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シャドウテイカー フェイクアウト06

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:第二章 「帰ってきた男」1「鶴亀《つるき》駅」という看板のかかった駅舎の前に、佐貫《さぬき》峻《たかし》は立っていた。無
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第二章 「帰ってきた男」

「鶴亀《つるき》駅」という看板のかかった駅舎の前に、佐貫《さぬき》峻《たかし》は立っていた。無数の蝉《せみ》の声があたりに反響《はんきょう》している。昼下がりの一番暑い時間帯だが、外にいるのはさほど苦にならなかった。重量級の体格のわりに、彼はほとんど汗をかかない。夏は大好きな季節だった。
彼はこの鶴亀から一駅の加賀見《かがみ》にある加賀見高校に通っている。今日は夏休みの課題《かだい》を片づけるために、同じクラスの藤牧《ふじまき》裕生の家へいくことになっていた。鶴亀駅の前で、一緒《いっしょ》にいくはずのクラスメイトと待ち合わせをしているのだった。
待ち合わせの時間より少し早く着いてしまったが、かといってどこかの店へ行って時間をつぶすほどでもない。
駅前には歩いている人もまばらだ。隣《となり》の加賀見市に比べて、この鶴亀町はさびれている。鶴亀駅の商店街にはシャッターの閉まった店も多く、活気があるとは言いがたい。再開発の手始めとして建てられた駅前のビルも、ほとんど使われないまま半《なか》ば廃屋《はいおく》と化していた。
商店街のずっと先に小さな山があり、石造りの鳥居《とりい》と長い石段が小さく見える。この町の唯一《ゆいいつ》の名所がその山——鶴亀《つるき》山の頂《いただき》にある鶴亀神社だった。後数日で夏祭りも始まろうとしている。
先ほどからスピーカーで拡声された男の声が聞こえている——ふと、佐貫《さぬき》は顔を上げた。警察《けいさつ》か消防署の防災の呼びかけだろうと気に留《と》めていなかったのだが、よくよく聞くと内容が妙だった。
『……わたしも皆さんと同じようにこの鶴亀町の出身者です。鶴亀、という地名の由来について、真実を知っている者はほとんどおりません。もともとの語源はツルギ、すなわち剣《つるぎ》を指します。鶴亀山はかつて関東《かんとう》有数の鉱山であり、銅剣の材料となる銅が産出されたという記録《きろく》が残っています……』
(なんだ、この話)
佐貫は好奇心にかられてきょろきょろとあたりを見回した。声のありかは例の空き部屋ばかりのビルらしかった。ちょっと迷ってから、彼は声の聞こえる方へ歩き始めた。
『しかし、この鶴亀にはもう一つの意味があるのです。鶴亀町の隣《となり》にあるのは加賀見《かがみ》市。これは名前からもお分かりのようにミラー、すなわち鏡《かがみ》を指しております』
(……ウソくせえ)
と、佐貫は心の中でツッコミを入れた。ビルに近づいていくと、両開きのドアが開放されているのが見えた。一階は貸しホールなので、なにかのイベントが行われているのかもしれない。
『鏡と剣——ここから連想されるのは、皆さんもご存じの日本神話に登場する二種類の神器《じんぎ》、八咫鏡《やたのかがみ》と草薙剣《くさなぎのつるぎ》であります』
いきなりすげえ飛躍《ひやく》だな、と佐貫は思ったが、多少話に引きこまれてもいた。
「……ってか『三種の神器』だろ」
と、ついつぶやいていた。
『こう申し上げると、よくご存じの方はこうおっしゃるでしょう……二種類ではなく三種の神器だろう、と』
佐貫は顔をしかめる。勝ち負けで言うと、なんとなく「負け」の気がした。
『それは違います。もともと『古語拾遺《こごしゅうい》』を初めとする数々の古文献によれば、神器の数は三種類ではなく、鏡と剣の二種類であります。つまり、加賀見市と鶴亀町は対《つい》になっており、失われた古代史の鍵《かぎ》となる都市の名残《なごり》なのです』
佐貫は入り口の横に立てかけられた、大きな縦長《たてなが》の看板の前で立ち止まった。看板には等身大の人間の写真が貼《は》りつけてある。白いタキシードを着て、長い髪の毛を後ろで縛《しば》った中年男が満面《まんめん》の笑《え》みを浮かべていた。見栄《みば》えのする容姿だったが、きちんと正装を着こなしているわりには紳士らしく見えない。
看板には文字も書《か》きこまれていた。
 皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》ショー・全《すべ》て見せます! 解決します!
宇宙の力! 天地創造! あなたの人生!
(……あなたの人生?)
最後の一つだけ妙にみみっちい。
『四年前、鶴亀《つるき》神社で発見された古文書には、その歴史的事実を示す記述があります。この古文書はなにを隠《かく》そう、当時|宮司《ぐうじ》として勤《つと》めていたわたしが発見したものでして、仮に『皇輝山文書』と呼ばれております』
男の声はロビーの先にあるホールから聞こえる。建物に入りかけた佐貫《さぬき》はふと首をかしげた。神社の宮司が発見した『皇輝山文書』——まだ佐貫は小学生だったが、そういえばそんなこともあった気がする。
「ご見学ですかー?」
不意に甲高《かんだか》い女の声が耳に突き刺さった。受付のカウンターの向こうに、派手《はで》なメイクをした白い着物姿の女が座っていた。まるで似合っていないが、よく見ると巫女装束《みこしょうぞく》らしい。コスプレか、と佐貫は思う。
「これ、なんかのイベントすか?」
カウンターに近づきながら佐貫は言う。香水《こうすい》の香《かお》りが鼻にしみこむようだった。
「ええ。そうですよー」
沈黙《ちんもく》。濃《こ》いアイラインとマスカラで固められた目が彼を見上げている。素顔《すがお》を想像せずにはいられなかった。
「……いや、だからなんのイベントなんすか?」
「健康《けんこう》相談《そうだん》ですとか、後は人生相談ですとか……見学は一切無料ですので、よろしかったらどうぞ」
普通、健康相談と人生相談って別にやるだろ、と思った瞬間《しゅんかん》、半分開いたままのホールのドアから男の声が聞こえて来た。
『わたしは『皇輝山文書』に触れた瞬間、この古文書に記《しる》されている太古《たいこ》の神・龍子主《たつこぬし》の加護《かご》を受けました。人間の人生を見通し、全てを癒《いや》す力が備わったのです。その力によってこの四年で五百人もの人々の病《やまい》と戦って参りました……』
(なんだ、宗教かよ)
それもかなり怪《あや》しい種類の。とたんに好奇心が萎《な》えた。佐貫は携帯で時間を確認《かくにん》する。そろそろ、待ち合わせの相手も来る頃《ころ》だ。
『ですが、わたしたち人間には『カゲヌシ』という恐るべき敵がいます』
踵《きびす》を返しかけた佐貫《さぬき》は、ふと振りかえった。
(……カゲヌシ?)
その都市伝説には彼も関心がある。以前、加賀見《かがみ》市で藤牧《ふじまき》雄一《ゆういち》が行っていた調査《ちょうさ》を手伝ったこともあった。
『人間は生まれながらにして負のエネルギーを背負《せお》っています。その象徴こそが人間の影《かげ》であり、人間を死に至らしめるほどの強い力を持った影は、『カゲヌシ』と呼ばれています。『カゲヌシ』という単語は皆さんもご存じの通り、この地方独特のものでありまして、古代からこの地に伝わってきております。もちろん、わたしの持っている『皇輝山《おうきざん》文書』にもその記述があります』
「是非《ぜひ》、ごらんになっていってくださいー」
受付嬢《うけつけじょう》が佐貫に声をかける。佐貫はカウンターの上に名簿《めいぼ》のようなものが開いているのを見る。名前と電話番号がずらりと書かれていた。
「ここに書きこまないと中へは入れないんすか」
彼女はぱたんと名簿を閉じ、オレンジのグロスでてかてかした唇《くちびる》をにっとゆがめた。
「いいえ。これはですねー、開場前にいらしたお客様に任意でお書きいただいたものですから。そのまま入っていただいて大丈夫ですよ」
「あ、そうすか」
『この町へ戻る直前、わたしは恐るべき難病《なんびょう》を背負った少年の治療《ちりょう》を行いました。彼は一ヶ月前に天に召《め》されましたが、彼は恐るべき『カゲヌシ』に取りつかれていたのであります』
佐貫は半開きのドアへと近づいていき、ホールの中を覗《のぞ》きこむ。パイプ椅子《いす》がずらりと並べられ、奥の方に白い箱《はこ》のようなステージが見える。「客」の入りは七割程度というところだったが、それでも百人程度はいるようだった。年代にはばらつきがあるものの、客席を占めているのは大半が女性である。
壇上《だんじょう》には看板の写真と同じ男が立っていた。白いタキシードの上に同じ色のマントを羽織《はお》り、テレビ局で使われているようなインカム式のマイクをかけている。
その男が「皇輝山|天明《てんめい》」らしかった。
「……うさんくさ」
佐貫は噴《ふ》き出しそうになった。ただ、その見た目が逆に警戒心《けいかいしん》をほぐすようで、ホールの中は思ったよりも和《なご》やかな雰囲気だった。宗教団体のセミナーというよりは、デパートの屋上でやっているローカルなイベントのようだ。
「……皆さんの中にはお疑いの方もおられるかもしれない。『本当にこの男にそんな力があるのか』と……あなたはどうですか?……ああ、苦笑《にがわら》いをなさっておられる。では、今からお見せしましょう。今、笑ってらしたあなた、どうぞこちらへ」
最前列にいた女性が天明に手を引っ張られて壇上に上がる。三十過ぎのこれといって特徴のない女性だった。
(……あれ)
佐貫《さぬき》は彼女の顔に見覚えがあった。隣《となり》近所というほどではないものの、佐貫の家からそう離《はな》れていないところに住んでいる女性だった。確《たし》か自宅でピアノ教室を開いている人だと思う。しょっちゅう見かける顔だが、名前を思い出せない。佐貫が必死に記憶《きおく》を探《さぐ》っていると、
「お名前だけ伺ってよろしいですか?」
マイクを渡しながら天明《てんめい》は尋《たず》ねた。
「大久保《おおくぼ》です。大久保|尚子《なおこ》」
佐貫は大久保さん、と口の中でつぶやいた。確かにそんな苗字《みょうじ》だった。
「なるほど。では、大久保尚子さん。そこにお立ち下さい」
彼女は天明に促《うなが》されて、ステージの中央に立つ。照明が調節《ちょうせつ》されているらしく、ステージの奥の白いホリゾントに彼女の影《かげ》がくっきりと映った。
「わたしは影に触れると、その人物について色々と『見る』ことができるのです」
天明は手袋を外しながら、ホリゾントに近づいていき、大久保尚子と名乗った女性の影に自分の手を重《かさ》ねる。そして、精神を集中するように目を閉じた。
なにを言うんだろう、と息を詰めて見ていると、
「……私は花が好きでしてね」
不意に天明が言い、会場から気の抜けた笑いが洩《も》れた。
「特に黄色《きいろ》い花が好きなんですよ。今、咲いているのはマリーゴールドですね? 実に陽《ひ》当たりのいい庭だ……花壇《かだん》の近くに小さな池がありますね。そこを歩いている白い猫が見えます。あなたの飼い猫かな?」
壇上《だんじょう》に立った尚子が戸惑《とまど》ったように天明を振りかえった。なにか思い当たるところがあるらしい。
「動いてはいけません!」
目を閉じたままで天明がぴしりと叫んだ。彼女は動きを止めた。
「わたしにはあなたの住んでいる家が見えています。二階建ての……ベランダに青いシーツが干《ほ》してありますね。庭から入った部屋に仏壇《ぶつだん》が見えます。どなたかの位牌《いはい》があるようだ。これはあなたのお父上かな? 非常に近しい関係の男性で……いえ、あなたのご主人ですね。あなたとは少し年が離れていたようですが」
天明が言葉を発するたびに、彼女の表情が引きしまっていく。今や会場はしんと静まりかえっていた。
「ああ、そうです。二年、いや三年前に亡《な》くなられたようだ……事故……そうですね。トラックにはねられたようです。一瞬《いっしゅん》の出来事でした」
「……どうしてそんなことが」
震《ふる》える声で尚子《なおこ》が言った。
「影《かげ》が語っています。これが私の守護神《しゅごしん》『龍子主《たつこぬし》』がわたしに授けた力です」
(トリックだろ)
と、一番後ろの席から見ていた佐貫《さぬき》は心の中でつぶやいた。こういう「透視」のマジックは珍《めずら》しくはないし、このようなマジックは回答者がグルになっていることが多いと聞く。しかし、昔からこの町に住んでいるごく普通の女性が、こんなうさんくさい男のショーにわざわざ協力するとも思えない。どう見ても彼女は本気で驚《おどろ》いていた。
具体的にどんなトリックを使っているのか、さっぱり分からなかった。
「あなたは色々とご苦労を重《かさ》ねておられるようだ。お子さんもいらっしゃらない。お一人で暮らすのは心細いことでしょう。あなたの心痛が見えます。そこへ忍び寄る『カゲヌシ』もね」
すっと天明《てんめい》は影から離《はな》れ、背後《はいご》から尚子の肩に手を乗せる。彼女はびくっと体を震わせた。
「あなたのプライバシーを暴《あば》くのが目的ではありません。この程度にしておきましょう。もし、よろしければ後で相談《そうだん》に乗ります……私は常にあなたの味方ですよ」
彼女は無言のままうなずくと、頼りない足取りでステージから降りる階段へ向かう。強いショックを受けているようだった。
「ああ、お待ち下さい」
天明が声をかける。彼女はおそるおそる振り向いた。
「申《もう》し訳《わけ》ありませんが、あなたの影《かげ》を拝見した報酬をいただきます」
天明《てんめい》はさっと頭上に手を挙《あ》げる——突然、空中にぱっとなにかが現れて、天明の手の中へ落ちてきた。それは一輪《いちりん》の黄色《きいろ》い花だった。
「お宅の庭に咲いていたものです……一本ぐらいなら構わないでしょう? お宅に帰ったら、庭を見てごらんなさい。一本なくなっているはずですから」
尚子《なおこ》は足早にステージを降りると、元の席に戻った。たった今目の前で起こったことが信じられないというように、会場は水を打ったように静まりかえっていた——やがてどこかからか拍手が起こり、それはあっというまに会場を埋め尽くしていった。立ち上がって手を叩《たた》いている客もいる。
(……どうやって出したんだ?)
万雷《ばんらい》の拍手に耳を傾けながら、佐貫《さぬき》は考えている。本当にトリックなのか、という考えがちらりと頭をよぎった——もちろんトリックに決まってる、とすぐに思い直した。
考えこんでいた佐貫は、携帯の着メロが鳴っていることに気がつくまでしばらく時間がかかった。
(あ、いけね)
待ち合わせの相手が着いたのかもしれない。佐貫は携帯を出しながら、慌《あわ》てて外へ走っていった。
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