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記憶の絵46

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:妹の羽織私の母親は自分が、明治の典型的な美人だと言ってもおかしくない顔と姿を持っていたので、娘である私と妹の顔には怒りに
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妹の羽織

私の母親は自分が、明治の典型的な美人だと言ってもおかしくない顔と姿を持っていたので、娘である私と妹の顔には怒りに近い不満を抱いていた。だが私の方は粧り栄えがすると言っていて、子供の頃から熱心に選んだ友禅縮緬の元禄袖を着せたり、独逸から送って来た洋服を着せたりし、髪も、鏡の中の私の顔を覗き覗き、似合うように結んだ。お招ばれとなると大騒ぎで湯をつかわせ、髪を洗い、舶来の石鹸で磨き上げて、冷やりと冷たい縮緬の着物を着せかける。そうして、リボンをかけるのにも、やさしく、綺麗に、蝶が止《と》まったような形になるまで遣り直した。妹の方は、どうせどう遣ったって駄目だと言って、構わなかった。幼い時の妹は、いつもお姫様のように綺麗にしている私に憧れていて、自分も私のようになりたいと、熱望していた。だが依然彼女は洒落るということに関しては、母親から見離されていた。来る客たちも、妹の存在を忘れたかのように、私にだけ贈り物をしたので、稀《たま》に自分にも美しい草履が贈られたりすると妹は狂喜して、その草履を胸に抱いて、そこらを跳ね歩いた。
母親の、私を粧わせて美人らしく見せようという執念は、私の婚約が定まるやいよいよ尖鋭化した。私の婚約が調ったのと同じ頃、兄の婚約も定まって、兄の婚約者の家から私と妹とに美しい反物が贈られた。両方とも黒地のお召で、私に贈られた方は橄欖《オリイヴ》色と黄土色との太い棒縞、妹の方は、派手な緑と青竹色の暈《ぼ》かしのと、華やかな臙脂《えんじ》とピンクとの暈《ぼ》かしとの、これは私のよりもっと派手な縞だった。ところが、私の着物を揃えることに夢中になっていた母親は私に贈られた方を単衣物に仕立て、妹へ来た方も私の袷羽織にしてしまった。妹は絶望して、赤い小鬼のようになって泣いた。私という人間が又妙な人間で、可哀そうだから妹に遣ろうと、いうのでもなく、それかといって、妹に全く同情がない、というのでもない。自分のこと以外にはすべてに無関心であるから、どんな時でも不得要領《ふとくようりよう》な状態である。父親が(それは杏奴が気の毒だ)と言って、妹を慰め、三越へ行って妹の羽織にするための友禅を買って来た。父親が選んだのは渋いグリインに濃いグリイン、代赭《たいしや》、黒、なぞの線描きで、松なぞの出た、粋であると同時にハイカラなもので、それは妹に誂えたように似合った。妹は、今ではその友禅を何よりも大切なものに思うようになっているが、買って来たのを見た時には失望していた。気の毒な彼女は、義姉の家から贈られたお召のような、臙脂やピンクの入った柄を空想していたのだ。
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