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記憶の絵06

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:洋服私が最初に買って貰った洋服は一寸変った冬服だった。今|流行《はや》っている濃い紺地に同じ紺と緑の細《こま》かいチェッ
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洋服

私が最初に買って貰った洋服は一寸変った冬服だった。今|流行《はや》っている濃い紺地に同じ紺と緑の細《こま》かいチェックで、四角く開いた襟と提灯袖の袖口、スカアトの縁に、濃い真紅《あか》の幅広いふちどり(木綿地)がついていて、ベルトも同じ木綿の真紅《あか》である。これはよく似合った。繊い美少女だった(本当である)五、六歳の私はそれを着て、肩まで長く垂らした髪に白に細《こま》かい水玉が繻子目で出ている、細いリボンを耳の辺りに二つかけ、黒木綿の長靴下に同じく黒の横で止めるゴム靴をはいてひょろひょろと歩いていた。帽子は鍔の狭い黒のビロオドを深く襞をよせたのへ、火のように真紅《あか》い絹のリボンがこれもシャーリングのように襞をよせて巻いてあった。その帽子を黒いゴム紐を顎にかけて被《かぶ》ると、モオパッサン時代の子供になった。帽子の下から暈《ぼんや》りした二つの眼がどこを見るともなく見開かれていた。その洋服がドイツから来た年の夏、白にレエスのある夏服と、変った編みかたで荒く編んだ、深めの麦藁帽子が来た。クラウンをとり巻いた白いサテンのリボンはひと処で円く襞を寄せてあり、廻りが淡い薄紅の蔓薔薇でかこまれていて、清楚で華やかな帽子だった。母親はこれに白い靴下を履かせようとしたが、父親は黒だと主張した。そのころ洋服を着ている子供は、夏は白の靴下に白い靴をはいていたが、はなやかな麦藁帽子にレエスの夏服、黒木綿の靴下、というのは、たしか伯林の小娘の感覚で、客が来ると拡がったスカアトの縁《へり》を両手で軽くもち上げ、右足を後へ退《ひ》いて腰を一寸落とし、小首をかしげる、宮廷風のお辞儀《じぎ》をするとぴったりの服装《なり》だった。夜睡る前に母親からきく話は〈赤頭巾〉だったり、〈ハンスとグレエテ〉—本式にはヘンゼルとグレエテルらしいが、父親がどういうわけか、ハンスとグレエテと言っていたのでこの方がなつかしいので、私はいつもそう言っている。今、子供の本には〈白雪姫〉となっている話も、父親は何故だか〈雪白姫〉と母親に伝え、母親の、「ゆきしろひめがね……」、低い声で囁くように言った声と、私の上に上半身をかがめている彼女の着物の胸の辺りのかすかな清心丹の香《にお》いとが忘れられないので、私は雪白姫と信じている。ドイツ語の原名は知らない—なぞだったから、全く、ドイツ人の子供のようだった。おまけに父親の顔はカイゼル・ウィルヘルム二世に瓜二つで、葉巻をふかし、ドイツ語は口下手なドイツ人よりペラペラだったのである。十二、三の時にドイツから来た箱を開けると、そこら中ドゥロンウォークした、蜘蛛の巣のように細い絡み合ったようなレエスの、真白な夏服が出て来て、私は狂喜した。それからモザイクの黄金《きん》の頸飾り。それを着る時、内心父親の訳した〈ファウスト〉の中の美しい娘、グレエトヘンを気取っていたのだからいい気なものである。私は従姉妹たちと芝居遊びをする時にも、グレエトヘンの役になりたがった。
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