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シャドウテイカー フェイクアウト26

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:2 鶴亀《つるき》駅の改札口を抜けた瞬間《しゅんかん》から、人の数が一気に増えた気がした。いつもは閑散としている駅前も、
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 鶴亀《つるき》駅の改札口を抜けた瞬間《しゅんかん》から、人の数が一気に増えた気がした。いつもは閑散としている駅前も、ほとんど周囲の見通しが利《き》かないほど混雑している。
商店街から鶴亀山までの道路の両側は、提灯《ちょうちん》で飾られている。露店《ろてん》の多くは神社の中にあるが、神社までの道路にもところどころに飲み物やお菓子を売る店が並んでいる。人々のほとんどは、最大のイベントである花火大会を見るために神社の方へ歩いていた。
葉《よう》たちも人の流れに沿って進んでいた。佐貫《さぬき》とみちるが並んで前を歩き、その後ろから少し離《はな》れて裕生《ひろお》と葉が歩いていた。
葉はほとんど有頂天《うちょうてん》になっていた。最後に鶴亀祭りに来たのは、彼女が小学生の頃《ころ》だった。父親と手を繋《つな》いで、ほとんど無言でこの道を歩いたのを憶《おぼ》えている。少しひんやりした骨張った手の感触が、彼女の手の中にありありと蘇《よみがえ》った。
ふと、彼女は隣《となり》を歩いている裕生の手を見た。あの時の父親の手に少し似ている気がした。
握ったら怒られるかな、と彼女は思った。
ひょっとすると笑って握りかえしてくれるかもしれない。しかし、そんな大それたことを試す勇気はなかった。
その時、裕生がいる側とは反対の肩が誰《だれ》かに触れた。はきなれない下駄《げた》のせいもあり、葉はふらっとよろめいた。次の瞬間、裕生の手が葉の手首を握っていた。
「だいぶ混雑してきたから」
裕生は真面目《まじめ》な顔で言い、そのまま葉の手首を握ったまま歩いていく。
「……いたいです」
本当は痛くはなかったが、彼女はそう言った。
「あ、ごめん」
慌《あわ》てて放した裕生の手を、彼女はしっかり握り直した。
葉たちは鶴亀神社のふもとまで来ていた。なだらかな坂の上に神社の鳥居《とりい》が見える。鶴亀神社へ通じる大きな道路はこの一本だけだった。ふと、葉は電信柱にくくりつけられている看板に目を留《と》めた。さっきから同じものを何度も見かけるのだが、「皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》マジックショー」と大きな字で書かれている。
「……イベントがあるみたいだね」
と、裕生が言った。
「ちょっと見にいってみようか」
葉は彼の顔をまじまじと見る。薄暗《うすぐら》いせいかもしれないが、どことなく陰のある悲しげな顔に見えた。
「その後で神社の方にもいってみようよ。色々お店も出てるし。なんか欲しいものある?」
しかしそれは一瞬《いっしゅん》のことで、すぐに普段《ふだん》の裕生《ひろお》に戻っていた。
「……リンゴあめ」
葉《よう》はそう答えながら、前の方を歩いている佐貫《さぬき》とみちるを見る。二人は親しげに顔を寄せて話をしている。今は佐貫が自分のバッグを開けて、なにかみちるに説明しているようだった。
「おい、手ェ繋《つな》いでるぞ。後ろ」
例の「武器」の説明をしていた佐貫は、にやにやしながらみちるの肘《ひじ》をつついた。
「西尾《にしお》?」
呼びかけると、彼女ははっと我に返ったようだった。
「あ、ごめん。キャップを外して、押しつければいいんでしょ?」
「……」
大丈夫かよ、と思ったが、佐貫はそれ以上なにも言わなかった。
先ほどから佐貫には少し気がかりなことがあった。別に自分たちには関係のないことだと思っていたが——やはり気にかかる。
皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》は、なんの目的でこの町に戻って来たのだろう。
「同族食い」である「黒の彼方《かなた》」を倒すためではないことははっきりしているし、誰《だれ》かから金を騙《だま》し取るためでもない。佐貫が調《しら》べた範囲《はんい》では、むしろ天明は気味が悪いほど気前よく金をばらまいていた。
どうして事前に自分のイベントを見に来るよう指定したのかも、考えてみればよく分からない。契約者のなにを確認《かくにん》するつもりなのだろう。ただ、こちらの意図が完全に読まれているとも思えなかった。いや、それどころか天明はこちらがなにを考えているか、あまり関心がないかのように見える。
そんなことなどどうでもよくなるほどの、もっと大事な目的があるかのような。
(まあ、ここまで来たらもうどうしようもないけど)
と、彼は思った。すでに始まったことなのだから。
 社務所《しゃむしょ》の一室に設《もう》けられた控《ひか》え室で、皇輝山天明は目を閉じて正座していた。全身黒ずくめのスーツとマントに身を包み、髪もぴたりとなでつけている。一分の隙《すき》もないいでたちだった。
「そろそろですよ」
不意にふすまが開いて、来山《きやま》が声をかけてきた。天明はふと目を開けて、
「すまんな」
と、言いながら立ち上がる。内心、開ける時は声ぐらいかけろと思っていた。膝《ひざ》の上に置いてあった、アンテナのついた小さな機械を慌《あわ》ててマントの中に隠《かく》す。来山は気づいていないようだった。
「どういうショーになるのか、わたしたちも楽しみにしていますよ」
廊下を歩きながら来山《きやま》が言った。それはそうだろう、と天明《てんめい》はひそかにほくそ笑《え》んだ。夏祭りの実行委員会には「簡単《かんたん》なマジックショー」としか説明していなかった。連中に多めの金をばらまいたのは、詳しい説明を避《さ》けるためでもある。
「一応、打ち合わせをしたいと実行委員の方たちがいらしてますけど」
「いや、さっきも言ったが、別に必要ないだろう。音楽も特別な照明も要らない。大して時間もかからないシンプルなショーだからな」
社務所《しゃむしょ》の玄関で靴《くつ》をはくと、天明は弟を振りかえった。
「お前も見に来てくれるのか?」
「ちょっと忙《いそが》しいですが、できるだけ見るつもりです」
「そうか、それはよかった」
かちかち、と天明は笑顔《えがお》で歯を鳴らした。
 鶴亀山《つるきやま》公園はもともと町の人々がスポーツを楽しむために作られた場所で、「公園」と言ってもサッカーや野球ができる大きさのグラウンドを金網のフェンスが囲んでいるだけだった。
普段《ふだん》ならバックネットの見えるあたりに、今日は大きなステージが設置されている。グラウンドは大勢の人々でごったがえしているが、「皇輝山《おうきざん》天明ショー」を見に来たわけではなく、その後から始まる花火大会を待っている人たちがほとんどだった。
「……もうちょっとステージに近い方がいいのかな」
と、裕生《ひろお》は言った。四人ははぐれないようひとかたまりになって、グラウンドに足を踏み入れていた。立ち止まっている人の群れをかき分けて前へ進もうとすると、不意に佐貫《さぬき》に肩をつかまれた。
「あのな、裕生」
佐貫は葉《よう》に聞かれないように小声で話しかける。
「あまりステージに近づかない方がいいんじゃねえか」
「どういうこと?」
裕生が尋《たず》ねると、佐貫も首をかしげる。
「俺《おれ》にも分かんねえけど、なんかちょっとこう……イヤな予感みたいなのが」
その時、グラウンドを囲んでいた水銀灯が消えて、代わりにステージを照らすライトが点《つ》いた。暗がりにパイプで組まれた即席のステージが浮かび上がる。なにが始まるのかとグラウンドにいた人々もステージの方を振りかえり始めた。
「……あっ」
不意に裕生たちの背後《はいご》にいた葉が声を上げた。
 一瞬《いっしゅん》だったが、間違いなかった——確《たし》かに葉《よう》はカゲヌシの気配《けはい》を感じた。
彼女はあたりを見回した。しかし、これだけの人出でどこに契約者がいるのか、分かるはずがない。
「雛咲《ひなさき》さん?」
隣《となり》にいたみちるが怪訝《けげん》そうな顔をしている。葉は佐貫《さぬき》と話している裕生《ひろお》の腕をつかんで、強引に引《ひ》き離《はな》した。
「なに? どうしたの?」
「……カゲヌシがいます」
と、葉は囁《ささや》いた。一瞬、裕生の顔に驚《おどろ》きとは違う微妙な表情が浮かんだ。
「今すぐ捜《さが》さないと……」
想像するだけで恐ろしくなった。万が一、こんなに人間の多い場所でカゲヌシが現れたら、大勢の犠牲者《ぎせいしゃ》が出るかもしれない。
走り出そうとする葉の腕を裕生がつかんだ。
「……ちょっと待って。本当にカゲヌシだった?」
「本当です。ほんの一瞬だったけど、確かでした」
「そうだとしても、こんな大勢人がいるんじゃ捜しようがないよ」
「でも、確かにいるのに放っておけないです」
当然、うんと言ってくれると思っていた。とにかく捜そうと普段《ふだん》の裕生なら言うはずだった。しかし、それでも彼は動こうとしなかった。
葉は初めて裕生の態度《たいど》に疑問を覚えた。どうしてカゲヌシが現れたことに驚いていないのだろう。まるで現れたのが当然という様子《ようす》だった。そもそも、一昨日《おととい》カゲヌシが現れたのはこの神社である。ここが一番|警戒《けいかい》すべき場所のはずだ。
不意に心臓《しんぞう》がどくんと鳴った。
(どうしてここに連れて来たの)
お祭りにいこうと誘《さそ》われたのがあまりにも嬉《うれ》しくて、今まで頭に浮かばなかったが、考えてみればあまりにも急な話だった。
「……先輩《せんぱい》」
と、おそるおそる葉は呼びかける。胸のあたりが苦しかった。
「なに?」
契約者の行方《ゆくえ》はまったく分からないと言っていた。しかし、もし本当に分からなかったのなら、祭りにいこうなどと言うだろうか。彼女の知っている藤牧《ふじまき》裕生はそんなことを言い出したりしない。カゲヌシを捜す方を優先《ゆうせん》させるはずだ。
(……雛咲葉)
突然、頭の中から「黒の彼方《かなた》」が話しかけて来た。まるでこの瞬間《しゅんかん》を待ちかまえていたかのようだった。
(ようやく気が付きましたね。この少年はあなたを騙《だま》していました。口では嘘《うそ》をつかないと言っていたのに)
葉《よう》の口からかすかにあえぎが洩《も》れた。体ががくがくと震《ふる》え始める。
(あのカゲヌシがここにいることを予《あらかじ》め知っていたのですよ。この少年は敵のカゲヌシと手を結んでいます。一昨日《おととい》も今日も、敵のカゲヌシと手を結んでわたしたちをこの神社におびき出した。後ろにいる二人もグルです)
「……うそ」
(みんなであなたをあざ笑っていた。素直なあなたを騙して、右往左往するのを楽しんでいた)
「ちがう」
(では聞いてごらんなさい。嘘をついたのかどうか)
「どうしたの」
と、裕生《ひろお》が言った。
「……わたしにうそをついたの?」
裕生の表情が凍《こお》りついた。
一瞬だけ恥《は》じるように目を伏せ、すぐに顔を上げた。
「うん。ぼくは葉を騙してたよ」
その後の言葉は聞く勇気がなかった。葉は顔を伏せて、肩がぶつかるのもかまわずに走り去っていった。
 ステージの隅に立って、天明《てんめい》はグラウンドを見下ろしている。
暗いグラウンドを満たしている無数の観客《かんきゃく》がぼんやり見えた。グラウンドの奥の方を「黒の彼方」の契約者が横切っていくのも分かった。
(こいつらもみんな死ぬのか)
妙にさっぱりした気持ちだった。公園の下の方に目をやると、鶴亀山《つるきやま》の入り口となる坂道があかあかと提灯《ちょうちん》に照らされていた。
後わずかで「ショー」の開幕だった。
多分、これが最後になるはずだ。
 気がつくと葉はフェンスの近くの灌木《かんぼく》の茂《しげ》みに足を踏み入れていた。見晴らしが悪いせいか、あたりには他《ほか》の見物客の姿はない。葉はふと立ち止まった。慣《な》れない下駄《げた》で無理に走ったせいか、足の親指に怪我をしていた。
彼女はすぐそばのコンクリートの四角い標石の上に、力なく座りこむ。
(ぼくは葉《よう》を騙《だま》してた)
葉の目から一筋の涙が流れた。喜んで着飾っている自分がみじめで恥《は》ずかしかった。
「どうしてうそをついたの」
誰《だれ》にともなく彼女はつぶやいた。
(彼はあなたごとわたしを殺すつもりだった。すべてはわたしという「敵」を倒すためです)
「黒の彼方《かなた》」がそれに答えるように言った。
(あなたの記憶《きおく》が冒《おか》されていることが分かって、彼はあなたを救うことを諦《あきら》めました。突然、態度《たいど》が変わったことにあなたも気づいていたはずです)
ふと、頭の片隅に疑問が生まれた。
「でも、わたしを助けるって言ってくれた」
(そうやって彼は自分自身を欺《あざむ》いていました。あなたを手にかけるという罪悪感から逃《のが》れようとしているのです。あなたを助けようとするなら、嘘《うそ》をつく必要はないはずですよ)
彼女は固く目を閉じる。なにが本当でなにが嘘なのか、彼女には分からなかった。頭の中は真っ白だった。
(わたしはいつでもあなたと共にあります。わたしだけがあなたの味方です。もう分かったでしょう? この町を出ていく時です)
「……町を出る?」
(もう人間など信じられません。彼らは嘘をつきます。わたしだけがあなたの唯一《ゆいいつ》の——)
「誰と話してるの」
葉ははっと顔を上げる。みちるが細い枝を払いながら、近づいて来るところだった。走り回ったのか肩で息をして、せっかく結《ゆ》った髪も少しほどけていた。
「来ないで」
自分でも驚《おどろ》くほど冷たい声が出た。みちるは目を見開いて立ち止まる。「黒の彼方」の声が聞こえた。
(この女が全《すべ》ての元凶《げんきょう》です。彼女が藤牧《ふじまき》裕生《ひろお》を唆《そそのか》したのです。あなたさえいなくなれば、彼女には彼が手に入るのですから)
「あたしたち、手分けして捜《さが》してたの。今すぐ、藤牧にも来てもらうから」
みちるはそう言いながら、袂《たもと》から携帯を出した。
「話したくないです」
と、葉は言った。
「西尾《にしお》さんだってわたしに嘘ついてた」
みちるははっと口をつぐんだが、すぐにまた話し始めた。
「それは悪いことしたと思ってる。でも、どうしても言えなかったの。藤牧と話せばきっと分かると思う。ね?」
なだめるような言い方に、葉《よう》はかっとした。
「みんなでわたしのこと笑ってたんでしょう!」
すっとみちるの顔から表情が消えた。携帯を元通りにしまうと、つかつかと葉のそばまで近づいて来た。なんだろう、と思った瞬間《しゅんかん》には、音高く頬《ほお》を叩《たた》かれていた。
痛みよりも驚《おどろ》きで葉は凍《こお》りついた。
「……誰《だれ》が笑ってるの?」
みちるはかすれた低い声で言った。
「藤牧《ふじまき》があんたを笑うの? 一緒《いっしょ》に住んでて、藤牧が楽しそうにしてるところ、最近見たことある?」
葉はうろたえた。記憶《きおく》のことを話してから、裕生《ひろお》はずっと悲しそうな目をしていた——でも、それは本当に自分を助けるためだったのだろうか。
「あんたを助けるって言ったんでしょ」
まるで葉の迷いにシンクロしたように、みちるは言った。
「……でも」
「藤牧がどんな人間か、あんたが一番よく知ってるでしょ!」
こらえ切れなくなったようにみちるは叫んだ。
「あたしなら藤牧を信じるよ!」
その時、ステージの方から男の声がスピーカー越しに流れ始めた。
お集まりの皆さんこんばんは、と、男は言った。わたしが皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》です。
「蜥蜴《とかげ》のカゲヌシの契約者はあいつよ。あのステージに立ってる男。神社で掃除をしてる時に見たでしょ」
「え……」
葉《よう》はずっと遠くのステージを見た。確《たし》かに一昨日《おととい》見かけた顔だった。
「藤牧《ふじまき》はあいつと連絡を取った。あんたに取りついている犬を倒すために、あの蜥蜴を利用しようとしてるの」
「……」
(この女の言うことを信用するつもりですか)
呆《あき》れたように「黒の彼方《かなた》」が言った。そこへ灌木《かんぼく》をかき分けながら、裕生《ひろお》がやって来るのが見えた。彼の後ろには佐貫《さぬき》もいる。
「……葉」
と、裕生が呼びかける。穏《おだ》やかで迷いのない声だった。
葉は目を逸《そ》らすことができなくなった。
「ぼくは葉を騙《だま》してた。『黒の彼方』に悟られないようにするために、他《ほか》に方法がなかった」
彼女の頭の中を、みちるの言葉が反響《はんきょう》していた——裕生がどんな人間か、葉が一番よく知っている。
「でも、葉を一人にはしない。必ず助けるって約束した。約束を守るために嘘《うそ》をつくんだ。嫌《いや》だけどそう決めた」
葉は弾《はじ》かれたように立ち上がった。「黒の彼方」が言ったようなことを裕生がするはずがない。頭の中でまだなにか声が聞こえたが、もう葉の耳には入っていなかった。裕生はゆっくりと葉に近づいてくる。裕生がしっかりと彼女の手を握った。一人にしないと誓ってくれたあの晩のように。
「わたし……」
なにか言おうとしたが、胸が詰まってなにも言えなかった。
裕生がなおも口を開こうとした時、突然山のふもとで火柱《ひばしら》が上がった。
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