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記憶の絵32

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:続・怒りの虫銀座のボオイ、銀座の店員、と銀座ばかり目の仇《かたき》にするようだが、私の嫌いなそういう人々は別に銀座には限
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続・怒りの虫

銀座のボオイ、銀座の店員、と銀座ばかり目の仇《かたき》にするようだが、私の嫌いなそういう人々は別に銀座には限らない。つまり高級店の人々のことなのだが、私は凝った、特種の店には行かないので、私の怒りの虫は定《き》まって銀座で爆発する。
銀座では手袋を買おうとしても、洋傘を買おうとしても、親切に選ばせてくれたことがあまりない。私は気に入るものが極く少ないし、特殊だからそう彼らの希むように手早く選んでさっさと金を払って、彼らの前から姿を消すというわけにはいかない。そうかといって、彼らが、ゆっくりと選ぶことを当然と思うような、お買い上げを有難いと思うような貴婦人でもない。彼らは、上等なものを購《か》いつけている、という様子をし、何々さんの令夫人である、という顔をして、店員に顎で命じる戦後貴婦人でないと貴婦人とは認めないのである。「これを見せて下さい」とやさしく言うと、「この品を一寸見せていただけませんでしょうか?」と、商人に卑下している女の人かと思うらしい。一つは戦後のお客の態度もよくない。戦争中にじゃがいもを下さい、麦でもいいから下さい、と哀願した癖がとれないのか、高級店の店員は偉いものだと思うのか、よく理由はわからないが、戦後の令嬢、奥様は、ものを買うのに(すみませんが)とか、(恐れ入りますが)とか言ってあやまっている。威張るのは醜いが、普通に、やさしい態度で命じればいいのである。家の近所の魚屋で一度、品のいい令嬢が、(恐れ入りますが、犬にやるアラを下さいません?)と言っているのを見て一驚した。寿司屋とか料理屋で常連が、特別なことをして貰って、「御馳走さま」と言って立ち上るのはわかるが、皆と同じ料理を出して貰って、ちゃんと代金を払った人が「ご馳走さま」と粋《いき》がるのはおかしい。戦前はなかった光景である。私は毎日のように行っていて親しくなっている下北沢の「バンガロオル」や「スコット」でしか「ご馳走さま」は言わない(それらの店では漬物を出してくれたり、番茶をくれたりするから、その親切に対して言うのである)。呉服屋や、既製洋服店では彼女らは「あら、さようでございますか? これが流行でございますか? これが私には似合いますか?」といった調子で店員の意見に従い、平身低頭している。そこで店員たちはますます頭《ず》が高くなるのである。戦前、資生堂で買物をした時、三つ位欲しいものがあったが、財布の都合があったので「これも好きだけど、そんなにはあれだから」というと男の店員が「どういたしまして……」と微笑《わら》ったが、おべんちゃらの調子もなく、軽蔑した色もなく、なんともスッキリして、岩清水の流れを見たようだった。この頃は銀座で陶器店へ入《はい》って行くと、何も言わないさきに「頒布会ですか」とくる。私はお菓子のほかはお金があっても頒布会に入る人種ではない。全く銀座はいやなところである。
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