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ある日、ある午後17

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:配偶者のこと今の若い女性が、理想の夫の条件を並べるのを聞くと、ああ世の中平和だなあ、と思うのである。背が一八〇センチ以上
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配偶者のこと

今の若い女性が、理想の夫の条件を並べるのを聞くと、ああ世の中平和だなあ、と思うのである。
背が一八〇センチ以上あるとか、慶応卒でなければならないとか、商社マンがいいとか、相手の親にマンションを買ってもらいたいが 姑《しゆうとめ》 たちとの同居は断るとか。週に一度か二度は妻を誘ってレストランで夕食をとってくれる優しい夫がいい、とか。
要するに自分は何の苦労も労働もせず、手も汚さず、楽しいところ、おいしいもの、いい思いをしたいという神経がみえみえなのである。
結婚と同時にもう既《すで》に何かが完成されており、その完成された器の中でぬくぬくと生きていこうという願い。しかも自分はほとんど社会的なかかわりを断って、世の中に役に立つようなことはいっさいせず、夫に寄生していこうというのである。
仕事に生きようという女性が一方で少なからず増えてはいるが、お嫁さん志望の若い女性の数は相変わらず断然多い。
「だって楽ちんだもん」というのがその答えである。それはそうだ。マンションも何もかも全部用意されていて、その中に入っていくだけなのだから、家事や食事作りだってオママゴトの延長みたいなものだろう。
でもそんなのはつまらない。何もかも出来上がっているところからのスタートなんて信じられない。次に何をしようか、そしてそれが終わったらその次は二人で何をしようか、またその次は? というふうな生活が待っていない結婚なんて、私は少しも魅力的だとは思えない。何かがすべてそろっていたら、多分私ならそれを全部壊したくなるだろう。
二十数年前、私も結婚に夢を抱いていた。しかしそれは親が買ってくれたマンションに身長一八〇センチの商社マンと住むことでは全然なかった。
第一どんな仕事であれサラリーマンの妻になりたくなかった。自分と夫の将来の姿が、すっかり見えているというのは嫌なのだった。
私が夫に選んだ男は、当時定職なし、住所不定、ポケットにはコーヒー代くらいしか入っていない、無銭旅行中のイギリス男だった。
いつかオーストラリアで一旗揚げ、いつかヨットを買い、そしていつかヨットで世界中の港を巡り渡りたい、キミも一緒に来るかい? というのが、いわばプロポーズの言葉だった。
ポケットにコーヒー代しか入っていないのに、よく言うわいと、思った。しかし私だって似たようなものだった。持参金なし、嫁入り道具いっさいなし、文字通り体ひとつで彼のお嫁さんになった。テーブルも買えなかったから、本の入っている段ボール箱にクロスをかけてそこが新婚の食卓となった。
二十年ほどがたち、オーストラリアで一旗揚げることはできなかったが、今年の秋には待望のヨットが油壺湾《あぶらつぼわん》に浮かぶことになっている。
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