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シャドウテイカー フェイクアウト07

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:2 ロビーに戻って、電話に出ようとしたとたんに着メロは止まった。履歴を見ると「西尾《にしお》みちる」の文字がある。佐貫は
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 ロビーに戻って、電話に出ようとしたとたんに着メロは止まった。履歴を見ると「西尾《にしお》みちる」の文字がある。佐貫はそのままドアを抜けて、駅舎の方を見る。
さっきまで佐貫が立っていた場所に、ストレートの髪を長く伸ばした背の高い少女が立っていた。ちょうど電話をかけ終わったところらしく、携帯のパネルを閉じてしまおうとしている。ふと、彼女は顔を上げて佐貫の方を見る。切れ長の目とくっきりした眉《まゆ》は、美人というよりは凛々しい印象だった。
佐貫は小走りで彼女の方へ近づいていき、
「おう」
と、声をかけた。
「ああ」
西尾みちるも短く答えた。
「今、電話したんだけど」
「知ってる。待ったか?」
「全然」
「いくか」
「うん」
ひどく素《そ》っ気《け》ない会話だが、彼らにはそれが普通だった。二人は切符を買って鶴亀《つるき》駅のホームへ向かう。電車を待っている間も、無言のままベンチに座っている。周りから見ればそれほどでもないが、二人は大変に仲がいい。かといって付き合っているわけではない。あくまでも「親友」である。
次に二人が口を開いたのは、電車に乗って加賀見《かがみ》駅についてからだった。
「どうだった。神社のバイト」
思い出したように佐貫《さぬき》が言った。彼女が住んでいるのは鶴亀町ではなく加賀見市の方なのだが、ここ何日か鶴亀神社で巫女《みこ》のアルバイトをしている。
「面倒《めんどう》くさい。もうやめたい」
と、みちるは顔をしかめた。
「巫女さんの服ってすごく暑いんだよ、あれ」
「なんで神社でバイトやってんだ?」
「うちの叔母《おば》さんがあそこの神主さんと知り合いで、無理に頼まれたみたいなんだ。姉さんもいくはずだったんだけど、急に親戚《しんせき》の家にいかなきゃいけなくなって。あたし一人でいくことになっちゃったの」
「へえ」
と、佐貫は言った。そこで断らないあたりがこいつらしいと佐貫は思った。みちるは責任感の強い性格だった。
「バイトって言っても掃除とかものの整理とか、ただの雑用だけどね。ほんとはもう一人連れて来てくれって言われてて。まあ、もう無理だけど」
二人は加賀見駅を出て、団地へ向かって歩き始めた。アスファルトからもやとともに熱気《ねっき》が上がっている。
「そういえば、鶴亀の駅で待ち合わせしてる時、変なイベント見てなかった?」
と、みちるが言った。
「……皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》?」
名前が派手《はで》なので、憶《おぼ》えてしまった。
「あの看板の人がそういう名前なんだよね?」
「知ってんのか、あのおっさん」
「昨日、あたしが働いてたら神社に来たよ。宮司《ぐうじ》さんに会いに来たみたい」
「そういえば昔、鶴亀神社の神主だったとか言ってたな」
「あれが元神主? ほんとに? なんかすごいタキシード着てたよ」
「いや、ほんとかどうか知らないけど。うさんくさいってのは俺《おれ》も賛成だな」
「夏祭りでイベントやるマジシャンかなにかじゃないの、あれ」
鶴亀《つるき》神社で行われる夏祭りは、三日後に迫っている。最大の見物が鶴亀山から見える花火大会だった。
「マジシャンっていうか、超能力者のつもりっぽいぞ」
怪《あや》しさ爆発《ばくはつ》の「天明《てんめい》ショー」について、佐貫《さぬき》は自分が見た範囲《はんい》で一通り説明した。聞き終えるとみちるは首をかしげた。
「それでかなあ。社務所《しゃむしょ》の前で宮司《ぐうじ》さんと言い合いみたいになってたよ」
「言い合い?」
思わず佐貫は聞きかえした。
「あの神社の宮司さんってすごくいい人なんだけど、顔|真《ま》っ赤《か》にして怒っててさ。『また警察《けいさつ》に調《しら》べられたいんですか』って」
みちるの話に、佐貫はあっと声を上げた。
「……そうか。そうだった」
さっき『皇輝山《おうきざん》文書』の話を聞いた時、思い出しかけたのはそのことだったのだ。四年前、鶴亀町で謎《なぞ》の古文書が発見されたというニュースがこの町を賑《にぎ》わしたことがあった。一時はマスコミも取材に来て、古代史マニアの間では結構有名になったらしい。しかし、それを「発見した」男は偽造《ぎぞう》の疑いをかけられ、警察にも取り調べを受けたという話だった。
小学生だった佐貫は詳しく知っていたわけではないが、結局その男は町から逃げ出したという顛末《てんまつ》だったと思う。
その男が、この町に帰って来た。
佐貫はさっきの「ショー」を思い出した。確《たし》かにどこからどう考えても怪しい。しかし、あの男の一挙手一投足《いっきょしゅいっとうそく》には妙な説得力がある。それがいわゆるカリスマ性から来ているのか、あるいは本当になにか能力を持っているのか、そのあたりはよく分からなかった。
(……皇輝山文書、か)
佐貫は自分をリアリストだと思っているし、オカルトにはあまり興味《きょうみ》がない。しかし、万が一謎の古文書が存在し、それがあの男に「影《かげ》」を見る力を授けたとしたら大いに「面白《おもしろ》い」ことである。それに、天明が口にしていたカゲヌシの話も大いに気になる。
「ちょっと調べてみるか」
と、佐貫はつぶやいた。
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