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記憶の絵27

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:続・鴎外の怒大変な美人だが、色が黒いのだけが欠点の母親の娘が、その色の黒いところだけ似たとしたら困るが、私と父親の関係が
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続・鴎外の怒

大変な美人だが、色が黒いのだけが欠点の母親の娘が、その色の黒いところだけ似たとしたら困るが、私と父親の関係がそれに似ている。私が彼に一番似ているのは下らない、どうでもいいことを腹の底から怒るという点なのである。それで銀座のボオイにもカッと怒り、全力を出して打ち負かそうとする。私の父親は店員とか車夫、ボオイ、小僧、なぞが自分をどこかの田舎の爺さんと踏んで、馬鹿にした態度をするとひどく腹を立てた。だが、困ったことに、父親は夏だと、灰色の縮みの単衣に白茶の壁お召みたいな柔かな地の博多の帯(どういうわけか、くけてなくて、二つに折って締めていた)をへんな格好に締めて、素足に下駄を履いている。それは別におかしくはないのだが、父親の顔がカイゼル・ウィルヘルム皇帝に生き写しで、独逸人の顔である。それに手に持っているのは黒檀かなにかの太くて真直《まつす》ぐで飾りのない洋杖《ステツキ》で、ジャン・ヴァルジャンが持っているのを見てテナルジェが逃げ帰ったような、オォギュスト・ロダンか、昔ならヴィクトル・ユゴオに似合いそうな欧羅巴風のものだったし、冬なら伯林《ベルリン》の洋服屋から取り寄せたすごく大きくて長い釣鐘マント(色は黒でフワフワの柔かな生地)の下から袴の裾が出ていて、ジュピタアか、アグリッパ位の大きな頭のために、へんに横に平たく大きくみえる灰色のソフトを被り、ジャン・ヴァルジャンの洋杖《ステツキ》を持っていた。夏はカイゼルが四谷怪談の宅悦の浴衣を着たようだし、冬は冬で、日本では子供しか着ないマントを着た異様な人物に見えた。それで車夫やボオイの眼には尊敬すべき人物と映らなかったから、彼らが嘲笑《あざわら》いを浮べて父親を見たのは当然だった。そういう格好で私を伴《つ》れて精養軒へ入《はい》って行き、ボオイを呼んで、「この子供がくうのだから挽肉の料理をくれ」と言うと、ボオイは片頬に冷笑を浮べて「ナントカペラペラペラでよろしゅうございますか?」なぞと、英語で答える。すると父親はカッと怒って、ボオイよりも正確な英語で命じ直した。或日父親と二人で上野の坂下から人力車に乗って家に帰ろうとしたが、又その車夫が父親を田舎爺と思いちがえて、父親が「団子坂の上までやってくれ」と言ったのをよく聴きもしないで、丁度開催中の博覧会の入口に梶棒を下ろした。父は又カッと怒って、「団子坂と言ったのだ。もういい。ここで下りる」と言って、車夫が小馬鹿にした顔で持ち上げかけた梶棒をむりに下ろさせて、黙って紙入れから博覧会場までの車賃の二倍のお金を出して渡し、「お茉莉も下りろ」と言うので、私は真紅《まつか》になって下りるより他なかった。いよいよ馬鹿にしてへらへら笑う車夫と、何事かと集まって来た人々を後《うしろ》に、父親は私の手を引いて歩き出した。父はどういうわけか怒ると金を倍出した。私は博覧会の長い長い塀を曲ってしまうまで、背中に人々の好奇の視線が張りついているようで、羞しくて困った。その上翌日学校へ行くと友達が寄って来て、「森さんきのう博覧会の前で車下りたわね」と言ったのには閉口した。
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