は思った。この話にはなにか裏がある。安易に頷《うなず》いてはいけない気がする。
『わたしも存分に力を発揮できる。弱点を補うには十分です』
葉ははっと昼間のことを思い出した——「黒の彼方」は彼女の制止にもかかわらず、何度も人間を襲《おそ》おうとしていた。
「人を殺すつもりでしょう」
相手は答えなかった。しかし、かすかに惜しむような気配《けはい》が伝わってくる。葉が眠ってしまえば、「黒の彼方《かなた》」は契約者である人間を襲《おそ》って、効率的にカゲヌシを仕留めることができる。
「そんなことできない」
『それでは、あなたも目的を達することはできません。わたしが傷つけば、あなたも苦痛を味わいます。それが重なれば、いずれにせよあなたは意識《いしき》を失う。私は良心的な提案をしているつもりですが』
葉《よう》は黙《だま》っていた。実際、昼間はもう少しで気を失うところだった。そうなっても、「黒の彼方」は葉を乗っ取ることができる。ヒトリムシと戦って意識を失った時は、裕生《ひろお》が名前を呼んでくれた。一度「黒の彼方」に乗っ取られた葉を、目覚めさせることができるのは彼だけだろう。
『次の戦いまでに、考えておいて下さい』
「黒の彼方」の声が遠ざかっていった。カゲヌシにとりつかれた人間を助けるためには、戦わないわけにはいかない。しかし、今のままでは戦っても勝てない。
(……裕生ちゃん)
彼女は体を丸めて呼びかける。裕生に会いたかった。彼がそばにいてくれれば、不安も薄《うす》れるような気がする。しかし、彼にそう告げる勇気はなかった。裕生は優《やさ》しいから断りきれないだけで、本当は迷惑かもしれない。その思いが足をすくませる。
(裕生ちゃん)
外ではまだ雨が降り続いていた。
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